第2眠 レベルアップ!?
小鳥のさえずりが聞こえてきた。まだ眠い。しかし、日光が部屋に差し込んできていて寝ようとしてももう寝れそうにない。仕方なく起きて窓の外を見ると、広大な草原が広がっていた。気持ちの良い風が草を次々に撫でていく。奥の方には策に囲まれたところがあり、何やら動物がいる。あれは牛だろうか。角が三本あり、元の世界とは少し様子が違う。
コンコンコン
「はーい」
「トムくん、おはよう。よく寝られたかしら」
マリナさんが部屋に入ってきた。
「ありがとうございます。ぐっすり寝られました」
「それは良かったわ。朝ご飯ができているから、着替えて下におりてきて」
「わかりました。すぐいきます」
僕はマリナさんが部屋を出ていくと、部屋に準備されていた服に着替えた。先ほどからいい匂いがしていたので、先ほどからおなかが鳴っている。これはベーコンのにおいにだろうか。下に降りるとアレックスさんがいた。もう食べ終わっているようだ。
「やあトムくん。今日からしっかり働いてもらうよ」
「はいアレックスさん。よろしくお願いします」
「まずは働くためにしっかり食べないとな」
マリナさんがキッチンの方から朝食を持ってきてくれた。やはりベーコンのにおいだったようだ。それに加えてひと切れのパンと目玉焼きだ。この世界の食べ物は基本的に食べ物の呼び方や見た目が同じことが多いようだ。朝食を済ませるとアレックスさんと畑に出た。僕が今日やるのは雑草取りだった。
「結構広い畑だからな。俺一人で雑草取りをやっていると日が暮れちまうんだ。魔法を使ってやることもあるんだが、あまりMPがないもんでな。時間がない時や疲れているときにしか使わないんだ」
「そうなんですね。魔法はみんな使えるんですか?」
「簡単な生活魔法ならみんな使えると思うぞ。魔力が高い奴は冒険者になっちまうから、この辺にはなかなかいないがな。いや、一人いたか」
そういうとアレックスさんは遠くに見える家に目をやった。
「あそこの家にいる娘さんが、魔力が高くて冒険者になることを進められていたそうだが、本人はやる気がなくて家の手伝いをしている」
「そういう人もいるんですね」
「かなり稀だがな。さあ、仕事にとりかかろう」
雑草取りは順調に進んだ。途中、雑草とは違う形の草が生えていたのでアレックスさんに聞いてみると、それは薬草だという。けがをした時に使えるということで、雑草とは別に分けて持ち帰ることにした。気が付くと日が暮れ始めていた。
「トムくんおつかれ。そろそろ家に帰ろう。きっとマリナがおいしい夕飯を作って待っているよ」
「はい。楽しみです」
二人で家に戻ろうとしたが、あることを思い出した。
「アレックスさん、先に行っててください。」
「どうした?」
「薬草せっかくとったんで集めて持っていきます」
「おお、そうか。わかった。先に行ってるよ」
薬草は何か所に分けておいたのでそれを回収していく。最後の薬草を袋に詰めたところで遠くの方から悲鳴が聞こえてきた。何だろうと思ってそちらの方を向くと、昼間アレックスさんが言っていた。冒険者に誘われた娘さんのうちの前に大きな獣が立っていた。その目の前で震えている女の子がいる。どうしよう、アレックスさんを呼びに行かなきゃ。でも今呼びに行ってたんじゃあの子は....
気づけば近くにあった鍬をもって大声で叫びながらその獣に向かって走っていた。するとその声に気が付いたのか、獣はこちらを振り向く。イノシシだ。しかし、知っているイノシシよりも牙がかなり発達している。あれに嚙まれればひとたまりもないだろう。その姿を見て一瞬ひるんでしまった。そのひるんだ姿を見てか、イノシシはこちらに猛スピードで向かってきた。
「うわああああああああ」
恐怖で叫びながら、無我夢中で持っていた鍬を野球のバットのように振る。
ガンッ
鍬が何かに当たった音がする。見ると、イノシシの脳天に鍬が当たっていた。イノシシは猛スピードで来ていたため止まれず、僕のすぐ横を通り過ぎて前足から崩れるながら地面を滑り、止まった。
「ハア、ハア、ハア」
自分が息を切らしていたことと、鍬を持っていた手がしびれていることに遅れて気が付き、それと同時に地面にへたり込む。
「おーい、トムく―――ん」
アレックスさんが走ってきて猪を見て驚いていた。
「こ、こいつはワイルドボアじゃねぇか。なんでこんなところに。それよりも大丈夫か?」
「な、なんとか。それよりも女の子が」
「女の子?あの子か!」
アレックスさんは女の子に駆け寄っていき声をかけている。女の子は腰が抜けてしまったようで、アレックスさんがおぶって家の中まで連れて行っていた。しばらくして家から出てくると今度は僕をおぶってアレックスさんの家まで運んでくれた。特にけがもなかったのだが早めに休むよう言われて、晩ご飯を食べ、体を洗ったあとすぐ眠りについた。その日の夢には、あの夕方の出来事が出てきた。あの時は怖かったのだが、夢の中だと客観的にその場面を見ることができていたのが、不思議な感覚だった。
ピピッピピッ
目覚まし時計の音?早く止めなきゃ。そう思って止めようとするのだが目覚まし時計がない。そもそも目覚まし時計なんかあっただろうか。目を開けてみると目の前にステータスが映し出されていた。
「レベル3か」
ん?
「レベル3!?」
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