第15話 シリウス区防衛戦

ついにその日を迎えた。私はお母さんと朝食を食べていた。


「空、今日は制服じゃないからね……。間違えないんだよ」


 お母さんはパジャマ姿の私に向かって言う……。そうか今日は学校じゃない……。洋服探さなきゃ!


「てか私、そんなにオシャレできないし大丈夫か! ……ごちそうさま!」


 茶碗を持って台所へ向かう……。水道からポタポタと垂れる水滴……私はこれから……。


「空!」


 お母さんの声にハッとなる。


「お父さんも見守ってくれてるわ」


……そうだ、私は……この世界を作った少女を恨むべくこの学校に入り、戦闘訓練も受けて来た! ……大丈夫! 自分を信じよう!


「ありがとう! 洋服探してくるね!」


 ドタドタと二階へ駆ける、大丈夫! にっちゃんも美羽ちゃんも氷華ちゃんも居るんだから!


「んぇー。こんなもんでいいか!」


 動きやすい服を選んだとはいえ……ちょっと自信ないや……。


「それじゃ……。あ!」


 私はお父さんの遺影に向かう。


「見ててねお父さん…!」


 両手を合わせ祈る……。絶対帰ってくるから!


「行って来ます! お母さん!」


靴を履きお母さんの方を振り向くとお母さんの目元はうるうるとしていた。


「行ってらっしゃい……!」


 お母さんの顔を見て、これから自分がどこに行くのか改めて自覚させられる……。


 玄関を出ると少し雨が降り出して来ていた……。傘、持って……。


「空……。傘、はい!」


 心を読んだかのようにお母さんは私に傘を持たせると……。


「絶対! 絶対! 帰って来てね!」


 ガバッと抱きつかれると泣きながらお母さんは話す。心配しくれて本当にありがとう……。


「大丈夫だよ! お母さん! 行ってきます!」


 私はお母さんを見つめて笑顔で話す! ここでメガティブになると絶対にダメだ! 私は玄関を出て走り出した。


「……あなた……。空を……守ってあげて……」


ーーーー


「遅いわよ! 空!」


 作戦会場に着くとすでに美羽ちゃんと氷華ちゃんが到着していた。


「ごめん! 着替えがね……!てか二人とも可愛い!!」


 制服じゃない二人、すごく新鮮。


「当たり前じゃない? ウチは可愛いも兼ね備えてるのよ!」


 相変わらずの自信……。私は美羽ちゃんの言葉にクスッと笑う


「わ、私はこんな服しか持ってないので……」


「こんなって……! 全然似合ってるよー!」


 雨が少しづつ強くなる中、私たちは少し洋服の話で盛り上がっていた。


「……紅葉学園の生徒だな……。後一人いないようだが?」


 大人の人が近づいて来た……。そういえばにっちゃん来てないな?遅いなぁ。


「だ、大丈夫でしょうか? ニエベスさん」


「・・・」


 氷華ちゃんも心配している……。美羽ちゃんはどうしたんだろう? 改めて緊張してきたのかな?


「……すみません遅れました。」


「……っ!にっちゃん!」


 聞きなれた声の方を向くと傘も刺さず濡れて歩いて来ているにっちゃんがいた。


「ど、どうしたの?風邪引くよ!」


 私は走ってにっちゃんの元に走り出す! 腕を掴みテントへ連れていく。


「ごめん。なっちゃん傘忘れて」


 確かに来る時は雨弱かったけど……。なんで歩いて来たの……。


「大丈夫だよ。今タオル持ってくるね!」


 私は大人の人に話しかけタオルを借りる。


「……大丈夫なんでしょうね」


美羽ちゃんも心配してくれている。にっちゃんはコクリと頷く。結束力が高まってきてる……そんな気がした。


「すまない……今いいかね?」


 大人の人が私たちに話しかけてくる……険し顔……。


「まずはすまない! 子供にこんな危険な任務を頼んで!」


 私たちに頭を下げる……。びっくりして言葉も出ない。


「改めて説明するが今回は、ここ『シリウス区』の防衛作戦の、後方支援をしてもらう! 森の中にある村へ向かうのだが、もしそこで防衛できず街へ向かったら支援とは言わず……。攻撃に参加して欲しい!」


 シリウス区、私の育った街……。絶対に待ってみせる!


「……そしてあまり言いたくない最新の情報なのだが……」


 大人の人は唇を噛みながら……。


「ここ近辺の都市、プロキオン区、リゲル区の森にもモンスターの群生が襲来したとの報告が入った…!」


 その言葉に絶句する……。私たちの住むシリウス区に近い大都市だ……なんでこんなことに……。


「他の区は大丈夫なんですか!?」


私は少し取り乱す……。なんでこんなことになったんだ。


「分からない……。田舎しか襲ってなかったモンスターたちが突然大都市に標的を負けたんだ……。」


「……誰かいるね……裏に」


 美羽ちゃんは冷静に分析する……。モンスターに知能はない……。誰かモンスターを牽引しているとでも言うの……。?


「私たちも裏に誰かいる疑いがあると睨んでいる……! しかし今は守ることが大切だ! 頼む! 力を貸してくれ!」


 改めて頭を下げられる……。この人の話し方からことの重要さが分かる……怖い……でも!


「任せてください! 全力で戦います!」


 戦うことは覚悟の上! 絶対に守ってみせる!


「本当に……。すまないな……白野美羽、特にきみにはな……」


 美羽ちゃんを見て話す……。途中からとは言え前線……やばいなんか泣きそう。


「そんなことないです! 私はこの世界を守ることを命に生きてます! 私の力全力で使います!」


 美羽ちゃんは堂々と大人の人に向かって覚悟を見せる! ……私も頑張らなきゃ!


「…っ! では準備出来次第、出発する! 絶対に守るぞ!」


『はい!』


 ついに初めての……。命をかけた作戦が始まる。

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