~とある雀荘にて。橋爪さん その1~

(携帯電話が鳴る。組員の人間が、橋爪の耳元に携帯電話を添える)


……俺だ。……あぁ。……あぁ、そうか。分かった。助かったよ、また頼む。


(組員、携帯電話を切る)


おっと、それロンだ。

メンホンイッツードラドラ。……悪いね。連荘(レンチャン)しちまって。


ん? 誰から電話かって?

……なに、お前が気にすることじゃない。

そんなことより、俺の裏ドラが乗らないことを今は祈るんだな。


(ドラを捲る)


……ふん、神様はいねぇってよ。……倍満だ。

まだ続けるかい?

……そうかい。懲りねぇな、お前も。


まぁ、どれだけ躍起になっても無駄だと思うがね。お連れさんを逃がすための時間稼ぎのつもりらしいが、お生憎様ってやつだ。


……どうした? 鳩が豆鉄砲でも食らったみたいな顔して。そんなに意外な発言だったかい?


(麻雀は次局へ。牌を揃えながら)


なぁ、気が付かねぇか。お前、手のひらの上で踊らされてるんだぜ。

ちょうど種銭も尽きる頃合いだろ?

次はタマでも賭けろよ。お連れさんよろしくな。


……あぁ。さっきの電話、そういうこと。


(橋爪、並べた牌をそのまま倒す)


ツモ。48,000。

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