第26話 お誕生日

『パン! パパン!』


 限界を開けると私にクラッカーの紐などが飛んでくる!


『お誕生日おめでとう!!』


 そこにいたのは、にっちゃん、美羽、氷華ちゃんだった。


「え? え?」


 私はすぐに状況が理解できなかった。


「なにぽかーんとしてんのよ! 今日は空の誕生日でしょ!」


 そっか……私誕生日……。


「でもみんな用事あるって」


「それはなっちゃんより先にお家に先回りするため!」


 だからみんな用事あるって嘘ついて……私のために……。


「こ、この前、野々原先生からお家聞いて、空ちゃんのお母さんと話し合って……お、お誕生日会決行したんですよ!」


 いつも大人しい氷華ちゃんが今はすごく笑顔だ。その顔も可愛いよ。


「あ、ありがとう!!」


 私はなんとか状況を理解する。


 玄関を抜け、リビングへ向かうとそこにはケーキや料理などなど豪華に用意されていた!


「おめでとう! 空」


 リビングにはお母さんがいた。笑顔で少し嬉し涙も流していた。


「ありがとう! お母さん!!」


 私はお母さんに抱きつく。


「そ、それにしてもすごい量の料理だね。お母さん作ったの?」


「ちょっとはね」


 お母さんの視線の先には三人が笑顔で笑っていた。


「ウチたちが作ったに決まってるでしょ! ウチの料理スキル舐めないで!」


 すごい……美羽もだけど、それを手伝える二人も……。


「さぁ! 食べましょ!」


「ほ、ほら、空ちゃんも」


 にっちゃんと氷華ちゃんに背中を押され席に座らせられる。


『いただきまーす!』


 五人でいただきますを言った後、私はご飯を口に運ぶ。


「お、美味しい!」


「当たり前でしょ!」


 美味しさなのか嬉しさなのか、涙が出そうだった。美羽の自信も今日だけは許せた。


ーーーー


そして……


『ハピバースデーディア空〜♪』


 暗闇の中ロウソクの光がゆらゆらと揺れる。


「ふぅ〜」


 私はロウソクに向かって息を吹きかけると、火は綺麗に消える。


『パチパチパチパチ!!』


『おめでとう!』


 みんなから祝福される! 私今幸せかも……!


「16歳かぁ」


 美羽が私も見て呟く。


「美羽よりはなのよ?」


「はぁー? 実力はウチの方が上です!」


 いつもの睨み合いを見て、三人は笑う。


幸せな時間だなぁ


「さて! お風呂どうしよっか」


 お母さんが私たちの睨み合いを止める……。まぁ一人ずつで……。


「せっかくなら、空入りたい人と入れば?」


 美羽の言葉に全て察した……。この人は! 隣でニヤニヤしてる!


「わ、私は構いませんよ?」


 氷華ちゃんは私を見て笑顔で言ってくれる……く! う、嬉しいけど!


「氷華と入ると空がお世話することになるでしょう? ねぇ? ニエ?」


 にっちゃんを見ながら美羽は話す。


「そうね……。なっちゃん入ろっか」


「氷華はウチと入ろうね」


「う、うん!」


 マジか……。


ーーーー


 脱衣所でにっちゃんと二人で服を脱ぐ……。やばいドキドキしすぎて死にそう。


「わ、私先入るね!!」


 私はビビってすぐ湯船に浸かる。


「なら私先洗うね」


 にっちゃんはシャワーをつけ、お風呂の椅子に座ると頭を洗い始める……。


(うわぁ〜。にっちゃんの裸……綺麗だなぁ)


「なっちゃん?」


 視線を感じたのか目を瞑りながらも私に話しかけてきた。


「なっちゃんって意外と人の身体チラチラ見るよね」


 だって……。


「にっちゃんの身体綺麗だもん」


 やばいなぁ見ちゃいけないけど……目が釘付けだ。


「えっち」


「ち、違う!」


 えっちではない……はず。


 その後他愛のない会話をしながら、お互い身体を洗い、私も湯船に浸かろうとした時。


「なっちゃん、こっちおいで」


 ……そ、そそそっちは!?


 私は息を飲みにっちゃんの顔の方に背中を向ける。


『ムニィ』


 む、胸が当たって……!ドキドキがさっきよりも早い……!


「本当におめでとう。そして今この時を生きていてくれてありがとう」


 私をギュッと抱きしめる。


「……私こそ、こうしてにっちゃんが生きてくれてて嬉しい。」


 目の前で組まれてる手にゆっくりと私の手を添える。


「まぁでも嫌いな天使のおかげだけどね……全く困ったよ……」


 複雑な気持ちだけど、今こうして一緒に入れるだけで私幸せだよ。


「それでも、今こうして一緒に入れるだけで私は幸せだよ」


 完全に心を読まれたかのように、にっちゃんがほぼ同じセリフを言う。読まれた?いや、一緒の気持ちなんだ。


「に、にっちゃん」


 私はさっきよりも手を強く握りしめる。


「わ、わたし! にっちゃんの……!」


「ちょっと!! まだ入ってるの!」


 お風呂のドアをドンドンとされる。


「……上がろうっか、なっちゃん」


「うん……」


 お風呂から上がりドライヤーを二人でして、リビングへ戻る。


「全く! 遅いわよ!」


「美羽嫌い」


「はぁ!?」


 こうして私の誕生日は徐々に終わろうとしていた。


 私の部屋で四人布団を引いて寝る。隣は氷華ちゃんだった。


(これからは合宿が始まる……。でもこんなに幸せなことをしてくれたんだから、頑張らなきゃ!)


 隣を見ると氷華ちゃんがぐっすり寝ていた。


私……これから先どんな困難もこの三人となら頑張れる!


 そして月日は流れ、学校は一学期終業式の日になっていった。

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