第17話 前衛

「白野さん!」


「っ!はい!」


 戦闘中のウチに班長さんの力強い声が聞こえてきた。ウチを呼んでる! ウチは急いで班長さんの元へ駆け出す。


 「すまない……。前線が厳しいと連絡が来た……。行ってくるか?もちろん俺と。」


 「何を言って……班長さんがここを離脱したら……。誰が指揮を…!」


ウチが行くのは全然構わない……。でも班長さんまで行ったら……!


 「大丈夫だ! 任せてある! それに少女一人前線へ行かせろって? そんなの大人の俺が許さない!」


 ガタイの良い班長さんは力強く話す。ウチは班長さんは気持ちに頷く。


「分かりました!行きましょう!」


 こうして二人は森の奥……村へと向かう。



「うわぁああ!」


「だ、だすけでぐれ!」


 村へ向かうとそこは地獄という名が相応しい状況になっていた。


「どうしてこんなことに……」


 おかしすぎる……。たかがモンスターの群れだよ……。地界の人たちが負けるなんてありえない!


「がるるる!!」


 ウチたちがモンスター見つかる……!モンスターたちはものすごい勢いでウチたちに襲いかかってくる!


「白野さん!いけるな!」


「はい!」


 ウチは矢を取り出し、矢をゆっくりと引くと体内の魔力を矢に注ぐ!


「インフィニット・アロー!」


 矢を発射すると一つの矢が無限に近い数に変わり、モンスターたちへと向かい……。


『ドゴォォオオオン!』


 爆発音と爆風が一斉にウチと班長さんを襲う……これで殺れた!


「が……がるる!」


何匹かは倒せたが、数匹生き残っていた。


「そ、そんな!これを耐えるなんて!」


 普通のモンスターじゃ即死なはず……!やっぱりおかしい……!


「グォオオオオ!」

 

 数匹ウチに襲いかかってくるも……。


『ジャキーン!』


 ウチの目の前に立った班長さんは剣を振い、モンスターたちを倒しきる。


「……大丈夫か?」


「……はい、ありがとうございます!」


流石班長さんなだけあって、すごい剣捌きだった……。


「なんで、こんなに強いんだ……ここのモンスターたちは……」


 ウチと班長でやっと倒しきるってやっぱり違和感しかない……普通だったらウチの攻撃で仕留めれてたは……ず。


『グォオオオン……』


 その時……目の前に黒い渦が現れる。


「な、なんですか……あれ……」


 見たことない黒い渦からは狼を大きくしたかのような牙の生えた禍々しく黒いモンスターが1匹現れた。


「なんだ……あんな黒いの見たこと……ないぞ……」


 そのモンスターは近くに居た部隊の人に向かって爪を立たせて切り裂く!


「がは……!」


 なにあれ……強すぎでしょ……モンスターっていうより……。


「ば、化け物……」


 化け物はウチたちを見て走ってくる!


「ウォォォオオン!!!」


 大声で化け物は吠えながら向かってくる……。やばい……足がすくむ……!


「白野さん!逃げろ!早く!」


『ガキーーン!』


 化け物の爪と班長の剣がぶつかる! そうだ! ウチは何の為にここにいる! ウチはポケットから羽を取り出す。


 「天使様……ウチに……力を貸して!」


 神々しい光と共にウチの弓からゆっくりと翼が生え始める。


「班長さん! 避けて!」


 ウチの声に班長さんは頷く! ウチはこんな所で負けない!


「プリズマよ! ウチに天使のご加護を!!」


 空気中のプリズマがウチの矢に注がれていく……。


「シャイニング・ストーム!!」


 班長さんが化け物から回避したのを確認したウチは矢を放つ! そして放たれた矢は一直線に化け物へ向かい……。


『ドカァアアアン!!』


 プリズマ粒子がキラキラ舞い散る……。


「白野さん!!」


 回避した班長は私の名前を呼ぶ……。まさか……。


「ウォォオン!」


 ほぼ無傷! ありえない! 化け物はウチに向かってきてくる……。


「く…そ!」


 班長さんは立ち上がり、すぐさまウチの前に立ち剣を構えるが。


「ガルルルル!」


『ブン!』


 化け物が振りかざした爪に班長さんは、まともに喰らい吹き飛ばされてしまう!


「班長さん!!」


「ガルル!!」


 化け物はウチに目を向け、立たせた爪をウチに振りかざす!


『ガキーーン!』


何とか弓でガードするも……。


『ギシ……ギシ……』


「そ、そんなウチの弓が!」


ゆっくりと弓に亀裂が入る……ウチの魔力で守っているはずなのに! なんで!


『バキ!!』


 目の前でウチが小さい頃から愛用していた弓が壊れ……絶望し、涙が出る。


『ザクッ!』


 本当に一瞬だった……。ウチは化け物の爪に身体を引っ掻かれた……。


「……。うぐ!!」


血がポタポタと垂れながら倒れる……。やばい……意識が……。


『行ってらっしゃい!』


そうだ! 約束したんだ! みんなとまた会うって!


「こんな所で死んでたまるか……!」


 ウチは目の前に落ちていた矢を一つ拾って化け物に構える!


「ガルルル!!」


 化け物とウチはお互い距離を詰めながら、睨め合う……。


 「天使様……ウチに……どうか……ご加護を……」


 再び空気中のプリズマを集める……詠唱技は一つしか持ってないけど……。それでも信じる! ウチのシャイニング・ストームを!


「ウォォオオオン!」


 大きな遠吠えと同時に化け物はウチに爪を立てる!


「シャイニング!!!」


 ウチは血を流しながら足を力強く全力で地面に叩きつける!


「ストーーーム!!」


さっきより輝きを増した光の矢を思いっきり投げた! 光の矢は化け物向かって、駆け抜ける!



……が!



『ブン!』


 化け物によってあっさりと真っ二つにされてしまう……。


 「……ごめん……みんな」


 ウチは涙を流しながら、全てを受け入れ覚悟を決めた。


『ドゴォォオオオン!!』

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