第2章 予兆

第12話 緊急任務

学戦が終わり、気がつけば六月……。


 私は順調に学園生活を楽しんでいた。


「にっちゃん〜! 一緒に帰ろ〜」


 隣の席のにっちゃんとは大の仲良し! 優しくて強い! そんな所が少し……。


「いいよ! なっちゃん! 帰ろっか」


 お互いに荷物を鞄に入れて、立ちあがろうとした、その時だった……。


『ピンポンパンポーン』


「白野美羽、夏風空、ニエベス・ヘレナ、青葉氷華、直ちに校長室へ来るように」


 ん……? 私たちの名前が呼ばれた。


この四人は学戦トップ四だ……。なんだろう……嫌な予感がする…。


「行ってみよっか、なっちゃん。」


 にっちゃんも少し戸惑っていた。私たちは何か不吉な感じを捉えながらも校長室へ向かうのだった。


「遅い!! どーせまたイチャついてたんでしょ!」


 校長室の前に着くと、そこには白野さんと氷華ちゃんの姿があった。


「イチャついてないし! びっくりして来るの遅れたの!」


 私と白野さんは相変わらず仲良し? ではない。天使を崇める白野さんとそれを否定する私……まぁそう簡単には仲良くなれないよね……。


「は、はやく入りましょうよ……」


 ピリピリと睨み合う二人をみて氷華ちゃんが催促する……。全く私は歳下に気を使ってもらって……何やってんだか……。


『失礼します』


 白野さんが校長室をノックすると四人で挨拶し、中へと入る


「どうぞ……。すまないね……帰る時間なんかに呼び出してしまって……」


 久々の生校長先生……少し凛々しい顔をしている……。いや、今この状況にピリピリしているのかな?


「どうされたのですか?私たちにご用事とは?」


 白野さんが先陣きって話す。この人は育ちがやっぱり良いらしく、こういう目上の人にはしっかりとした態度で話す……なんで同い年ともこんな風にできないのかな。


「最近森の中にある村が、次々と壊滅しているのを知っているかね?」


 もちろん知っている……。四月頃から始まったそれは今も続いていて、止める手立てがない。


「はい、承知の上ですが……。それに関しては地界の部隊が対処しているのでは?」


 白野さんは丁寧に校長先生と話を続ける、しかし地界の部隊でもあまり防衛できていない状況……。


「うむ……。しかしニュースにはなっていないのだが、村防衛にあたった部隊は全滅しているのだ……」


 その言葉に四人が驚愕する……。少なからず地魔グランデ争奪戦を戦い抜いた先鋭たちのはず……それなのになぜ?


「原因は分かっていない……なにしろ全滅していて報告がない……そして、今この瞬間にも学園近くの村を襲撃しているとの報告があった」


 学園近くにも森はあり、村もある……でもこんな近くに現れたら……。


「そ、そんな、も、もしこの街も襲ってきたら……」


 氷華ちゃんが震えながら話す……。仮にこの街にも襲ってきたら、街が、学園が……お母さんが危ない!


「うむ……今までの襲撃の中でも一番街にも近くてのぉ……。」


 校長先生は私たち四人を見ると意を決して話す。


「君たちには、今回の作戦に参加してもらいたい……! もちろん後方支援としてだが……」


 やっぱりそうなっちゃうよね……しかし私の答えは決まっている。


「行きます!私はこの街を、親をこれ以上失いたくありません!」


 私は一歩前に出ると、校長先生の目を見てはっきりと私の気持ちを話す。


「……ありがとう……。他の三人はどうかな? 特に青葉さん貴女はまだ十三だ…後方支援とはいえ幼すぎる。断っても大丈夫なんだよ」


 氷華ちゃんはまだ十三歳……。同じ高校生とはいえ、いきなりこんな実践に連れて行くのも私は気が引けるけど……。


「わ、私は……いきます……! そ、それはもちろん、こ、怖いですけど、ここでビビってたらここにきた意味がな、ないですから!」


 氷華ちゃんは震えながらも校長先生に自分の意見を言う……。十三歳とは思えない決意……かっこいいよ氷華ちゃん。


「私も! もちろん行きます! この街を……みんなを守りたい!」


 にっちゃんも一緒に来てくれるみたいだ……。貴女がそばに居てくれるだけで、私は心から安心するよ。


「……そうか……二人ともありがとう……。白野さんは、聞く前に言うことがある。」


 なんだ?白野さんにだけ……。


「貴女には途中から前線に出てもらいたいと……連絡があってね……。どうかな? 拒否しても構わない」


 前線!? 今まで全滅しているこの状況で前線に行ったら……。


「行きます! 部隊が私を必要としているのなら!」


 迷いなく話す白野さん……。すごいな。その威勢と実力を買われたんだろうか?


「そうか……。四人ともありがとう……。そしてすまない。作戦は三日後だ。それまで各自武器メンテナンスや、体内魔力の回復を怠らずにな」


『はい!』


 覚悟を持った四人は大きな声で返事をして、校長室を出る……。


「ウチらもこういう時が来たわね……。早すぎな気もするけど」


 校長室から出て、白野さんがふぅと息を整える……。目上相手には緊張したのかな。


「でもウチは前線だし? 貴女たちとは違うのよ?」


 前言撤回……。そんなことないと思う……。


「たまたまでしょ? 白野さん遠距離だし?」


 私はニヤッと笑いながら話すと、白野さんはむすっとする!


「失礼ね! 『優勝』してるから呼ばれてるよ! それに! 遠距離なら夏風さん以外全員遠距離でしょ!」


 ギャーギャーと私と白野さんはいがみ合う。その姿を見て、氷華ちゃんとにっちゃんは苦笑いする。


「こ、こんな感じで、勝てるんでしょうか?」


氷華ちゃんの言葉に、にっちゃんはうーんと頭を悩ませながらも……。


「そうだ!」


『ん?』


 私と白野さんは、にっちゃんの声に反応してにっちゃんをみる……。


え?


『カポーン』


 私たちはいつのまにか温泉の入り口にいた……。

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