第14話 それぞれの想い

次の日、私は放課後体育館でホログラムと自主練していた。


「はぁ……はぁ……はぁ」


 汗がポタポタと地面に落ちる。作戦の日が近づくにつれて、少し怖さも出てきた。


(もしかしたらここで私、死ぬのかな)


 全て全滅してきている今までの作戦……私もその作戦に加わるということは……。


「お、お疲れ様です。空さん……」


 声の方を振り返ると、氷華ちゃんがドリンクと共に私を見て心配そうな顔をしている、


「あの……あまり無理は……」


 私を心配して来てくれたのか……。歳下にこんなことを……氷華ちゃんは大人だなぁ。


「あ、ありがとう」


 私はもらったドリンクをゴクゴクと飲む。喉が渇いてたので半分以上飲み干す。


「ぷはぁ! ありがとう氷華ちゃん!」


 復活した私は、氷華ちゃんににっこりと笑顔で話す。その表情をみて氷華ちゃんもホッとした様子だった。


「そ、空さん……私心配……してます……」


 休憩がてら体育館の地べたに二人で座る。私と氷華ちゃんの貸切だ。


「ありがとう! でも大丈夫! それをいうなら私が氷華ちゃんのこと心配してるよ! 作戦参加するんでしょ?」


 十三歳での参加なんて、確かにこの学園に来たからにはだけども……怖くて不安だろうに……。


「わ、私……憧れなんです……『英雄』に会うのが……」


 『英雄』それは地魔グランデ争奪戦で最後の勝利を収めた英雄達のことだ。誰しもが憧れる目標みたいな人たちだ。


「む、昔から一人で……ずっと杖を握ってて、でも英雄たちをテレビで見て、いつかこんな風にって……」


 だから温泉の時にも杖を隣に置いてたのか……。


「氷華ちゃんにとってその杖はお守りみたいなものなんだね!」


「はい……私の……宝物です!」


 氷華ちゃんは杖を強く握りしめる。お守り……私にもあるなぁ……この二つの刃が私にとってのお守り……改めて短剣を見つめる。


「空さん……私、貴女と戦った後……初めてお姉さん見たいな……そ、その温もり感じて嬉しかったです。私一人っ子だし……お母さん、お父さんくらいしか居なくて……」


 氷華ちゃんは照れながらも頑張って私を見つめる。


「ありがとう! なら氷華ちゃんは今日から私の妹だ!」


 ガバ! っと氷華ちゃんに抱きつく。氷華ちゃんは最初はあたふたしていたけど、次第にゆっくりと落ち着き私の背中に腕を伸ばす。


「いいの? イチャイチャしてるよ?」

 

「今はそっとしてあげましょ。それにあれはイチャつくってよりも姉妹愛みたいな感じよ」


 私は氷華の頭を撫でる……。本当に一人だったんだなぁ……私も一人だったからこそ、この温もりなんとなく分かる気がする……


「……ねぇ!やっぱりニエベスさん……貴女って……」


「・・・」


 大きな声に二人して反応する。体育館の入り口には白野さんとにっちゃんが居た。


「二人ともどうしたの?」


「なっちゃんと氷華ちゃん、見かけなかったから二人で探してたのよ」


 ゆっくりとにっちゃんが近づいてくる。氷華ちゃんは抱かれている恥ずかしさに気づき、すぐ離れる。かわいい。


「貴女……そうなのね……否定しないわよ……だってーーー」


「白野さんもおいでよ!」


 私は入り口に立ったままの白野さんに手を振る!


「分かってるわよ! なんなら私が相手してあげましょうか?」


 白野さんには一回負けている……。でも私より上がいるのは強くなれる秘訣かもしれない…!


「やってやるわよ?」


 お決まりの流れで二人ともバチバチと目線を合わせる。


「はいはい! お終い! 帰るよ!」


 にっちゃんが間に挟まるようにして抑える。


「白野さんは……前線怖くないの?」


 にっちゃんに抑えられながらも私は疑問に思ったことを話す……。全滅してる作戦にしかも前線……それって。


「そんなの! ……怖いわよ! でも世界はウチを必要としている!」


 白野さんは少し距離を置くと俯きながら話す。そう……だよね怖いに決まってるよね……。


「無理して意地を張らなくてもいいんじゃない?」


 私は俯いたままの白野さんに近づく。


「あのね! ウチはこの学園で一番の実力者よ! 怖くても……プライドがあるのよ!」


 大きな声に私は近づくのをやめる。確かに白野さんはプライドが高いけど、それ以上に一番になった責任もあるんだ……。一番にならないと味わえない重圧が。


「ごめんね…私白野さんのこと分かってあげられなくて……でも」


 私は白野さんに抱きつく。


「私は……貴女を心配しているの……。少なくともここにいる三人は前線にでる白野さんに何かあったらって………。だから無事で帰って来て欲しいの。また戦おうよ……私と……リベンジさせて?」

 

 私と白野さんが抱きついてる横からにっちゃんと氷華ちゃんも私たちに抱きつく。


「そうよ白野さん……前線は怖いわ……。でも貴女ならできる。だってこの学園最強なんでしょ? 帰ったらまた温泉行きましょ」


「み、美羽ちゃんは可愛いしかっこいいし、強いしで……でも、む、無理に意地を張らないで……。わ、私たちがいるから……ね…。」


 にっちゃんと氷華ちゃんがゆっくりと白野さんに話す……。


「うぅ……ウチだって……怖いのよ……! でも……ありがとう……。そう言ってくれて……」


 涙を流す白野さん……前線でどうか無事に……!


「そんなに泣いてたら最強が台無しだよ……!『美羽』ちゃん」


 私は美羽ちゃんの頭をゆっくりと撫でる。


「美羽様でしょ……! ………でもしばらくはこうしててほ……ほしい」


 体育館に差し込む夕焼け……。私たちはそれぞれの想いを胸に防衛作戦の日を待つのだった。

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