4 黒幕
俺はクライアントの心象世界にダイブした。
正直、渋谷天狗に俺と同じ事ができるのかは大いに疑問だったのだが、俺がダイブしてから数秒後には、渋谷天狗も心象世界に現れた。
クライアントの心象世界は、だだっ広い野原だった。そこで彼女はぼんやりと座っている。その様子に、違和感を感じた。
何かを恐れているとか、迷っているとかいう表情が見受けられないのだ。彼女が
おそらく彼女はクライアントなどではない。ただのおとりだろう。とすると、渋谷天狗の真の狙いは・・・。
「現れましたよ、妖怪が」
渋谷天狗が指差す方向を見ると、現れたのは見覚えのある妖怪だった。
「グオウ」と吠えたそいつは、『河童の里』で会った妖怪『
それよりも、渋谷天狗、おまえはなぜ雷獣の背後へ回ったんだ? 背後を取って攻撃するということか?
雷獣、無警戒すぎるだろう。俺の方しか見てないぞ。
雷獣に俺の必殺の電撃が効かないのはわかっている。ここは『河童の里』での経験上、「ブーメラン・ペンシル」で攻撃だ。
俺は胸ポケットからシャープペンシルを取り出すと、「ペン回し」を始めた。イメージは「ブーメラン」そして「ハンマー」。
「ペン回し」の状態から俺は、「ブーメラン・ペンシル」を『雷獣』に向かって放り投げた!
その時、渋谷天狗は
「やはりそうか」俺は苦々しく言った。「雷獣はお前の配下だな。最初から俺を陥れるつもりだったというわけか」
「今頃気づいたか」渋谷天狗はあざ笑っていた。「ここでお前を倒す。覚悟しろ! やれ、雷獣!」
雷獣が俺に向かって電撃を放つ!
だが、実体ではない俺には効かない。電撃は俺の体を通過した。
渋谷天狗は驚いたような顔をした。どうやら心象世界で俺に攻撃しても効かないことは、知らなかったようだ。
ということは、俺に関する主な情報源は、現実世界で戦った『河童の里』での戦いと、あとは心象世界で俺に反撃もできずに退散した妖怪から得たものに違いない。
つまりは、『河童の里』を襲った黒幕は渋谷天狗だったということだ。桜子が推測したとおりだったのだ。
「いいのか?俺を攻撃する映像が会場の大型スクリーンに映ったら、観衆がどう思うか」
「会場のスクリーンには、あらかじめ撮っておいた、俺が悪霊を倒す映像が流れているのさ」
やっぱりこいつはイカサマ野郎だった。
「なぜ『河童の里』を襲った!?」
だが奴はそれには答えず、
「ここで倒せないなら、現実世界でお前を倒すまでだ!」
と言い放つと、雷獣ともども消え去った。
俺も急いで現実世界に戻った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます