第11話 これから

「……ここ……は」


 気がつくと、さっき見たことある天井だった。


「保健室……。そうか……私は」


 あの時白野さんは立っていた……。私は負けたのか……。


「……っ!空ちゃん!」


 馴染みある声、視線を向けると、そこに居たのはにっちゃん。手を繋いで私の方を泣きながら見ていた。


「良かった……目を覚まして……。一時間くらい気を失ってたのよ……」


 涙を拭うにっちゃん。あれからそんなに気を失ってたのか……。


「私は……負けたの?」


 その質問に、にっちゃんが歯を食いしばりながら話そうした、その時だった。


「そうよ……。貴女は負けたの」


 上半身だけを起き上がらせると、そこには椅子に座って、治療を受けている白野さんがいた。


「そっか……」


 やっぱり私は負けたんだ……。


「……さっきはごめんなさい。人殺しなんて言って……」


 私はうつむきながら話すと、白野さんが近寄ってくる。


「本当よ! 全く! 勝手にウチを人殺しにしないでよね!!」


 私は白野さんのいう天使が嫌いだ……。それは変わらない。でも白野さんの実力は認めざるをえなかった。


「あと……これ!」


 白野さんは私にタオルにくるまったままの『それ』を渡す。開けてみると……


「私の……短剣……」 


 そういえば、左の短剣は白野さんに投げたんだっけ……。試合が終わった後拾ってくれたんだ……


「貴女に事情があるのは分かったし、実力だって認めてる……。だからこそ今はゆっくり休みなさい……」


 白野さんは優しく私に話しかけると、私の頭をポンッと撫でて保健室を後にした。


「ふふっ意外と優しいのね。白野さんも」


 にっちゃんが笑う。……確かに態度は気に食わない所もあるけど、悪い人じゃないみたいだ。


「……ごめんねにっちゃん……。勝つって約束したのに……」


 私は布団を強く握りしめながら話す……ポタポタと涙を溢しながら……


「ううん……空ちゃんはよく頑張ったよ! 私の分までありがとう……!」


 にっちゃんは私を優しく抱きしめた……。


「……ぐす……うわぁぁああん!」


 その心温まる胸の中で、私は大泣きした。


ーーーー夏風空、決勝敗退……


 しばらくして私はだいぶ回復し、保健室を出る……。


「夏風さん! 大丈夫?」


「心配したんだよ!」


 クラスメイトのみんなが、保健室の前で待ってくれてたみたいだ。


「あ、ありがとう! もう大丈夫だよ!」


 私は教室に向けて歩き出した。にっちゃんの手を繋ぎながら……。


「みんな学戦お疲れ様! そして、この教室からなんと! トップ四が二人もでました!」


『パチパチパチパチ!』


 クラスのみんなが、私とにっちゃんを讃える。そうだ! 私は優勝こそできなかったけど、この学校のトップ四になったんだ! 改めて自覚すると嬉しかった。

 

 ホームルームも終わり、気がつけば夕方。私とにっちゃんは教室でニ人きりだった。


「今日は濃い一日だったね」


 にっちゃんは夕日を見ながらゆっくりと話す。


「ありがとう……。あの時私に話しかけてくれて……」


 怒りに身を任せ、戦っている時に話しかけてくれたにっちゃん……。貴女が居たおかげで、白野さんとあそこまで接戦できたんだよ。


「どういたしまして! 空ちゃんが正気になって私も安心したよ」


 にっちゃんは立ち上がると、鞄を持ち私に手を差し伸ばす。


「帰ろっか空ちゃん……なっちゃん!」


 笑顔のにっちゃんに、私もクスりと笑い手を取る。


「なっちゃんってなに?」


「私にっちゃんだし? なっちゃんの方が呼びやすいなぁって」


 照れるにっちゃん……。まぁにっちゃんにならなんで呼ばれようと……。


「嬉しい……」


 こうして二人で教室を後にしようとしていた……。その時。


「ちょっと!イチャつかないでよ!」


 教室のドアを開ける音と同時に、白野さんが入ってくる。


「美羽ちゃん……あんまり騒ぐと……」


「氷華ちゃん!」


 白野さんの後ろには氷華ちゃんもいた。


「さ、さっきはありがとうございます……」


 私に軽く一礼すると、教室に入らずじっと私たちの方を見ていた。


「せっかく心配して待ってあげてたのに! コソコソとイチャイチャしちゃってさ!」


 何その言い方……! 本当にこの人は! ……でも。


「ふん! イチャイチャしたっていいじゃない? 私はにっちゃんと仲良しなんだから! 白野さんは? 友達いるの?」


 にっちゃんの腕を掴むと、嘲笑うように白野さんをじっと見る。


「なんなの夏風さん! 腹立つ!」


 プンスカと怒る白野さんをみて、私とにっちゃんは目を合わせて笑う。


「み、みなさん……。そ、そろそろ帰りましょう」


 教室に入らない氷華ちゃんは、私たちを見ながらタジタジとしていた。


「そうだね! 帰ろっか!」


「だから! ずっと待ってたって言ってるでしょ!」


 こうして新しい友達ができた私は、四人で一緒に帰り、長い長い一日を終えた。


ーーーー


「もうダメだ! ここは引くぞ!」


 その夜。


とある森の中、戦闘員が『なにか』と戦っていた。


『ガルルルル…!』


「くっそ! こんなモンスター見たことないぞ!」


 四本足の謎のモンスターは、戦闘員達に襲いかかる。


「う、うわぁああ!!」


 その日の夜、何者かによって一つの村が壊滅した。


 ニュースで報道されたが、疲れ切った空はニュースなど見ず家に帰って爆睡したのであった……。




ーーーー 


これはとある契約をした『天界』と『地界』、そして拒まれた『魔界』の人々が『地界』への復讐と共に、生まれた育った場所へ帰ろうとするお話。


              To Be Continued

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