第5眠 少女

「バーニング!」


 その声とともに目の前のゴブリンたちが燃えた。いったい何が起こったのか。ゴブリンが燃えている向こうの方を見ると、女の子が両掌をこちらに向けて立っていた。肩で息をしている。すると、膝から崩れてしまった。


「ソフィアちゃん!」


アレックスさんが駆け寄る。僕もそれを見て駆け寄る。


「大丈夫だ。どうやらMPを一気に使ってしまったらしい。少し気を失っているだけだ。少し休めばよくなるだろう」


「よかった。そういえばもう一匹いたはず....」


 あたりを見回すが、姿が見当たらない。逃げたのだろうか。警戒していると、ほかの村人たちが集まってきた。


「坊主のおかげで助かったよ」


「いやー、すごかったな。あの剣さばき」


「そ、そんなことないですよ」


褒められてついうれしくなってしまった。それよりも聞かなければならないことが


「もう一匹の敵は見ませんでしたか?」


「ああ、それなら。あの森の奥へ逃げていったよ。あの魔法、すごい威力だったものな」


「そうでしたか」


 また襲ってこないとも限らないが、今はみんな満身創痍だ。ひとまず安心といったところか。と、この村の村長らしき人が近寄ってきた。


「昨日の今日でまだギルドの冒険者たちが来てくれていないから、まだ安心できんが、坊主がいてくれてよかった。よしみんな、明日の朝には冒険者たちが来てくれる手はずになっている。それまで、交代で見張りをしながら備えよう」


そういっててきぱきと見張りの段取りを決めていった。その様子を見ていると、アレックスさんが戻ってきた。あの女の子と一緒にだ。


「もう、大丈夫なんですか?」


「うーん。安静にしてるように言ったんだがな。どうしてもトムくんと話したいらしくて」


アレックスさんが言い終わらないうちに女の子が話しかけてきた。


「あの!昨日は本当に危ないところを助けてもらってありがとうございました。私、魔法が使えるんですけどもう一匹いたワイルドボアに使ってしまってさっきみたいに倒れてしまったんです。そこを助けもらって、あのえっと」


 早口でまくしてられて少し困惑してしまったが、感謝していることが伝わってきて嬉しくなった。


「僕の方こそさっきはありがとう。もう死んだかと思ったよ。命の恩人だね」


そういうと、その銀髪の少女は顔を赤らめた。


「さあ、二人とも疲れただろうし家に帰って休もう。もっともこのまま二人きりでおしゃべりしていたいっていうならおじさんは先に帰ってますがね」


アレックスさんはにやにやしている。


「か、かえります」


少女は少し残念そうにしていた。


「そうだ。まだ名乗ってなかったね。僕は、トムっていうんだよろしくね」


「あっ。私はソフィアです」


「ソフィアね。覚えた。また明日ねソフィア」


そういうとソフィアは嬉しそうに


「うん。また明日トム」


と言ってくれた。かわいい子だったなと思いながら帰路に就いた。帰ると、マリアさんが泣きながら僕たちに抱き着いてきた。よっぽど心配させてしまったのだろう。マリアさんを落ち着かせると、お風呂に入り、夕食を食べ、眠りについた。今日の戦いのときの夢を見た。やはり戦っているときよりも冷静に状況を見ることができたので、もっとこうすればよかったという点がいくつも出てきた。例えば、あの後ろに控えさせていた敵だ。あそこを警戒していればリーダーをとり逃すことはしなかったかもしれない。そんな夢を見ていると小鳥のさえずりが聞こえてきて、朝になったことが分かった。夢でいろんなことを考えていたはずなのに、不思議とすっきりしている。


チェック


心でそうつぶやくと、ステータスが出てきた。レベルは5に上がっていた。攻撃力は7。防御力は5。素早さは6。魔力は2。MPは3。SPは5となっていた。MPは魔力を使う時に必要なポイントでSPはスキルを使う時に使う。実は危機察知を使ったときにSPが2減っていた。そして、スキル取得ポイントも3増えていた。これで三つ新しいスキルをえられるなと思い獲得したスキルを見ると、剣術Lv1、身体強化Lv1のスキルが新たに追加されていた。その二つを取得し、1ポイント残した。今まで持っていたスキルの欄を見ると危機察知がLv2になっていた。これで危機察知範囲が広がったようだ。


「よし、さらに強くなっている。これならあそこに行ってみてもいいかも」


さらなる強化を目指す。




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