同じ校舎の下

口羽龍

同じ校舎の下

 悠斗は今日から高校生だ。去年の夏からやってきた受験だが、努力が実って専願の私立高校に入学する事ができた。


 悠斗は校舎を見上げた。これが夢に見た校舎だ。これからの高校生活は大変だけど、いい大学に行くために頑張ろう。


「今日から高校生か」


 悠斗は教室に向かった。その教室は廊下の1番奥だ。廊下には何人かの生徒がいて、話をしている。みんな楽しそうだ。ここに入れてよかったな。


 悠斗は教室に入った。自分の席は3列目の一番後ろだ。何人かの生徒は席に座って1限目を待っている。


 悠斗は自分の席に座った。と、隣の席の女子生徒に目がいった。小学校3年まで同じ小学校で、転校によって離ればなれになった真希(まき)だ。まさかここで会えるとは。


「あれっ!? 真希ちゃん?」

「えっ!?」


 真希は驚いた。まさか話しかけられるとは。でも、どうして私の事を知っているんだろう。


「俺だよ、小学校3年までいた小学校の悠斗だよ」


 それを聞いて、真希は小学校3年の頃を思い出した。まさか高校で再会するとは。受験は大変だったけど、ここに来れてよかった。また悠斗に会えたから。


「えっ!? まさかここで再会するなんて」

「まさか同じ高校に入るなんて、驚きだよ」


 と、誰かの足音が聞こえてきた。どうやら先生のようだ。早く準備をしないと。


「あっ、先生が来た」


 その声とともに、先生が入ってきた。教室の生徒はみんな、所定の席に座った。




 学校が終わり、最寄りの駅に向かう間、悠斗と真希は並んで歩いていた。駅までの道は桜が満開で、入学した彼らを祝っているようだ。1年生はそれに見とれながら歩いていた。


「悠斗くん、どんな日々を送ってきたの?」


 ふと、悠斗は転校してからの真希が何をしていたのか、気になった。仲良くしていたのに、全く会う事がなくなり、どうなったのか知りたかった。


「小学校5年の時におじいちゃんが死んで、中学校1年の時にはおばあちゃんも死んだんだ。中学校は大変だったなー。3年になったら高校受験があって、進路でもめたし」


 全く知らなかったが、色々あったんだな。真希は山奥の生徒数の少ない小学校に転校したが、今でもその小学校はあるんだろうか?


「そうでしょ。私も初めて経験して、大変だったな」


 悠斗はその気持ちがわかった。自分も初めての受験は大変だった。だけど、それがなければ、この高校に入れていなかった。それに、受かっていなかったら、この先の進路はどうなっていただろう。


「家族はどうしてるの?」

「家族? うーん・・・」


 だが、おじいちゃんやおばあちゃんの事を考えると、下を向いてしまう。何かあったんだろうか? 悠斗は気になった。


「どうしたの? はっきり言ってみてよ」

「お父さんとお母さんが離婚して、お父さんが育てる事になったの。あっ、だけど、また転校にはならなかったよ」


 悠斗は呆然とした。まさか、両親が離婚していたとは。別れている間にこんな事があったとは。色々と波乱の日々を送ってきたんだな。


「そっか」

「だけど、やっぱりお母さんの方がいいな」


 真希は父より母がいいと思っている。優しくしてくれたし、よく相談に乗ってくれる。でも、できれば、母と暮らしたかったな。


「そんな日々だったんだね。大丈夫だった?」

「大丈夫だよ」


 真希は笑みを浮かべた。苦しい生活だったけど、先月から1人暮らしを始めて、自由に生きている。この東京の方がもっと楽しいし、賑やかだ。


「それはよかった」


 悠斗も笑みを浮かべた。やっぱり東京はいい所だ。豊かで、賑やかだ。そして、夢がある。


「ねぇ、帰ったら久しぶりにゲームでもしない?」

「いいけど」


 悠斗は真希と一緒にゲームをする事にした。小学校3年で離ればなれになって以来だ。楽しみだな。




 数十分後、2人は悠斗の家にやって来た。悠斗の家は以前と同じところにある。真希は懐かしさを覚えた。あの時と全く変わっていない。


「お邪魔しまーす」


 2人は家に入った。真希は辺りを見渡した。ここも懐かしい。真希はわくわくしている。


 と、そこに悠斗の母がやって来た。真希を見て、母は驚いた。まさか、また来るとは。


「あら、真希ちゃんじゃない。お久しぶり」

「あっ、お久しぶりです」


 真希は少し照れている。再び会ったけど、全く変わっていないな。


「元気にしてた?」

「はい」


 でも、悠斗の母は思った。どうしてまた真希が来たんだろう。この近くに戻ってきたんだろうか?


「どうして来たの?」

「同じ高校になって、再会したので」


 悠斗の母は驚いた。まさか、真希が悠斗と同じ高校に進むとは。一度離ればなれになった2人がこうして再会するとは。


「へぇ、同じ高校に進んだんだ」

「まさか同じ高校に進むとは。何かの偶然よね」

「うん」


 2人はリビングでテレビゲームを始めた。あれからソフトやハードは変わったが、真希も最新のゲームをやっているようだ。


「転校してから、何か変わりはなかった?」

「私が小学校を卒業して1年後、その小学校が閉校になったの」


 悠斗は驚いた。まさか、閉校になったとは。そして、最後の卒業生になったとは。閉校が決まった時には、寂しかったんだろうな。そして、閉校式には来たんだろうか?


「そうなんだ」

「まさか、私が最後の卒業生になるとは」


 真希は閉校式の事を思い出した。村民がみんな集まり、閉校式に参加したという。みんな、地元の小学校が閉校になるのを寂しそうに思っていた。だけど、それが時代の流れなんだろうと感じる人もいたという。


「へぇ」

「僕は普通の中学校生活を送ってきたな。色んな友達と仲良くなって」


 悠斗は中学校の頃を思い出した。色々大変な事が多かったけど、その中で多くの友達に恵まれ、楽しい中学校生活だった。3年生の高校受験は大変だったけど。


「そっか」


 真希は悠斗の気持ちがよくわかった。真希も中学校で初めて、受験を経験した。こんなに真剣に勉強したのは初めてだ。受験で自分の未来が決まるかもしれない。そんなの初めてだけど、これからそんな事を何度も経験していくだろう。これからのためにも、受験は必要なのだ。


「こんな事になるって、予想してた?」

「ううん」


 悠斗とまた会えるなんて、真希は全く予想していなかった。


「これからまた、よろしくね」

「うん。こちらこそ」


 悠斗は決意した。また会えたのだから、これからまた仲よくしていこう。一緒に色んな困難を乗り越え、いい進路を見つけて、素晴らしい未来を歩いていこう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

同じ校舎の下 口羽龍 @ryo_kuchiba

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画

同じコレクションの次の小説