第19話 絶望

「なに……こいつ……」


 目の前には見たこともない……狼……? いや違う……大きさも、それに真っ黒だ。


 そして周りにいたモンスターは徐々に弱り、死んでいく……。


「……なに……こいつ……」


「……っ! 逃げて! なっちゃん! はやく!!」


 にっちゃんはそのモンスターを見るとかなり焦った表情を見せる。

 

 初めて見るその表情に今この瞬間、絶望を感じた。


『バン! バン!』


 にっちゃんは謎のモンスターに向かって発砲するも避けられてしまう。


「しまっ……そっちには!!」


 謎のモンスターが避けた先に居たのは……。


「氷華ちゃん!!」


 にっちゃんの大声と同時に私は少し冷静になる。氷華ちゃんが危ない!


「い、いや……やめて!」


 私はこの時恐怖をすっかり忘れていた。守るって! 約束したんだ! 美羽ちゃんと!


『ブン!』


 謎のモンスターは氷華ちゃんに爪を立たせて攻撃するも……!


『バキーーン!』


 氷のシールドが氷華ちゃんを守る……。咄嗟の判断!



……しかし


 

 『パリーン!!』


 無情にも謎のモンスターはいともたやすくシールドを破壊し……。


『ザクッ!!』


「っがは!!」


 氷華ちゃんは謎のモンスターに引っ掻かれてしまう……!


「ひ、氷華ちゃん!!!」


 私はおそらく人生最速の速さで、氷華ちゃんの前に立つ。


「にっちゃん! 氷華を! はやく!!」


 さっきまでの絶望は消え、怒りに変わった。


「よくも! 氷華ちゃんを!」


 私は刃を謎のモンスターに振るう!


「ガルル!!」


 しかし謎のモンスターはまるで私の攻撃をしっかり見えてるかよなうに、華麗に捌いていく。


「……こいつ! 知能があるのとでもいうの!」


 普通のモンスターなら自我がないから無鉄砲に突っ込んでくるだけだど、こいつは違う! ちゃんと避けて攻撃してくる!


 少しずつ私は、追い詰められる……。やばいこのままじゃ三人とも……!


「大丈夫だよ!」


『バン!』


モンスターの肩に銃弾が当たる! にっちゃんは自分の服を破り、氷華ちゃんの止血をしながら、片手で私の援護をする!


「ありがとう! にっちゃん!」


麻痺弾が命中した! これでこのモンスター……も……!?


 しかし、まるで効果がなかったかのように、モンスターは前足を動かす。


 「……そ、そんな!私の麻痺弾が通じないの!?」


 にっちゃんはびっくりする……。麻痺も通じない相手にどう戦えば!


 ……そんなこと考えるな! 今は氷華ちゃんが無事が確認出来るまで! 一人で持ち堪えろ! 死んでも守れ私!


「やぁあああ!」


私は再び謎のモンスターと戦いを始めるここで詠唱すべきだろうけど……唱えてる時間がない! どうにか隙を!


「なっちゃん!!」


 私の剣を避けきり、爪を振りかざされそうになる。その時、にっちゃんは私に飛びかかり何とか避けきる。


「大丈夫!? なっちゃん!」


「うん! それより氷華ちゃんは!」


 氷華ちゃんの方を見ると氷の中でゆっくりと眠っていた。


「氷華ちゃんに頑張ってもらって自分自身を凍らせて眠ってもらってる! 今は氷の中の方が安全だよ!!」


 にっちゃんすごいアイディアだな……。自分自身を凍らせ止血もできる……頭がいい。


「私が隙を作る! なっちゃんはその間に詠唱して!」


 私にそう言い残すと、謎のモンスターへにっちゃんは立ち向かっていく!


「にっちゃん!!!」


 目の前でにっちゃんが戦ってくれてる…このままだと、にっちゃんが!!


 ……いや、にっちゃんは隙を作るって言ってくれた!信じて待つ!


「プリズマよ!! 私に! 罪のご加護を!」


 ゆっくりとプリズマが私の短剣に吸い寄せられていく……はやく!はやくしてくれ!


「はぁあああ!」


 にっちゃんは避けながら一発ずつ確実に謎のモンスターに当たり、少しよろける!


「いっっけぇええ!! 不死鳥の翼!」


 魔力を込めた銃弾は白い不死鳥の形をして、謎のモンスターに直撃する!


「ガ、ガ、ガルル……」


 完全に怯んでる!


「なっちゃん!!!」


 にっちゃんの叫びと共に私は走り出す!


「ジャッジメント!!」


 絶対に守ってやる! 氷華ちゃんを! にっちゃんを! 美羽ちゃんを!


「キィル!!」


 放たれた光の刃は、一直線に謎のモンスターに向かって突き進み……


『ドカァアアアン!!!』


 完全に直撃した!


「はぁ…はぁ…」


 渾身の一撃! しかし……それでもなお……。


「ウォオオオン!」


 謎のモンスターは大きな遠吠えをする! 少しはダメージを負ったのか血が出ていた。


「……っ! なっちゃん!」


 私の方を謎のモンスターは見て、襲いかかってくる!


 やばい……死んじゃう! 助けて……!お父さん!



『ドカァアアアン!!!』


「いやぁ!なっちゃん!!!」


 にっちゃんはその場に立ち尽くす。


……ってあれ? 私何で生きて……


『パキパキパキパキ…!』


 謎のモンスターが一瞬で固まっていく……。氷華ちゃん!? 氷華の振り向くとまだ氷の中で眠っている。


 それじゃ誰が……


その時……。私の前にヒラヒラと舞い散ったのは


「は……ね?」


 煙が晴れ姿がゆっくりと見えてくる……。あのモンスターの上に立っている人影がうっすら見えはじめてきた。


見覚えあるその姿に私は驚きを隠せない。


「羽の生えた……」


 煙が完全に消え、私はその姿を見て確信する……。見たことある姿……。幼き頃見たあの姿今でも忘れない……。


「翼を持つ少女……!」

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