第9話 決勝戦!vs美羽

『うぉおおおお!』


『頑張れよ! 美羽!』


『空もファイト!』


フィールドに出ると、たくさんの人たちの声援が二人を後押しする。私たちはゆっくりと距離をとり、試合開始の合図を待つ。


 「お待たせしました! いよいよ決勝戦! まず一人目! 第三体育館からの出場! 夏風空!!」


 司会の人が私の名前が呼ばれると、観客に手を振る。ここまで応援してくれた観客のみんな、そして氷華ちゃん、にっちゃんの思いも背負って、絶対に勝つ!


 「対するは! 第二体育館よりここまで圧倒的な実力で、勝ち抜いてきた白野美羽!!」


白野さんは小さく観客に手を振る、くそ! 見た目だけは完璧な癖に!


 「それでは決勝戦!」


観客全員が静まり返る……きっと、にっちゃんも見守ってくれてるよね?私の心臓もドキドキしてきた。


 「はじめ!!!」


私は勢いよく白野さんに向かって走り出す! しかし、白野さんは背中に担いだ木の弓を持ち空中へジャンプする……。


 「さて、終わらせるよ!」


白野さんは、矢筒から一本の矢を取り出す!


 「インフィニット・アロー!」


矢を引くと、一瞬にして一本の矢が何百、何千の矢になり、逃げ場を失くすみたいに、降り注いでくる!


 『シュババババハ!』


無限とも言えるような量の弓が私に降り注ぐも……。


 「私を、一撃で倒せるとでも?」


私は準決勝と同じように最初から分身を作り、白野さんの背後に飛ぶも、それにすぐ気づき弓でガードしようとする。


 (所詮木の弓! これで真っ二つよ!)


『ガキィィイイン!』


 木の弓からは、絶対に聞こえないような音がする。


 「な、なんで切れないの?」


 「それはね、私の魔力を注いで、木全体を硬くしてるからよ!」


お互いに攻撃を当てられずのまま、一度地上へ戻る。


 「初手で終わらせるつもりだったけど、貴女もそこそこやるのね?」


 白野さんはニヤニヤしながら話す……。この態度が本当に!


 「次で仕留めてあげる!」


私は威勢を張ると、ゆっくりと白野さんは二本の弓を引く。


 「インフィニット……」


同じ攻撃!今度は地上から!


 そんなの! 準決勝でも似たようなことをした! ふざけてるの! この人!!


 「はぁぁあああ!」


私は勢いよく走り出す。


 「……ホーミング!」


『ズゴォオオオオン!』


地面がえぐれる音がする……白野さんは地面に矢を放ったのだ。土煙がすごい。


 「なに…やってるの?」


ミス? それならチャンス! 一瞬足が止まったが、また走り出そうとした、その時だった


 『メキ……メキメキ!』


私の足元がえぐれる音がする……ま、まさか!


 「言ったじゃない?ホーミングって!」


白野さんはニヤりと笑うと、私を串刺しにするかのように、無限の矢が地面から飛び出る!


 「うふふ……!さっきの試合をみて氷華の真似をさせてもらったわ」


グサグサと刺さる音、私が刺されてるのをみて白野さんは笑う。

 

 「……そんなに面白い?」


私は隙をつき、背後で剣を振りかざそうとする!危なかった……。白野さんが、弓を地面に放った時の土煙で偽物を作っておいて!


 「面白いわよ?」


『グサっ!!』


私の左肩に弓矢が刺さる……どこから?


 「あら? 見てたわよね? ウチが『ニ本』弓を引いたこと?」


確かに見てた……もう一本は、威力があるとかそっち系かと思ったけど……。


 「でもなんで、私が後ろからくるって……」


少なくとも違う軌道をしている弓はなかったはず……。インフィニットに紛れ込ませてたのか……!


 「貴女……準決勝少しだけ見させてもらったけど、偽物を使った後は大体背後にいるし、ウチでもそうするからね? 予測よ予測。こんなのも出来ないの?」


 私はドサッと倒れる……かなり奥まで刺さったみたいだ……この人威厳を張るだけあってかなりの強さだ……!


 「出来ないよ……私頭が良くないから……」


でも負けたくない! にっちゃんを小馬鹿にしたのを私は許せない!


 「私は……負けたくない!」


ゆっくりと起き上がり、剣を構える……ダメだ左肩が上がらない……!


 「へぇ……。なら貴女にも面白い物見せてあげる」


白野さんは少し距離を取るとポケットから『ある物』を取り出す……


ーーーー

 「お父さん!お父さん!」


小さい頃、私の父は羽の生えた人間に殺された。美しく綺麗な羽だったのを今でも覚えてる。


 「おま…えに…これ…を」


授かったのは二つの剣。私は泣きながらお父さんに抱きつく。


 「だめだよ!おどうざん!いやだ!」


目の前に、ひらひらと沢山舞い散る羽……その人間が立ち去ったようだった。


 「が…んば…れよ…そ……ら」


お父さんが息を引き取った……。私は舞い散る羽をただ見ることしかできず、ずっと泣きじゃくっていた。


ーーーー


 「な、な……なんで貴女が……」


私の中のトラウマが蘇り震える……知ってる見たことがある……その羽を……


 「あら? 貴女これを知っているの?」


白野さんは、羽をゆっくりと弓に添える……。すると、木から翼が小さくひらひらと生え出した。


 「……あ、あ、貴女があの時お父さん……を?」


私は痛みなど知らず、無我夢中に飛び出す!


 「殺したの!?」


白野さんは私の豹変ぶりに、かなり驚いた様子だった。


「うわぁぁあああ!」


 私は怒りに身を任せたまま、翼の生えた弓に剣を振りかざした。 

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