第21話 大天使

「ほら、おいで相手してあげる」


 宮里さんの生意気な態度にイラっとする! この人、勝てると思っているんだ!


「ふざけないで!」


 話してる間に体力もだいぶ戻った。分身も二つ使える! 私は宮里さんに刃を向ける。


「この二つの剣はね、貴女たちに殺されたお父さんの形見なの!」


 力強く握る手が少し震えていた……。お父さん見ててね今からこの人を!


「……なんで形見を使っているんだか……」


 私の大切な物に文句を言われる……。


「やぁあああ!!」


 私は我慢ならず、宮里さんに刃を振る。


『ガキーーン!』


 目の前を大きな氷壁が立ち塞がる! こんなに大きな氷……みなことない! ……でも!


「こんなもの!!」


 私は連続で氷壁に向かって切り刻み、氷壁を破壊する!


(いける!!)



 ……っと思った瞬間だった。


『ドゴォオオオン!』


 再び大きな氷壁が立ち塞がる。


「な、なんで?」


 こんなに大きな魔法、連続で出せるなんて無理がある……。


「ほら、僕のところまで来れるならおいでよ」


 宮里さんの声が、氷壁の奥から聞こえる。……一体どんな武器を使ったらこんな風になるんだ……。


「くっそ! 負けない!」


 連続で出せるなら、分身で裏を突くだけよ!


しかし、私が走り出そうとしたその時だった。


(足が……寒い……)


 咄嗟に足元を見ると、冷気が漂っていた。


「……所詮冷気だけ!」


 気にせず宮里さんに向かって走り出そうとするも……。


「う、動けない!」


 すでに足元は凍っていた。


『ジュワァァ』


 目の前の氷壁が、溶ける音が聞こえる。まずい!宮里さんがくる!!


「……わかった? これが実力差なのよ? 僕に、大天使に勝てると思わないで!」


 まだ傷一つ、ついてない、つけられていない、それなのに私はもう動けないままでいた。


「氷華ちゃんの時は砕けれたのに!」


 悔しい……! でも宮里さんの魔力は本物だ……。


「それじゃあ僕はここまで。それじゃ」


 宮里さんは翼を広げ飛び立とうとした。


『バン! バン!』


 銃声と共に私の足元に張り巡らせていた氷が砕ける!


「なっちゃん! こんな簡単に終わっていいの!?」


 後ろからにっちゃんの声が聞こえる……。


(そうだ私は!)


「ありがとう! にっちゃん!」


 私は全力で飛び立とうとする宮里さん向かって走り出す!


 憎き相手をこのまま帰らすわけにはいかない!!


「やぁあああ!!」


 私は宮里の背後に入り、剣を振りかざす!!


「……しつこい」


『ブワァアアア!!』


 ものすごい吹雪……!身体が凍りそうだ。


「……うぐ」


 私は猛烈な吹雪に耐え切れず、吹っ飛ばされてしまう。


「なっちゃん!」


 吹っ飛んできた私を、にっちゃんは支える。


「あ、ありがとう」


 身体の震えが止まらない……。こんな氷の魔法初めてだ。


「僕、そろそろ帰りたいんだけど……」


 宮里さんは、私たちを見て面倒くさそうに話す。宮里さんから見たら、私たちなんて相手にならないんだ……。


「これが大天使……」


「そうよ? すごいでしょ?」


 甘かった……。ここまで差があるのかと私は俯く。


「どうしたの! なっちゃん!」


 私を支えてくれたなっちゃんは、私の方を見て話す。


「あの人を! 倒すために今戦ってるのに! そんな諦めたような顔をするなっちゃん嫌だよ!」


「む、無理だよ……。にっちゃんだって見たでしょ!」


 私一人じゃ絶対に勝てない……。


「なら、私も戦う。」


 そう言うと、にっちゃんは立ち上がり宮里さんの方を向く。


「へぇ……。今のきみで……勝てるの?」


 私の方を見て宮里さんはにっちゃんと話す。無理だよ……一人でなんて。


「私だけなら……。まだ貴女たちには勝てない……。でも! 私には、なっちゃんがいる!」


 にっちゃんは私の方を見て笑顔になる……。


……そうだ、一人に固執しすぎだった。私には今最高の友達が目の前にいるじゃないか!!


「大丈夫! なっちゃんは私が支える!」


 立ち上がった私に、にっちゃんは抱きつく。温かい……その温もりに、さっきまで震えていた私の身体は、落ち着きを取り戻し始めていた。


「・・・」

 

 宮里さんは、何も言わずに私たちの方を見て待っていてくれている。まだ相手をしてくれるのだろうか。


「……いいわよ二人で来なさい。」


 まるで私の心の声を聞いていたかのような返事だ。二人でなら……勝てるのかな?


「……勝つよ! なっちゃん!」


 にっちゃんは拳銃を取り出すと、私に手を差し伸ばす。


「なっちゃん…きみと一緒なら何も怖くないよ。」


 その言葉に私は自信がつく。そうだ! 私だって!


「私も! にっちゃんとなら! 何も怖くない!」


 手を繋いで私たちは改めて宮里さんの方を向く。


「私は! 貴女たちを否定する!」


 刃を宮里さんに向けて話す。そうだ! こんなところで凹んでられない! 私の本当の使命を忘れるな!


「……それが貴女の選ぶ道なのね」


 宮里さんは一言言うと、再び激しい吹雪が私たちを襲う!


「さぁ! 第二ラウンド開始だよ!」


 宮里さんの言葉に私たちは身構える!


「行こう! にっちゃん!」


「うん! なっちゃん!」


 私たちはお互いを見て笑う。そうだ! きみと一緒ならなんだって怖くない!


 この戦い絶対に勝つ!

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