第13話 温泉

どうしてこんなことに…


「にっちゃんこれ、どういうこと?」


 私は洋服を脱ぎながら話す、いや本当になんで温泉?


「私の友達が仲良くなるなら温泉!って昔言ってたの思い出して」


 にっちゃん……他校にもお友達いるんだ……ちょっと嫉妬しちゃうな。


(それにしても…)


 長い髪を結び温泉に入る準備をするにっちゃん。肌綺麗だなぁ胸大きいなぁ……って!


(何考えんてんの! 私!!)


「変態」


 反対側からボソッと声が聞こえる。声の方向を見ると白野さんはニヤッと笑いながら私を見ていた。


 にっちゃんの裸を見てたことを見られていた私は赤面する。


(落ち着け私! 温泉に入るだけよ!)


 頭をブンブンと振り、一つため息をつくと脱ぎかけの服を脱ぎ浴場へと向かう。


 洗い場に向かうと杖を隣に置いたまま洗う氷華ちゃんが居た。


「氷華ちゃん洗うの早いねぇ」


 すでに一人で洗っていた氷華ちゃんは髪の毛があわあわのままこっちを向く。


「私、か、髪とか洗うの長いので……」


「私が手伝ってあげよう!」

 

 氷華ちゃんの後ろに立ち髪の毛を触る。


「お、お願いします……」


(綺麗な髪……)


 一本一本が肌に馴染む感じがする…。サラサラで気持ちがいい。

 

「あわあわ流すねぇ」


 シャワーをつけ、泡だらけの髪の毛にあてる。そしてゆっくりと綺麗な水色の髪の毛が見えてくる。


「氷華ちゃんの髪綺麗で好きだなぁ」


「あ、あ、あ、ありがとう……ございます」


 照れちゃう氷華ちゃん可愛いなぁ……。お世話しがいがあるってもんだよ。


「はい! おしまい! 私も髪の毛とか洗うね!」


 氷華ちゃんの髪を洗い流してあげると、私は氷華ちゃんの隣に座り、髪を洗い出す。


(そう考えてみるとトップ四はみんな可愛いなぁ。それに比べて私は髪の毛ショートだし、胸も小さいし……)


 自分の身体を鏡で見ながら洗う。ふと、氷華ちゃんをみると丁寧にリンスをしていた。


(丁寧だなぁ……。私あんまり髪の毛とか綺麗にしないから……)


 自分の身体にがっかりしながら、パパッと済ませると立ち上がり、湯船へ向かう途中……。


(あ……。にっちゃん……)


 無言で身体を洗うにっちゃん……。そのうなじにドキドキする。


「なっちゃんのえっち……」


 鏡に映る私を見て、どこを見てるのか気づいたのか鏡越しに目が合う……。


「え、あ、その……。ごめんねー!!」


 私は早歩きで湯船へ向かい浸かる……。やばい、めちゃくちゃ恥ずかしい。


「夏風さんって意外と変態なのね」


 隣に居たのは白野さん。ドキドキしすぎて居たことすら気づかなかった……。


「違うし!」


「いや、ニエベスさんのうなじめちゃくちゃ見てたじゃん」


 白野さんはくすくすと笑う。言い返したいけど……せ、正論なんだよ。


「……白野さん洗うの早いのね」


 話を逸らすために、白野さんに焦りながら話しかける。


「ウチは丁寧かつ素早いのよ!それにゆっくりお風呂に浸かるの好きだからね」


 少し沈黙が入る……。なんだかんだこうやって二人で話すの初めてかもしれない。


「夏風さん。どうして貴女は天使様を許さないの? 大好きなお父さんが殺されたから?」


 静まり返る中、先に沈黙を破ったのは白野さんだった。


「まぁ……。それが一番な理由だよね……」


「ふーん……。でも許さない、許す以前になぜ殺されたのか、知る事も大切だと思うんだよね」


 確かに……。お父さんがなぜ殺されたのか……私の家族は別に少女を凄く否定していた訳ではなかったし……。お父さんが何か隠していたのかな……?


「……ありがとう……。白野さんって意外と優しいよね」


私は白野さんを見てにっこりと笑う。


 「当たり前でしょ! 私を誰だと思ってるのよ! 紅葉学園一の実力者なのよ! 心も広いってものよ!」


 その言い方は相変わらずだけどね……。


「まぁ殺すとかそういうのに執着してると何かをきっと失うわよ? 例えば好きな人とか……ね?貧乳さん」


 白野さんはにっちゃんの方を見ながら話す……って!


「何が貧乳よ! 白野さんだってそんなに大きくないじゃない!」


 私は湯船から立ち上がり、白野さんの胸をガン見する……!確かに私より大きいけど全然よ!


「はぁー? 失礼じゃないの? レディに対して! それにツッコむところ違うでしょ!?」


白野さんも湯船から立ち上がり二人して睨み合う


「私だってレディです!! それに……す、好きな人……って?」


 今気づいた……も、もしかして!


「貴女バレバレなのよ!」


 白野さんがにっちゃんを見つめる。


「ち、ち、違う! そんなんじゃ!」


 顔が熱い……。私はそんなのじゃない……と思う


「ふーんそうなんだ? なら誰かに取られても知らないわよ?」


 それは!……させない!


「まぁ、ゆっくり関係を築きなさい……」


 ゆっくりとお互い湯船に浸かる……。さっきよりも温度熱く感じる。


 「……わかってるし! 微乳さん!」


私は精一杯の挑発をする……全く私は何をやっているのだか……。


「何が微乳よ! ウチを舐めてんでしょ!? 外出たら戦う!? 貧乳さん?」


 簡単に挑発に乗ってくれる……。しかし私も簡単に挑発に乗ってしまう……。


 「やってやるわよ!!」


湯船でバチバチと睨み合う……お互い再び立ち上がろうとしたその時……。


『パキーーン!』


 全身が寒い……。


「ふ、二人とも静かにしてください!」


「あはは……少しは仲良くなった……かな?」


白野さんと一緒に全身が凍る中、にっちゃんは苦笑いで笑っていた。

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