第10話 想いを胸に!

『ガァキィィイイン!』


 会場中に響き渡る、武器と武器がぶつかった音。そして私の豹変ぶりに全員が驚く。


「貴女どうしたの!?」


 ギシギシと武器がぶつかり合う中、焦りながら白野さんは話す。


「貴女が! あの時お父さんを殺したの!」


 この人がお父さんを! 許さない! 絶対に!


「何言ってんの!? ウチを人殺しにしないで!」


 この人が殺していない?……どうゆう事?


「もう! どきなさい…よ!!」


 白野さんは力で、私ごと振り払う……。私は今何がどうなってるか、理解が追いついていなかった。


「これはね! 『天使』様がウチを助けてくれた時に、落として行ったのをウチなりに改良して作った羽なのよ!」


 落として行った……? 私と同じ? 



……いや!!


「違う! そんなの天使じゃない! 私の父は、その天使っていう奴に殺されたのよ!」


 私は、怒りのあまり白野さんに向かって左肩を必死に上げ短剣を投げつける!


「……っ!」


 動揺していた白野さんの頬を短剣がかすめ、血が少し流れる。


「……貴女のお父さんが、何か天使様に悪い事をしたんじゃないの!?」


 お父さんが? あんなに優しかったお父さんが悪いことなんかするわけがない! それにこの人……


「白野さん……貴女……崇む派なのね! それもかなり重度の!」


 私は白野さんの言う天使が憎い! そりゃあもちろん、この地界は崇む派が大多数だけど、今は崇むことなしで戦えるってなってる! それなのに……! 私は白野さんが重度の崇む派なら私は……! 白野さんを殺してでも拒んで……!


「そらちゃーーん!!」


 脈が早くなる中、聞き覚えのある声が私の耳に入ってくる……。振り向くと廊下に、にっちゃんが立っていた。


「落ち着いて! 今はそのことと、関係ないでしょ! この学園で一番になりに来たんでしょー!」


 にっちゃんは、今まで私が聞いたことのない大声で話す。……そうだ! 私が……今、戦ってるのは……学戦で一番になること……!


「私は……今ここで一番になるために、戦っているんだ!」


「そうだよ! それに私もそばにいるから大丈夫だよー!」


 にっちゃんは本当に優しいなぁ……。そうだ! 私は、にっちゃんや氷華ちゃん! お母さん! そしてお父さんの想いがあるんだ!


 私は一つ息を整え、右手の短剣を強く握りしめ、白野さんの方を向く!


「私は……! 貴女に勝ちに来たんだ!!」


 目の前の目標に気持ちを切り替え、剣を構える! 私は……少女を否定している……。いつかは天使と言う存在を殺してしまうかもしれない…。


(でも……今はここで一番になりたい!)


 都合のいい人と言われてでも! 今! 勝つために力を借りる!


「プリズマよ私に罪のご加護を!!」


 短剣を突き上げると、空気中のプリズマが短剣に降り注ぐ!


「……よく分からないけど! そうよ! そうでなくっちゃね! 全力で来なさいよ!」


 白野さんは今までとは違い、戦いを楽しんでいる顔をし、空中へジャンプすると私に弓を向け矢を構える。


「プリズマよウチに『天使』のご加護を!!」


 お互いの武器に、物凄い量のプリズマが注がれていく。眩い光に前が見づらい……!


 大きな翼を羽ばたかせた木の弓は、矢にプリズマを注ぐと眩い光の嵐がまとわりつく


「いくわよ!シャイニング・ストーム!!」


 白野さんが矢を引くと、嵐をまとった光の矢が私に向かって襲いかかる!


「そらちゃん!」


 にっちゃんの声が聞こえる! ありがとう。いつも心配してくれて、でも大丈夫だよ……! 私は負けない!


眩い光の矢に向かって、私は走り出す!


「はぁああ! ジャッジメント! キル!!」


 私は光の刃を短剣から放り投げる! その勢いで転倒してしまうが、片腕のない以上、構わない!


 この一撃で絶対に決める!!


『ドゴォオオン!』


 光の刃は光の矢とぶつかり合う!


「ウチだって! 絶対に! 負けないんだから!」


少しずつ私の方に押されているのが分かる……。 


 でも大丈夫! そうだよね……! 私たちなら絶対に負けない!!


 『いっっけぇええええ!!!』


 二人の気持ちが乗った声と共に、光の刃は光の矢を破壊し、白野さんの方へと向かう!


 「そ、そんな!」


『ドカァアアアン!!!』


 物凄い衝撃音と爆風で土が舞い上がる。私は場外に飛ばされないように、剣を地面に刺し爆風に耐えていた。


 そして、空中から落ちてくる白野さんを私は、かすかにとられていた……が。


「……ウ、ウチだって負けないって言ったでしょ!!」


 落ちながらも片手にもつ矢を弓に引く。


「インフィニッ……ト……」


 そこで力尽きたのか、詠唱中に放った普通の矢は倒れている私の背中に深く刺さってしまう。痛い……気を失いそうだ……。


『ドサ……』


 白野さんが落ちた音……。


「こ、これはどうなってしまうのか!」


 司会者も声を詰まらせながら、実況をしていた。


 立ち上がれ……! 立つんだ! ここで立ってトドメを!


「はぁ……はぁ……はぁ……」


 土煙がおさまろうとする中、ゆっくりと歩く音が聞こえる……! ま、まさか!


「み……認めてあげるわ、貴女の実力を……でも今はここまでよ!」


 そこには白野さんが私の目の前まで立ち止まっていた。そんな直撃したのに……!


「く……そ!」


 私は気合いで起きあがろうと、膝を立たせる!


「諦めなさい……。それが今の貴女の限界よ」


「そんなことはない! 私は……」


 やばい意識が朦朧もうろうとする……。でもここで起き上がらないと!

 

「貴女に……勝っ……て……」


『ドサ……』


 私は少しだけ立ち上がろうとするも、そこで力を使い果たし、気絶してしまう。 

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