2 パクリ?


『何を企んでるか知らないが、行ってやるよ。ニセモノ呼ばわりは許さない』


 俺は動画共有サイトのコメント欄に宣戦布告文を書き込んだ後、渋谷天狗についてネット検索してみたが、オフィシャル動画以外にめぼしい情報はなかった。


 仕方がないのでオフィシャル動画を見てみたところ、


「・・・なんじゃこりゃ~!」


 それは俺がやってるのと全く同じ手法だった。あり得ないくらいに。


 椅子に座らせたクライアントに催眠術をかけ、その意識下に入り込む。そしてクライアントに取り憑いている怪異あやかしを退治し、さらにそれを映像化して、動画内のモニターに映し出す。


 まるで見てきたかのように同じじゃねえか。


 いや、これは本当にあり得ない。完全にパクられてる。きっとどこかから情報が漏れたに違いない。


 でもこれは実際に除霊とかやってるんじゃなくて、それっぽい映像を作ってるだけなんじゃねえか?つまりはイカサマってことだが。


 いや待て、渋谷天狗は俺に挑戦状を叩きつけたんだぞ? 奴は俺を蹴落とそうと企んでるはずだ。だとしたら、ただのイカサマじゃないだろう。


 まずどういう形で俺に挑んでくるのか? 俺のやり方をパクっているんだから、考えられるのは、


①2人のクライアントをステージに上げて、それぞれ1人ずつを担当して除霊合戦を行う。


②1人のクライアントをステージに上げて、同時にその意識下へダイブし、どちらが除霊できるかを競う。


このどちらかになるのではないか?


 どちらかに絞るよりも、どちらにも対応できるように備えるしかないな。


 まだ時間はある。一応、ほかの可能性も考えてみよう。


 ・・・う~ん、俺、あんまり頭がいい方じゃないからな。思い浮かばないや。


 ここは桜子の力を借りよう。




「この映像、おかしいんだよねえ」


 渋谷天狗のオフィシャル動画を観た桜子は、すぐさま指摘した。


「この後ろのモニターに映っている映像は、私たちの場合だと高雄たかおさんがタブレット端末に送ってくるものだけど、クライアントは眠っていて観ていないはずでしょ? つまり私たちが除霊したときに観たのは、高雄さんを除いたら私とクロちゃんだけなんだよねえ。映像情報が漏れたとしたら、2人のうちのどちらかからってことになるでしょ?」


 そうか。そうだよな。


 俺はクロを見やった。


「俺を疑うニョか?俺じゃニャイぞ」


クロは全力で否定した。こいつ、わざと猫言葉っぽく喋るから嘘っぽく聞こえるんだよなあ。


「・・・可能性としては、もう一つあるんだよねえ」


 桜子は驚くべき事を俺に語った。




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