第8眠 暗い森
翌朝起きると経験値は思っていたよりも入っていた。
「農作業しかやっていなかったのに」
今までは何かと戦うことで経験値を大量に得ていたので気が付かなかったが、農作業もある程度経験値を得られるということがわかった。もちろん、スキルが得られていたので無駄ではないと思っていたのだが、自分の経験することすべてが経験値につながるのではないかと思うと、さらに嬉しくなった。
「さあ、今日はどんなことがまっているのかな」
楽しみ過ぎていつもよりも早く起きてしまった。まるで遠足前の子どもだ。朝ご飯を食べて早く準備しちゃおう。そうして準備している間に集合時間となった。
「よーしみんな集まったな。じゃあ、早速行こうじゃないか。行先はどこだっけレイ?」
「はいっす。昨日周辺調べたところ、『暗い森』が怪しいっす」
「暗い森に行けるんですか?」
僕の驚いた声を聞いて、みんながこちらを向いた。
「なんだトムそんなに行きたかったのか?」
ライトさんが不思議そうに聞いてきた。
「はい。自分のレベルアップのためっていうのもあるんですけど、何より冒険者みたいに冒険してみたかったんです。でも、一人じゃダメだって言われて」
「そうだったのか」
ライトさんたちはみんなで顔を見合わせて、それから僕にニッと笑って見せてこういった。
「お前も冒険者だな」
「ええ!?いや僕はちがいますよ。農作業をしているただの子どもですし」
「そうじゃなくて、お前のその気持ちがすでに冒険者だなって言ってんだよ」
うれしかった。あきらめなきゃいけないことだといわれていたから。ソフィアもこちらを見てほほ笑んでいた。
「さて二人の第一歩だ。派手に行こうぜ」
そういって一行は暗い森へと向かう。暗い森は、そんなに遠いところではなかった。村と森とを隔てる谷を橋を渡っていけば30分ほどで着く。その谷が深く、魔物も人もなかなか近づかないのだが。すぐに暗い森についた。早速中へと入っていく。まだ昼前だというのに木が隙間をあまりあけずに立っているせいでかなり暗くなっている。それだけではない気もするが。
「名前の通り暗いな。何が飛び出してきてもおかしくなさそうだ」
魔法使いのメイさんが杖の先に光を集めて照らしてくれているおかげで僕たちの周りは、少し明るくなっているがそれでも暗い。
「それどうやっているんですか?」
ソフィアも興味津々だ。
「あとで教えてあげるわね」
1時間くらい進んできただろうか。すると、レイさんがみんなをさっと手で制した。
「何か聞こえるっす」
確かに耳を澄ませると、僕たちが話している言葉とは違った言葉で話している声が聞こえてきた。茂みを音を立てないように進んでいく。すると、木がぽっかりとない広場のようなところが見えた。何やら明るくなっている。そしてそこにいたのは、50体ほどのゴブリンたちと普通のゴブリンたちよりさらに大きなゴブリンが少し高いところにある玉座に肘をついて座っていた。あれは....
「ゴブリンキングだ!」
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