第6話 ベスト4へ
「大丈夫ですかー!」
「各自救護に当たってください!」
試合が終わり改めて、保健部のみなさんが各自に駆け寄り治療を始める。
その場に横たわっていた私のところにも来て、治療を始める。
「もう大丈夫ですからね! お疲れ様でした……!」
普通の人でも魔力で微量に回復できるが、やはり限界がある。そこで治療魔力に特化した人たちが手当に当たるのだ。
「私、こんなところでギリギリの戦いしてて、大丈夫かな……。みんな強すぎる」
全部で第四体育館あるこの学校。
一人ずつ勝者が出て、そこでベスト四が確定する。つまり私は今この学校の四強というわけだ。
やっぱり嬉しい。治療されながらニヤける。
「夏風さん。回復次第、第一闘技場へと向かってください。」
実行委員の人が、治療中の私に近寄り話しかける。この学校は四つの体育館と、二つの闘技場がある。闘技場は体育館よりも広く人も沢山入る。そして準決勝からは、一般のお客さんも入っての試合だ!もちろんこの予選も闘技場で中継されていた。
「他の体育館は、出揃ったんですか?」
にっちゃん、大丈夫かな?実力は知ってるけど、やっぱり心配だ。
「ここ第三体育館と、第二体育館がすでに終わりました。」
ここで、他の体育館の詳細は言われない。準決勝誰と当たるかは、実行委員の抽選で決まる。
「治療完了しました!」
保健部の生徒が、私と実行委員に報告する。身体を動かすと、いつも通り元気な身体になっていた。
「ありがとうございます!」
私は起き上がり一つ礼をすると。
「それじゃあ行きますか!」
元気になった身体を動かし、第一闘技場へと向かう。
「うぅ……」
「悔しいなぁ……」
闘技場に向かう途中、沢山の少年少女の泣き声が聞こえた。約四百人以上が参加したこの大会。私はこの子達の、少なくとも次の大会までの夢を潰したんだ。
(私が絶対勝つから……!)
みんなの涙を見ながらも、私は気合を入れて闘技場へと続く廊下を歩き続けた。
そして闘技場の着き、実行委員から待合室に案内されると、椅子に座り武器の確認をする。
「それでは、しばらくお待ちください」
ゆっくりとドアが閉まると、私は武器を取り出し少し見つめる。
「……うん!綻びもないし大丈夫!」
お父さんから貰った、大切な二つの刃
「私必ずあいつを殺してみせるよ……!」
私は刃に映る自分を見て、小さく喋る。私の大好きだったお父さんを殺した、謎の羽の生えた人間…
頭の中がそのこといっぱいになる。
「ダメダメ!今は試合に集中しなきゃ!」
私は邪念を追い払うように首をブンブンと振る。改めて一息つき、決意固めているとガチャリと、ドアの開く音がする。
「夏風さん準備をお願いします!」
呼ばれた……と言うことは全ての体育館で決着がつき、回復も終わったのだろう。
「分かりました!」
ふぅと少し息を整え、立ち上がる。
長い廊下をゆっくり歩く。外からもの凄い歓声がだんだんと近づいてくる。相手は誰だろう? にっちゃんとは決勝でって、約束したから今はやだなぁ…。
『ワァァアアア!!』
『頑張れよ!!』
外へ出ると、周りはものすごいお客さんだった。こんな舞台で戦えるなんて、改めて嬉しいな
『コツ……コツ……』
向かうから誰か来る! 誰だろう……私はゴクリと息を呑む
「あ、あのよ、よろしくお願いします。」
反対側の廊下から歩いてきた少女は、小さく挨拶をする。杖を持つ両手が震えている……。緊張しているのかな。
(にっちゃん、ではなかった……。)
にっちゃんは、第二闘技場かな? ……まさかと思うけど、この歓声の中にいないよね?
違う! 今はまだ自分の事に集中するんだ!
「よろしくね! お互い頑張ろう!」
私は元気良く少女に挨拶すると、両腰に装備してる二つの短剣を取り出す。
「お待たせしました!! それでは第一回紅葉学園最強決定戦準決勝!」
『ウォォォオオ!』
司会の声と同時に観客のみなさんの、ボルテージも上がる。
「第三体育館からやってきたのは! 二刀流の少女!夏風空!」
私は、お客さんに向かって手を振る。めちゃくちゃ緊張してきた。
「第四体育館からやってきたのは! 氷の使い手! 青葉氷華!」
水色の髪をお団子にしている少女は、お客さんに向かってゆっくりと、小さくお辞儀する。
「それでは! 準決勝……!」
『・・・・・』
観客が静かになる……。
『はじめ!!!』
「いくよ! 青葉さん!」
「ま、負けません!」
沢山の観客が見守る中、司会の合図と共に、私は青葉さんへと近づく。
ーーーー
同時刻。第二闘技場は白熱していた。
『す、すごいなこの試合……』
観客さえも言葉詰まるような、試合になってた。
「……っ!ウチの攻撃避けて撃つなんてなかなかやるじゃないの……ちょっと痛かったわ」
「それはどうもです。では次いきますね!」
(この人……。私の麻痺弾が効かないの?)
「やってやろうじゃんか!」
白髪の少女と紫髪の少女は、疲弊しながらも武器を撃ち合う。
「それにしても、こんなに追い詰められたのは久々だわ……! お礼に良いもの、見せてあげるわ!」
白髪の少女はポッケから、『ある物』を取り出す。
「腰抜かさないでね?」
クスッと笑うとそれを武器と融合させる。
「そ……それは!!」
眩い光が、紫髪の少女を襲うのだった。
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