第18話 地獄

『ドゴォォオオオン!!』


 ものすごい音だ……村の方から……。美羽ちゃん無事だよね……?


「そ、それにしても、し、静かですね……」


 全くと言って良いほど、モンスターは出てこない……中衛、前衛のみなさんが頑張ってくれているからだ!


「何も起きないのが、一番ありがたいけどね……」


 にっちゃんは険しい顔で村の方を見つめていた……このまま何もせず終われば……。


「総員! モンスターの群れが来るぞ! 構えろ!」


 そんなことないよね……。でも今まで静かだったのに何で? あの大きな音の後からだ。


「氷華ちゃんは後ろに下がってて! 私前に出る! にっちゃん! 頼むよ!」


 私は剣を抜き、前の方へ駆け出す!


「なっちゃん! 気をつけて!」


 五匹漏れ出たのか、人を見るとモンスターは勢いよく襲いかかってくる!


「はぁあああ!!」


 私は二つの剣でモンスターを斬り殺す! 初めて戦闘で勝利を得た瞬間だ。……がそんな余裕はない!


「夏風! 来るぞ!」


 次々と来るモンスターたち……。やっぱりさっきの音が原因だね!


「任せてください!」


 一匹のモンスターへ立ち向かおうとしたその時……。真横からもう一匹モンスターが飛び出してくる!


(…っ! 偽物が間に合わない!!)


「アイス・レイン!」


『グサグサグサ!』


 氷の雨がモンスターに突き刺さる。


「空さん!」


 後ろから氷華ちゃんの声が聞こえる……。あんなに苦戦した相手なのに、味方になると背中が心強い!


「やぁああああ!」


 目の前のモンスターにだけ集中できた私は、モンスターの攻撃を避け、モンスターの身体を切り刻む!


「グル……グルル……」


危なかった……私、相変わらず集団で戦うことに慣れないな……。


「まだまだくるぞ!前衛たちはどうなってる!」


 次々と足音が聞こえる……どうなってるんだ……。まさか前線が……美羽ちゃん!


 「なっちゃん! 集中して!」


美羽ちゃんのことを考え、動揺していた私に声がかかる! ありがとう……にっちゃん!


「大丈夫!いくよ!二人とも!」


『うん!』


 モンスターが三匹目の前にやってくる!大丈夫!私は、にっちゃんと氷華ちゃんを……美羽ちゃんを信じる!


 猿のようなモンスターが私に拳を振るうも一瞬にして消える。


「こっちだよ!」


 私は分身を作り背後に回る!しかしその更に後ろから鳥のようなモンスターが私を襲うも。


『バン!バン!』


 にっちゃんの使う銃の音が聞こえる! モンスターがどうなったか振り向かない! 私は二人を信じてるから!


「はぁぁあああ!」


 猿のようなモンスターを切り刻みモンスターを倒す。


 しかしゾウのような巨大なモンスターが私を踏み潰そうとする……。


 「私は信じてるって言ってんのモンスターには分からないでしょうけどね!」


『パキーーン!!』


 モンスターは氷の中に閉じ込められた……。氷華ちゃんの方を見て私はウインクする。


 「流石! 氷華ちゃん! にっちゃん!」


 この二人となら負けない! 後少し! 他の班のみんなもそれぞれ戦っている!


……が


「だ、ダメだ! 数が多すぎる!」


 前の方の隊員が大声で降りてくると同時に。


『グサ!』


隊員が目の前でモンスターに刺されてしまう……。


「うっ!」


 見たくない光景を私とにっちゃん、氷華ちゃんは見てしまう……。


 「くっ! 一人で無理に倒すな! 複数人で構わない! 確実に……せい……あ……つ」


 班長は村の方を見ると言葉を失う……。数えきれない程のモンスターが、村の方から私たちの方へ向かってくるのを!


 「この数は……無理だよ……」


私もあまり数に絶望し、腰を抜かしてしまう……。さっきまであんなにも順調だったのに…! まるで地獄のようにモンスターが人を少しずつ数で押し始め殺されていく……。


 「夏風! ニエベス! 青葉!」


青ざめていた隊長は覚悟を決めたのか、私たちに話しかける。


「逃げろ! そして学園に行って早く報告するんだ! いいな! 隊長命令だ!」


 「そんな……ダメです……隊長」


私は涙を流しながら隊長と話す……。こんな風になるなんて……思ってなかった……。


 いや思ってたかも知れないけど、捻じ曲げれると思ってたんだ。私は今現実を目の当たりにしている。


「きみたちならできる! 大丈夫だ! 我々は負けないよ!」


 班長さんは私たちの方を向かず走ってモンスターの群れへ走り出す。


 「班長さーーん!!」


 私は泣きながらモンスターにやられていく、隊員…隊長を見ているしかなかった。


 「ガルルルル!!!」


 絶望して座ってる私に目を向けたモンスターたちは私に向かって襲ってくる!


 『バン! バン! バン!』


 銃声と共に目の前のモンスターは倒れ動けなくなる!


 「なっちゃん! なっちゃん!」


 言葉を失った私に、にっちゃんは大声で私の名前を叫ぶ。


「ここは氷華ちゃんと逃げて! 早く!」


 氷華ちゃんの方を見ると私と同じように絶望し泣きながら地べたに座っていた。


「に、にっちゃんは……どうするの……。」


「今ここを食い止めれるのは麻痺を使える私しかいない……! 街へモンスターを行かせないためにも! 私行ってくる!」


ダメだよ……!いかないで!


「それじゃあ……あ……と……で……」


 にっちゃんは何かを見るの顔が真っ青になる……。近づく影を見ると、そこには見たこともない真っ黒いモンスターがいた。

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