1 売られた喧嘩
「
なんだそれ。
俺は桜子の隣に座って、タブレット端末の画面を見た。
動画のタイトルは『ニセモノの
「皆さん、世の中には本当に悪質な霊媒師や祈祷師がいますから、気をつけてくださいね」
天狗のお面をつけた男が登場し、視聴者に訴えている。ビシッとスーツを着こなしてはいるが、そのお面のせいでお前の方が怪しい人物に見えてるぞ。
「特に最近有名になってきた『
あっ、実名を挙げて喧嘩を売ってきた。
「名前を出してるから信頼できそうって思う人がいるかも知れませんが、実名とは限りませんからね。チャンネルでも一切顔出ししていませんし。だいたい『クロ』って何ですか? 猫ですか?」
猫又だよ。
「私はホンモノの除霊師ですから、ニセモノは許せないんですよ。どうです、どちらがホンモノか、戦ってみませんか?」
なんか「ホンモノ」って言いながら、こいつ限りなくニセモノ臭いな。
「1週間後の26日、東京ドー〇シティホールを押さえてあります。そこで対決しましょう。対決の時間は、午後6時としますか。クライアントも募集します。除霊して貰いたい方は、URLに連絡してください。対決をご覧になりたい方には、当日アリーナ席・バルコニー席を無料で開放します。良い席は早い者勝ちですよ」
何だその財力は。東京ドー〇シティホールを押さえるって、どれくらいかかるんだろう?・・・調べてみたら、目ん玉が飛び出るくらいの金額だった。
何者なんだよ、渋谷天狗?
「
何で俺たちは一方的に喧嘩を売られているんだろう?
「渋谷天狗」って、まさか本当に天狗じゃないだろうな?
「売られた喧嘩は買うよね?」
桜子が買う気満々で言ったが、俺は不安を感じていた。
「喧嘩は買うが、当日は俺だけで行く」俺は桜子に言った。「奴の目的はもしかしたら、桜子とクロの正体を観客の面前で暴くことかもしれない。そんな危険なところへ、君たちを行かせるわけにはいかない」
「えっ、だっていつも一緒に戦ってきたのに・・・」
「正体を暴かれたら、一緒に暮らせなくなるんだぞ? 大丈夫だ、俺の力を信じてくれ」
桜子はそれでも不満そうだったが、俺は何とか説得した。
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