第11眠 目覚め

「ソフィア――!」


ゴブリンメイジはニヤニヤと不敵な笑みを浮かべながらこちらを見ている。ぼくは怒りに任せて、ゴブリンメイジに突進していった。


「何してんだ――!」


剣を抜いて切りかかる。剣を振り下ろすよりも速くゴブリンメイジの杖から放たれたファイヤーボールがぼくの腹を直撃した。ぼくは、後ろへ吹っ飛んでしまった。


「ぐっ」


腹が熱い。直撃した部分の服は焼けてしまっている。


「ケケケケケ」


 ゴブリンメイジはバカにしたように笑っている。くそっ、どうしたらいいんだ。ソフィアは気絶しているし、ガモンさんはまだ残っているゴブリンたちを倒しきれていない。きっとライトさんたちもこっちには来られないだろう。


「ギャギャギャア!」


 ゴブリンメイジが何かを叫ぶと今度は杖から風が放たれた、ぼくはその風を必死に耐えるが、風が刃のようにぼくの体を切りながら通り過ぎていく、そして耐えきれなくなり後ろにあった木まで飛ばされて背中を強打する。痛みに悶えながらなんとか意識を保つのがやっとだ。しかし敵は余裕そうだ。怒りと痛みでもうどうしていいのかわからなくない。怖い。その時声がした。


「トム!落ち着いて!」


 ソフィアが意識を取り戻し、僕に声をかけてくれたのだ。その声に気が付いたゴブリンメイジは、ソフィアを思い切り蹴飛ばす。


「ああっ!」


「ソフィア!」


ソフィアは痛みに耐えながら起き上がる。


「大丈夫だから!集中してっ!」


そういってソフィアは片手をゴブリンメイジに向けて叫ぶ。


「エアボール!」


 ソフィアの手に風が集まり、周りの葉や砂を巻き込んで球体になっていく。風が集まりきったところで、ゴブリンメイジに向かって放たれた。その直後、ソフィアは倒れた。僕は何とかソフィアのところまで走って近づいていて、倒れる前に抱きかかえることができた。ゴブリンメイジはというとこんなに力が残っていると思わなかったのか不意を突かれたようで、直撃して吹っ飛んだ。しかし、それほど威力はなかったらしく、すぐに起き上がろうとしていた。僕はそれを見てソフィアを静かにおろすと立ち上がり、目を閉じたのだった。距離は少しあるし冷静になりたかったのだ。すると不思議なことに、ある情景が浮かんできたのだ。ゴブリンメイジが立ち上がり真っすぐぼくに向かっていく。僕も向っていく。ゴブリンメイジに切りかかろうとするが、ゴブリンメイジはぼくに、持っていた砂を投げつけて目つぶしをする。その間に呪文を唱え大きな火の玉で僕を攻撃しよとしている。この情景を僕はまるで鳥にでもなったかのように俯瞰で見ていたのだ。驚いて目を開けるとゴブリンメイジは起き上がり、こちらに向かって来ようとしている。杖を持っていない手には何かを握っているようだ。僕もゴブリンメイジに向かって走り出す。僕は剣を振り上げる。すると、ゴブリンメイジは砂を投げつけてきた。


「うっ」


砂が僕にかかる。ゴブリンメイジが何やら唱えている。そして、僕はゴブリンメイジに切りかかったのだ。目をつぶされたふりをやめて。

剣術スキル発動!


「うああああああああああ!」


叫びながら何度も何度も切りつける。


「ギャッ!アギャア!」


ゴブリンメイジの叫び声が響き渡る。


「うおおおおおおおおおお!」


キィン!


最後の一太刀を浴びせた音とともに、ゴブリンメイジは膝から崩れ落ちたのだった。







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