第18話 海賊 Le Corsaire

バレエ『海賊』

Le Corsaire


曲:アドルフ・アダン

チェザレ・プーニ

レオ・ドリーブ

リカルド・ドリゴ

アドルフ・アダン


振付:ジョゼフ・マジリエ

初演:パリ・オペラ座 一八五六年

振付:マリウス・プティパ

初演:一八九九年


§登場人物§           

コンラッド(海賊の首領)

メドーラ(ギリシャの娘)

アリ(海賊・コンラッドの忠臣)

ビルバンド(海賊)

グルナーラ(ギリシャの娘)

ランケデム(奴隷商人)

サイード・パシャ(トルコの総督・お金持ち)


§ バレエ『海賊』 §

イギリスの詩人 ジョージ・ゴードン・バイロンの詩『海賊』をもとに作られたバレエ作品といわれています。


(物語)

(プロローグ)

地中海。嵐の夜。

 荒れ狂う海を一隻の船が漂っています。船上には荒波と戦いながら必死に海岸を探す海賊たちがいます。強風吹き荒れる中、マストの上から海岸を探す者、波に揺られる船から海に放り出される者……船を守ろうと必死の海賊たち……

 気が付くと船長のコンラッドと忠臣のアリ、ビルバンドは砂浜に打ち上げられていました。まだ辺りは暗く満身創痍で自分たちの状況もわかりません。コンラッドはアリたちに支えられながら休める場所を探し再び眠りにつきます。


第一幕 第一場

イオニア海に浮かぶギリシャの島の浜辺

 そこは美しいイオニア海にあるギリシャの島。地中海の美しい島です。しかし、この辺りは海賊、トルコ軍の兵、奴隷商人など様々な荒くれ者たちが行き交う危険な場所です。

 夜が明け浜辺にグルナーラを先頭とした美しいギリシャの娘たちがやってきます。そして彼女たちは浜辺で楽しそうに踊り始めます。

 娘たちの中で一際美しいメドーラが物陰で倒れる様に眠っているコンラッド達に気付きます。娘たちはコンラッド達を助けようとします。再び目覚めたコンラッドはメドーラの美しさに一目惚れします。

 物陰から出てきた彼らは自分たちが身体を休めていたところが難破して残骸となり砂浜に打ち上げられた自分たちの船であることに気が付きます。船長であるコンラッドは悲しみにくれます。

 その時、娘たちは異変に気付き、傷ついたコンラッド達に物陰に隠れるように言います。コンラッド達が身を隠したところへ奴隷商人ランケデムとトルコの兵たちがやってきます。大人数で押し掛けて来た彼らに傷を負ったコンラッド達は為す術もなく、娘たちはランケデムとトルコ兵たちに捕まり連れていかれます。

 物陰から一部始終を見ていたコンラッドたちは彼女たちを救い出すことを心に誓います。


※イオニア海……イタリア本土の南、シシリア島の東、ギリシャの西のあたり。


第一幕 第二場

奴隷市場

 奴隷市場。そこは波止場近くの広場で、たくさんの人で賑わうところです。奴隷商人ランケデムは捕まえて来た女性を売ります。様々なところから連れてこられた女性の奴隷が売りに出されるのですが、トルコの総督サイード・パシャを満足させることはできません。ギリシャの娘たちもパシャの前に売りに出されました。ランケデムは美しいグルナーラを出してきます。

 ここでランケデムとグルナーラのパ・ド・ドゥが踊られます。第一幕の見せ場ですね。

グルナーラはその美しさからすぐに買われます。


パシャはランケデムに更に女性の奴隷を要求してきます。

 ランケデムは顔をヴェールに覆ったメドーラをを連れてきます。そしてヴェールを取ります。その場に居合わせた者たちは皆メドーラの美しさに心を奪われます。ランケデムはメドーラを買うとランケデムにお金の入った袋を渡します。

 そこへどこから現れたのか、あまり見かけない一団がやってきます。顔を布で覆った男がメドーラを買うとランケデムにお金の入った袋を渡します。ランケデムはどちらが多いか袋を比べ見ているとき、布で顔を覆った男はメドーラのところに行き彼女に姿を明かします。浜辺で出会ったコンラッドです。コンラッドたちは浜辺で連れ去られた娘たちを助けに来てくれたのです。メドーラは喜びます。

