第29話 冬の大天使

「だ、だ、誰!?」


 何この女の子!


「あーー!」


 私の叫び声にみんなが集まる。そんな中、宮里さんが少女に飛びつく。


由未ゆみ〜!きてくれたんだ!」


 宮里さんが由未と呼ぶ人物に抱きつく。


「うん……雪の頼みだからね」


「本当に好き!大好き!」


「私も大好き」


 何を見せられてるんだ……。


「う、うーーん!」


 少女が伸びをすると……。


『バサ!』


 翼が、大きく開く。


「翼ってことは……!」


 この人が前に言ってた……。


「あいつの名前は西谷由未にしたにゆみ。雪と同じ、とうの六大都市を護る大天使さ」


 月城さんが私たちの元に来て説明する。この人がもう一人の大天使……。


「……君たちのことは知ってる。雪に頼まれてお手伝いに来た」


 宮里さんに抱きつかれている中、西谷さんは私たちを見て話す。


「久しぶりね由未」


 野々原先生も知ってるみたいだ。この人たちの関係性がいまだに分からない。


「ん。風馬も由衣も久々だね」


 分かってることは英雄のことを大天使が知ってるってことだけか……。


「あれが! 由未様! 雪様と違う可愛さと言うか眠そうな顔が好き!」


 美羽は大天使二人を見て興奮している。確かにすっごい眠そうな顔……。


「ほらほら! とりあえずご飯食べましょう! 二人も食べるでしょ?」


 野々原先生が仕切る。先生らしいや。


「雪が食べるなら……私も」


「なら食べよ! おいで!」


 二人は手を繋ぎリビングへ向かった。


「だ、大天使って若いんですね……」


 氷華ちゃんの言う通りだ。もっとお姉さんって感じがしたけど……見た目は私たちと同じじゃないか。


 リビングへ降りみんなで……と言うか美羽がほとんど指揮を取り、カレーを作った。大天使様に美味しい料理をって人一倍頑張っている。


「美羽」


「なに? 空?」


 一人前線で、武器も壊れ、精神的に参っているはずなのに……。


「無理したら怒るからね」


 私は美羽の肩にポンっと手を乗せる。


「大丈夫よ。今この時だけは楽しませて」


 目の前に憧れの人がいる……。確かに今は変なことを言うべきではなかったのかな。


「お! お待たせしました!」


 椅子に座ってた大天使に美羽がカレーを持っていく。


「美味しそう! ね! 由未!」


「うん。早く食べたい」


 その言葉を聞いて美羽は後ろを振り向き私たちに向かってめちゃくちゃ笑顔になる。


「美羽ちゃん楽しそうね」


 にっちゃんが美羽を見ながら話す。確かにこんなに笑顔なの初めて見たかも。


 カレーは無事みんなの元へ行き届き……。


『いただきまーす!』


 疲れ切ってた身体だったけど、みんなで作ったカレー。


「おいしい!」


 疲れ切ってて余計に美味しく感じる!


「由未美味しい?」


「うん美味しよ。雪は?」


「僕も! 美羽はこんなに美味しい料理作れるんだね!」


「あ! ありがとうございます!!」


 私の隣に座っていた美羽は大喜び! 楽しそうだ。


「そういえばなぜ、西谷さんも?」


 ふと思った。特訓なら宮里さんだけで十分と思ったからだ。


「それは空のためだ」


 月城さんがカレーを食べながら話す。え? 私のため?


「そうなの?雪?」


 由未さんもきょとんとした顔で宮里さんを見つめる。


「そうねぇ。確かに空のためかもね」


 私のためってなんだ?


「まぁ明日以降のお楽しみってやつだな」


 こうしてみんなで楽しくカレーを食べお風呂へ向かう。


ーーーー


「って!女子多すぎ!」


 別荘のお風呂は露天風呂で広かった。けど……。


「た、確かに七人いるもんね」


 氷華ちゃんもちょっぴり居づらそう。


「私は嫌いじゃないよ」


 湯船に浸かるにっちゃん。今日も綺麗な肌だ。


「ニエは湯船が好き」


 西谷さんは宮里さんに湯船の中でも抱きつかれながら、にっちゃんを見つめる。


「不満だったら男子風呂行けば?」


 美羽は大天使を見ながら私に話しかける。あっちは月城さんしかない。貸切いいなぁ。


「行かないわよ!」


 だからって行くわけないじゃん!


「こら喧嘩しないのよ」


 先生に止められる……。全く合宿に来てまで何してんだか。


ーーーー


 お風呂から上がり部屋へ戻る……が


「大天使二人はどうするの?」


 これ以上場所ないんだったよね?


「大丈夫よ! じいやに頼んで昼のうちにダブルサイズの布団用意してもらったから! まさか由未様が来るとは思わなかったけどちょうど良かった!」


 わーお。さすがお金持ち。


「さて今日は寝るぞまた明日な」


 こうして私たちは各々の部屋に戻った。


ーーーー


「今日は大変だったね。なっちゃん」


 同じ布団で寝るってき、緊張する!


「う! うん! にっちゃんこそ疲れた?」


 ドキドキしすぎて声が裏返る。


「疲れたけど、やっぱり楽しいなって感じたな」


 朝から猛特訓だったし、疲れたけど……。


「合宿っていいね!」


 初めての合宿にやっぱり楽しんでる私もいた。


「それじゃあ。おやすみなっちゃん」


「……うん。おやすみにっちゃん」


 こうして合宿一日目は終わった。


ーーーー


二日目。 


「ついにこの日が来たね!」


 真夏の太陽が照らす中。


「がんばれぇー!二人とも!」


 大天使も見守る中。


「負けないよ!」


 正面に立つは、紫髪の少女!


「それでは! 始め!」


 月城さんの合図と、ともに私は武器を持ち走り出した。

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