第30話 vsにっちゃん

遡ること数分前。

 

「さて、今日は……」


 二日目。私たちは月城さんの前に立ち指示を待つ。大天使二人はパラソルの中で見ている。


「三人の二人の実力を見せてもらう!」


 美羽は今武器を持っていない……。つまり……。


「わ、私と、ニエちゃんと、空ちゃんですか」


 私は氷華ちゃんと戦ったことあるけど……。


「なら、空とニエでしょ」


 美羽が私たちを見て言う。まぁそうなるよね。


「二人はそれでいい?」


 野々原先生の言葉に頷く。


「負けないよ?なっちゃん」


「私だって!」


ーーーー


そして今。


「ついにこの日が来たね!」


 真夏の太陽が照らす中。


「がんばれぇー!二人とも!」


 大天使も見守る中。


「負けないよ!」


 正面に立つは、にっちゃん!


「それでは! 始め!」


 月城さんの合図と、ともに私は武器を持ち走り出す!


(私の対策はきっとされてる!考えて戦わないと!)


 にっちゃんの麻痺弾。当たったら一発で動けなくなるから、一撃勝負!


『バン! バン!』


 にっちゃんが私に向かって発砲する!


これぐらいなら!


『シュ!』


 私は華麗にかわし、にっちゃんに刃を振る!


「やぁぁあああ!」


『ブン!』


 しかし、にっちゃんはそれをかわすと……。


『バン! バン!』


 二発打った銃弾は私……の偽物に当たる。


「こっちだよ!」


 背後をとった!


「相変わらずだね、なっちゃんは!」


 にっちゃんは後ろを振り向かず、武器だけを背後の私に向け、発砲する。


『バン!』


 一発の銃弾が私に命中する!



……が!



「学んでないとでも思ったの!?」


 空中にジャンプしていた私は勢いよく剣を振りかざす!


『サクッ!』


 が、にっちゃんはなんとか反応し、右肩の服に少しかすった程度だった。


「やるね!なっちゃん!」


「にっちゃんもね!」


 私たちは再び武器を構える!


「ね?由未がきて正解でしょ?」


「うん。空はまだまだ甘い」


 私は走り出すが……。


「そろそろ終わりにするよ!」


 にっちゃんの言葉にちょっとイラつく。


「私を甘く見ないで!」


 私はすぐに、なっちゃんの間合いに入る!


『ブン! ブン!』


 まただ! 避けられちゃった!


「終わりだよ!」


『バン! バン!』


 目の前で発砲されるも!


『ガキーン』


 即座に反応し、弾丸を弾くも……。


「な!」


『ブスッ!』


 右肩に命中してしまう。


(か、隠し球……!)


 同じ軌道に、銃弾を二発なんて……!


「うぐ……!」


 身体が動かない……これが麻痺弾!


「そこまで! 勝者ニエベス!」


 ま、負けた……。


勝ちを告げられたにっちゃんは武器を下ろす。すると……。


「身体が……動く!」


「私の意思で調整できるからね」


 す、凄いや……改めてなんで美羽に負けたの……?


「ありがとうにっちゃん。まぁさっき終わりだよって言われた時はイラついたけどね」


 私たちは握手をする。


「試合中はカッとなることもあるし気にしてないよ」


 あぁ……。本当に優しいなぁ。


「空……」


 月城さんに呼ばれ、私は声の方向を向く。


「お前はまず、『分身の上限を増やすことだ』」


 薄々気づいてたけど……。


「空の二人って少ないからね」


 パラソルから出てきた美羽が私に言う……。


「やっぱりそうだよね」


 改めて言われるとちょっと落ち込む。


「で、でも逆に言えば、増えたら無敵だよ!」


 氷華ちゃん……。ありがとう。


「そうだな! ニエと氷華はこのまま体内粒子の増加だな。」


 月城さんの言葉に、にっちゃんと氷華ちゃんは頷く。


「そして美羽」


 月城さんは真剣な眼差しで美羽を見つめる。


「お前には詠唱をもう一つ獲得してもらう。その前に武器をプリズマ化にすることだ」


 詠唱は技として作り上げるのが難しいし……。そもそも……。


「武器がありません」


 美羽は俯く。


「それが、僕たちへの気持ちなの?」


 パラソルから出てきた宮里が、美羽を見つめる。


「僕たちに救われた、その時に拾った羽根。抗おうと戦った木の弓。その時の気持ちを思い出せば具現化できるはずよ」


 武器を探すんじゃなくて、思い出し、具現化か……。


「ですね! ありがとうございます! 雪様!」


 美羽は前を向き宮里さんを見つめる。


「それじゃあ各自各々の課題に沿って練習!」


『はい!』


 四人は別々になり、悩む。私は……。


「体内粒子の増加!」


 私の分身は体内粒子で作られている。増加させれば絶対に数は増える!


「走り込むぞ!」


 私はすぐさま走り出す!絶対に強くなって見せる!


「・・・空」


 声がすぐ横から聞こえる!振り向くと。


「に、西谷さん!?」


 私の走る隣で飛びながら私に話しかけてきた。


「やろ?」


 私は足を止める。


「由未と練習できるんだから嬉しく思いなさいよ?」


 宮里さんが私たちを追いかけてきた。


「え?私と練習試合ってことですか?」


 さっき負けたばっかりなのに?


「そう。今は私と練習」


「それじゃあ由未頼んだよ!」


 二人は抱きついた後、宮里さんは私たちの間に立つ。


「空は、分身に固執しすぎ、とりあえず全力でいいよ。」


 西谷さんは間合いをとる。


「殺すつもりで……でしょ?」


 その言葉を聞いて思い出す……。なんだかんだ練習見てもらってるし、お世話になってるけど。


「……分かりました」


 この人たちが憎いのには変わらない!


真夏の太陽が照り続ける中、西谷さんとの練習試合が始まった。

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