 ランケデムやパシャたちが交渉している間、奴隷市場の広場に集まって来たコンラッドたち海賊の一団は着ていた服を脱ぎ捨て海賊の姿を明かします。居合わせた人たちが驚き慌てます。パシャも恐れをなして何もすることができません。海賊たちは奴隷として連れて来られていた女性たちを自分たちの船に乗せ連れ去ります。

縄で縛ったランケデムも連れ、その場を立ち去ってしまいます。


※オダリスク……ハーレムで仕える女性の奴隷


第二幕

海賊の洞窟

 コンラッドたち海賊は奴隷市場で売られそうになっていたメドーラたちを助け海賊の洞窟にやってきました。洞窟の中は海賊たちが奪ってきた財宝や食料で華やかに飾られています。その片隅には一緒に連れてこられた奴隷商人ランケデムは縄で縛られ繋がれています。

 宴はますます盛り上がり、海賊の男性たちは皆で華やかに踊ります。華やかさと迫力のある海賊たちの踊り。

 そして美しい音楽とともにメドーラとコンラッド、アリによるグラン・パ・ド・ドゥが踊られます。

 女性たちはメドーラに対し、コンラッドに掛け合って家に帰らせてもらえるよう頼んでほしいと言います。メドーラはコンラッドに皆の思いを伝えます。コンラッドはそれを受け入れるのですが、ビルバンドを中心とする海賊たちは納得しません。コンラッドと忠臣のアリ、ビルバンドたちの間で争いが起こります。

 結局、コンラッドはビルバンドたちの意見を受け入れず女性たちを解放します。そしてコンラッドとメドーラ、アリはその場を去り自分たちの部屋に帰ります。ビルバンドたちは納得がいきません。

 その一部始終を部屋の片隅に縄で縛られていた奴隷商人ランケデムが見ていました。ランケデムはビルバンドに掛け合いコンラッドへの報復を企てます。眠り薬をかけたバラの花をコンラッドに贈りコンラッドが眠っている間にメドーラを奪おうというのです。

 ランケデムの策略に乗ったビルバンドたちがメドーラに花束を渡すと、喜んだ彼女はその花束をコンラッドに渡します。花束の香りを嗅いだコンラッドは眠ってしまいます。その隙にランケデムはメドーラを奪い洞窟を立ち去ってしまいます。騒ぎを聞きつけたアリがやってきますがランケデムがメドーラを連れ去った後でした。


※この場面では海賊(男性)三十人くらいで踊る群舞があります。こここが、どこにでもあるバレエ教室の公演や発表会で『海賊(全幕)』が上演できないところになってきますね。普通のバレエ教室では小学生の女子が大半で、あとは大人のバレエクラスの女性がいるというのが普通だと思います。

※全幕作品ではコンラッド、アリ、メドーラの三人でグラン・パ・ド・ドゥが踊られることが多いと思います。ガラ公演やバレエコンサートでこのグラン・パ・ド・ドゥのみを単独で上演する場合はアリとメドーラだけで踊ることが多いです。


第三幕

トルコの総督サイード・パシャの宮殿

 奴隷商人ランケデムが再びパシャの前に現れます。パシャの宮殿では毎日華やかな宴が催されています。彼はグルナーラの踊りには満足しているのですが、他の女性の踊りに満足していません。

 ランケデムはパシャの前にメドーラを連れ出します。パシャは喜びメドーラを買い取ります。メドーラはグルナーラとの再会を喜びます。その日もパシャの宮殿では華やかな宴が催されていました。美しい花輪を持った女性たちの踊り。メドーラやグルナーラも美しい踊りを披露します。

 そこへ巡礼者を装った一団がやってきます。その一団はコンラッド、アリそして彼らに従う海賊たちでした。海賊たちはパシャの宮殿からメドーラ、グルナーラたちを救い出し自分たちの船に乗ります。


そして大海原に去って行きます。

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