第1眠後半 ドリーマー
「こ、このスキルは....」
その場にいた全員が息をのむ。最後は一体どんなスキルが出るのかと期待のまなざしを向けてくる。
「なんなんじゃろうな?」
ズコーーー!
その場にいたみんながズッコケた。
「召喚士のじいさんでもわかんねえのかよ」
「すまん。見たことなかったんでの。どれ、ちょっと詳しく見てみるかの」
そういうと召喚士のおじいさんは、目を細めた。
「おかしいのう。霧がかっててよく見えん。ほかの三人は良く見えたんじゃが。ん?少し見たぞ。なになに、経験値が入らないじゃと!?」
みんながなにを言っているのかわからないというような顔をしている。その沈黙を破ったのは、リュウジだった。
「くそスキルじゃねえかよ。お前この世界にきてもなんもできねえ役立たずのままかよ」
僕は言葉が出なかった。
「じいさん。こんな奴のために割く時間はねえよ。とっとと終わらせようぜ」
「そうかの。いやーなんとも気の毒じゃが、勇者はおろか冒険者になるのも難しそうじゃの。召喚した責任もあるからわしが知り合いに言って、働き口を探してやろう。ほれ皆の者、これにて儀式は終了じゃ。思う存分スカウトするがよい。」
そういうと三人にわっと冒険者たちが群がっていった。その前に三人は何やら話し合っていたようだが、僕には聞こえなかった。すべてが遠のいていくようで周りの音がなにも聞こえなくなっていたのだ。意識も遠のいていく。
気が付くと、馬車に乗せられていた。隣には、あの召喚士のおじいさんがいた。
「おお、目覚めたようじゃの。かなりショックだったようじゃな」
「そうみたいです。僕ってば全然だめですね」
「そんなことはない。いきなり違う世界に連れてこられた上にこの世界の命運を託されようとしていたのじゃ。心労は相当なもののはずじゃ」
「ありがとうございます。あの、一つお聞きしたいんですけど彼らはどうなったんですか?」
「おお、あやつらか。それぞれAランクパーティに引き抜かれていったようじゃぞ」
「それぞれ....ですか」
それは意外だった。いつも一緒のイメージだったから、強いところに3人で入るものだと思っていた。
「そろそろ見えてきたぞ」
前方を見ると、ちらちらと家の明かりが見えてきた。あたりは日が沈み、すっかり暗くなっていた。とある家の前で馬車は止まった。
「この家じゃ」
そういうと、馬車を降りて家の中に入っていった。そして、夫婦とみられる人たちと一緒に出てきた。40代くらいだろうか。僕も馬車を降りた。
「この者たちは、わしの知り合いの子どもじゃ。農家をしておるからここで働かせてもらいなさい」
男性の方が近づいてきた。とてもやさしそうだ。農業をしているということで、体はがっしりしている。
「やあ、こんばんは。私はアレックス。話は聞いているよ。農家はいつも人手不足だから助かるよ。これからよろしくね」
「僕、トムって言います。こちらこそよろしくお願いします。」
「よし、頑張るんじゃぞトム少年」
そういうと召喚士のおじいさんは馬車に乗った。
「おお、そうじゃった。使うことはないかもしれぬが念のため。自分のステータスを見たいときは、『チェック』と心の中で唱えると自分自身だけ確認が可能になる。わしからの説明は以上じゃ。元気でなトム」
その言葉が終わると同時に馬車は走り出し、闇の中へと消えていった。アレックスさんの奥さんであるマリナさんとも挨拶を済ませ、今日はもう遅いとのことで眠りにつくことになった。
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