第5話 諦めない

学戦予選が始まってから、何分経っただろうか。周りで戦ってる人も少なくなってきてる気がする……。


「どけ!」


 少年が魔法で攻撃してくる。私は不意を突かれてしまい、まともに攻撃を受けてしまう。


「きゃぁ!」


 攻撃を受け体勢を崩す……。人が沢山いると、いつどこから敵が現れてくるか、気をつけなければいけない。私の体力もそこそこ減ってきた。

 

「トドメだ!」


 少年の水魔法が飛んでくる。


『ビュン!』


「……っ! この程度!」


 私は気力で立ち上がり避ける。そして素早く間合いに入る。



「しまっ……!」

 

 左の剣で杖を弾き飛ばし、勢いそのままに。


「やぁあああ!」


 右の剣をつかさず少年の右肩に突き刺し、すぐさま抜く。


「く……くっそ!」


「やぁああああ!!」


『ドス!!』


 よろけた少年の一瞬の隙をみて、蹴りを入れて場外へ蹴り飛ばした。


「はぁ……はぁ……」


 あれ、私ってこんなに体力なかったっけ?……いや違う。ここは新設の名門校。みんな実力は折り紙つきだからだ。


 気がつくと周りには五人しかいなかった。集団戦、私苦手かもしれないなぁ。


「でもこんなところで負けてられない……!行くよ!」


 ほっぺをペシペシと叩き集中し直すと、目の前の少女に向かって走り出す。身体が重い……!


 でもこんなところで、負けるわけにはいかない!


 少女は私に気付き、剣を構えて私に向かって走ってくる。


「……っ! 私だってこんなところで負けるわけにはいかない!!」


 私と少女がぶつかり合う直前。


「そこだ!」


 近くに居た少年の風魔法が、私たちを襲う。 


『ブワァアアアー!!』


 かなり強い風が、私たちを襲う。


「う……!この程度で!」


 私は気力で風魔法から脱出するも、少女は場外へと吹き飛ばされてしまう。


(後四人……!)


 私は少年に狙いを定める。しかし私を見ていた少年は横からくる少女に気付かず、短剣を振りかざされてしまう。


「うぐ……!」


 チャンスだ二人とも私を見ていない! 一気に落とせる……!


 しかしそう簡単にはいかない。三人が集中してるせいで、もう一人の存在を忘れていた。


『グサ!』


 何かに背後から刺された。殺し合いは禁止されている。危険と判断されれば、先生たちが止めに入る。私を刺した何かは右肩を突き刺していた。


「う……うぐ」


 私はすぐに刺されていた物を抜き、後ろを振り返りながら、間合いをとる。


「私が一番になるんだ!」


 小さな槍を持った少女は、返り血を沢山浴びた状態だった。


「槍が小さいのね」


 この子の槍は、身長の半分程度しかなかった。


「これが私のスタイルなのよ!」


『ピョン!』


 少女はジャンプすると、槍に魔法を注ぎ始める。

 

「はぁあああ!!」


 私は少女と間合いを取ろうとするが、少女はすでに槍全体に水魔法をコーティングをさせていた。


「……っ!早いね!」


「ふふっ……トドメです!アクア・スピアー!!」


 すると鋭い針のような水の槍に変形し、私に投げつけてきた。


『ドカァアアアン!』


「うわぁああああ!」


「きゃぁああ!」


 水魔法と地面への衝撃で床がえぐり、煙がたち込める。


「やった……!私が一番だ!」

 

 煙が漂う中、空中から降りてきた少女は、心落ち着いた様子だった。



「……その程度で勝つなんて甘いよ!」


 少女は声が聞こえる方を探す中、煙が落ち着いてきた。


 ぶつかり合ってた二人は突然の衝撃波で、場外へと吹き飛ばされていた。


「そんな……仕留めたはずなのに!!」


 私は空中に飛んで、回避していた。


「まぁあれは『偽物』だけどね」


 私の体内魔力『分身』。本体と二人まで分身を出すことができる。


「本当は予選で使うつもりはなかったけど! 貴女強いから!」


 私は少女に向かって、空中から飛び込む!


「く…!…でもまだ!!」


 少女は床に刺された槍を抜き、空中の私へに構える


「空中だと、避けれないよ!」


「それはどうかな!」


 勢いそのままに落ちた私は剣を振りかざし、少女に突っ込む!


『ギリリリリリ!!』


 剣と槍がぶつかり合う音。私と少女はお互いを睨む。


「こんなところで負けてられない!」


「……っ!」


 少女は私ごと勢いそのままに弾き飛ばすと。


「これで終わりだよ!」


 今度は横腹に突き刺す。


決まったと誰もが確信した。


 しかし……。わたしの『分身』は。


「二人まで作れるんだよ。」


 刺されていた私が消える。少女は驚きそして焦る。


「はぁぁぁあああ!!」


 私は背後から、左剣を少女に浅めに斬りかざす。


「……っう!」


 少女はよろける。


「これで終わりだぁあああ!!!」


 私は痛みを堪えながら右手で少女の腹を殴る。

 

「……かは!」


 少女を場外へと、殴り飛ばした。


『・・・・・・・・』


 体育館が静かになる。


「そこまで!! 第三体育館勝者! 夏風空!」


 先生の一声と共に、一瞬にして歓声が巻き起こる。私はその場に座り込むと、心の底からため息が出た。


「にっちゃん勝てたかな……?私は勝ったよ」


 天井の光を見ながら床に仰向けになり、しばらく休んだ。


ーーーー


「こんなの勝てるわけないだろ……」


「一体なんなのこの人……」


 その頃第二体育館では、百九人が倒れる中、一人の少女が立ち尽くしていた。


「……全く相手にならないんだよね」


 監視していた先生たちも唖然としている。


「……っ!第二体育館勝者!白野美羽!」


 気品のある白髪の女性は小さく笑みを浮かべて、体育館を去っていった。

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