第20話 翼を持つ小女

『パキパキ……』


冷気が漂う……。謎の黒いモンスターは完全に凍って止まっていた。


 「ふぅ……全く何でこいつが……。まぁあいつ以外ありえないか……」


 謎のモンスターの上に立つ少女……!それは私は昔見たことある……。そして、美羽ちゃんから聞いた話にそっくりだった。


 「……あれ? 人がいたの? ……よこっらしょ!」


翼の生えた少女はジャンプし、私たちの前へと立つ……。


 脳が追いつかない……。死んだと思ったら、今度は因縁の相手? 一体何が起きてるの……。


 「……貴女……何者……?」


私は精一杯考えた結果、この言葉しか出てこなかった……。そして何故か私の足は震えていた……。


 「僕を知らない!? 本当に学校行ってる!?」


少女は後ろを向くと、大きな翼を大きく広げる。


 「僕の名前は『宮里雪みやざとゆき』天界の人間さ!」


ヒラヒラと舞う羽に神々しい姿……。私は言葉も出なかった。


 「……そっか」


宮里と名乗る人は、にっちゃんの方を向き何かをボソッと言った。

 

 「さぁさぁ! 帰りたまえ! 魔物は倒した!」


 「魔……物?」


何だそれ……聞いたことない……。


 「そう! これは魔物と言ってね、『魔界』からやってきた! ここで言うモンスターかな」


 魔界からやってきた? ってことは……!


 「魔界軍が侵攻するってこと!」


そんな! 私たちの平和はここで終わってしまうの……!? そんなの……いやだ!


 「そんなことまだあり得ないさ! 魔界軍はごく一部を除いで弱すぎる。今攻めても返り討ちにあうだけさ!」


 そう……なのか……。でもいつかはやっぱり……。


 「……貴女は何者なんですか」


にっちゃんが私と宮里さんの会話に入ってくる……。その身体はボロボロだった。……私もだけど。


 「……まぁまぁ! とりあえずこれをやるよ!」


宮里さんからふわっと渡されたのは羽根だった……。それを受け取ると。


 『シュワァァア』


何だろう優しさに包まれる感じだ……安心する……。


 「!? 傷が!」


その優しさに包み込まれていると、私とにっちゃんの傷はみるみるうちに治っていく……! こんなに早く回復する魔法なんてない! ……この人は本当に…。


 「……天使なんですか?」


私は意を決して宮里さんに問う……。


 「そうだよ! でも、少し違うかな?」


あっさりと宮里さんは私の質問に答える……。この人がお父さんを殺した可能性があるってことだ……。


 「僕はね! 天使じゃない! まぁ天使はたくさんいるけど……。さらに上!『大天使』と呼ばれる『九人』のうちの一人さ!」


 た、たくさんいる!?しかも宮里さんはその中でも最上位なのか……。


 「……宮里さんは……どうしてここに」


にっちゃんは冷静に質問する……。でも何だろう少し気まずそう……?


 「それはね! ここが僕の守ってる範囲内だからさ! 君たちも知ってるだろう? とうの六大都市! ここを守るのが私と『もう一人の』役割さ!」


 

とうの六大都市……。それぞれ巨大な都市……ここシリウス区もその一つだ……。


 「宮里さんは……今まで襲われてた村とかには介入しなかったん……ですか……。」


 手に持つ剣が震えてるのが分かる……。


「それが『契約』だからさ……! ……ってこれ以上喋ったら怒られるかな? まぁこれより先が知りたいのなら、強くなって世界を知ることだね」


 『契約』? ……それがなんなのか今は分からなくても……これだけは……!


 「なんで! 助けてくれなかったの! たくさんの人が死んだ! 小さな村でも! なんで!」


 私は宮里さんに向かって大声で叫ぶ!


「……それが『契約』って言ったでしょ? それに貴女たち地界は私たちの力なんて要らない……。そういう時代になってきているじゃない?」


 私は何も言い返せなかった……そうだ……この人達のことを必要とせず、地界の人間だけで戦えるように……って、それがこのザマか……。


 「それと! 魔物にダメージを食らったらすぐに他の人からプリズマをたくさん取り込むこと!侵食されたら終わりだからね!」

 

 「侵食って?」


にっちゃんが宮里さんに話しながら、私の背中をゆっくりさする……。ありがとう……少し冷静になれそうだよ……。


 「魔界では微量だけど『ナイトメア粒子』と言うのがある……。魔物はそれを吸い込んだ動物、私たちプリズマを持つ人間がナイトメアを浴びると侵食されていき、一定量を超えると侵食され死ぬわ、普通のモンスターなんか吸っただけで死んでいくんだから危険なのよ?」


 何それ……聞いたことない……。そんな恐ろしい粒子が魔界には存在するのか……。


 「まぁ手を繋いだりして体内粒子を注いであげれば大丈夫だと思うけどね。さっきのは僕の体内粒子よ? ありがたく受け取った?」


 ふふんっと自慢げに話す……。魔物と戦う時は大人数で戦わないといけないのか……。苦手分野だ。


 「それじゃ! 私はこれで!」


宮里さんは大きな翼を広げ立ち去ろうとする……!


 「待って!!!」


私は再び大きな声で叫び宮里さんを止める。

 

 「……貴女がお父さんを殺したの?」


私はゆっくりと、話す……。その答えが怖い。


 「知らないわ? 僕たちは沢山の人を殺してる……。誰が誰なんて分からないわよ」


 そんなに殺めているのか……『大天使』って呼ばれているのに……。


 「……見せなさい」


 「……何を?」


 「大天使って呼ばれているその実力を!!」


私は宮里さんに向かって剣を構える……。さっきの回復は感謝するけど、私の本当の目標はこの人たちを殺すこと!


 「……まぁちょっとくらい……いっか」


宮里さんは翼を閉じると私の方を向き戦闘態勢に入るのだった。

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