第3話 ドン・キホーテ Don Quixote

バレエ『ドン・キホーテ』

Don Quixote

曲:レオン・ミンクス

振付:M.プティパ

初演:ボリショイ劇場 一八六九年


登場人物

キトリ(町の娘・宿屋の娘)

バジル(キトリの恋人・床屋の青年)

ドン・キホーテ(遍歴の騎士・放浪する男)

サンチョ・パンサ(ドン・キホーテの従者)

ガマーシュ(キトリに求婚する貴族)

ロレンツォ(キトリの父・宿屋の主人)

ドルシネア(ドン・キホーテの夢に出てくる姫)

キューピッド(ドン・キホーテの夢の中の森に出てくる)


(物語)

プロローグ

 騎士小説を読みふける男が自分は小説の中の主人公「ドン・キホーテ」と思い込み、物語と現実の区別がつかなくなります。

 そして彼はサンチョ・パンサを従えて、物語の中の「ドルシネア姫」を探す旅に出ます。


第一幕

スペイン(バルセロナ)の広場

 村の宿屋の看板娘キトリはバジルという恋人がいます。しかし、バジルは床屋の青年、キトリの父親は金持の貴族ガマーシュと結婚することを勧め、バジルとの結婚を認めようとしません。

 父親はキトリとバジルを引き離そうとしますが、二人は父親に反発し駆け落ちをしようとします。

 そんなとき、町にドン・キホーテとサンチョ・パンサがやってきます。

変わった出で立ちをした彼らに町の人は驚きます。

ドン・キホーテはキトリを見るとドルシネア姫と思い込んでしまします。

町の若者たちや、闘牛士のエスパーダとその仲間たち、スペインの広場は、毎日、活気、賑わいで騒がしいところです。そこへ風変わりな放浪者ドン・キホーテ、サンチョ・パンサ……益々、賑やかになった中、キトリとバジルは町から逃げ出します。

それに気付いたドン・キホーテ、サンチョ・パンサは二人の後を追っていきます。


第二幕 一場

ジプシーの野営地

キトリとバジルはジプシーの野営地にたどり着きます。

そこはジプシーたちが踊ったり、人形劇が披露されたりしていました。

ジプシーたちはキトリとバジルの話を聞くと歓迎してくれました。

少し遅れてドン・キホーテとサンチョ・パンサもたどり着きます。

ジプシーの人形劇を見ていたドン・キホーテは物語にのめりこんでしまい、現実と物語の区別がつかなくなります。人形劇の悪者を本物の悪者だと勘違いし、人形劇をめちゃくちゃにしてしまいます。

さらに近くにあった風車を悪の巨人と思い込んだドン・キホーテは風車に向かっていきます。風車の羽根に引っかかったドン・キホーテは風車の羽根から地面に落ち、気を失ってしまいます。


第二幕 二場

森の中(ドン・キホーテの夢の中)

ドン・キホーテは森の中にいます。森の中では妖精たちが踊っています。

キューピッドも踊ります。

そしてドルシネア姫が登場します。探し求めていたドルシネア姫に巡り合えたドン・キホーテ……

しかし、夢から覚めて現実の世界に引き戻されます。


第二幕 三場

町の酒場

キトリとバジルはロレンツォ、ガマーシュたちに追いかけられています。

今度はいつもの居酒屋に隠れています。ドン・キホーテたちも彼らを追いかけてやってきます。

バジルはキトリとの結婚を認めてもらおうと狂言自殺をします。ナイフで自殺したフリをします。キトリもそれに合わせて悲しむフリをします。

そんな彼らを見たドン・キホーテは不憫に思い父親のロレンツォを説得します。そして、二人はやっと結婚を認めてもらいます。


第三幕

キトリとバジルの結婚式

二人の結婚式が盛大におこなわれます。

(ここでキトリとバジルのグラン・パ・ド・ドゥが踊られます)

それを見届けたドン・キホーテとサンチョ・パンサは、またドルシネア姫を探し求める旅にでます。


ドン・キホーテというバレエ

 バレエ「ドン・キホーテ」は「白鳥」や「眠り」のノーブルな物語と異なり、民衆の力強さと、王子様お姫様の話にはないコミカルな表現が魅力ですね。

 演出により違う部分もあると思いますが、一八六九年、一九世紀に、こんな現代のドラマのストーリーでもあるような人間劇があったのですね。

 といっても、すぐにいつごろかわからないかもしれませんが、明治時代が始まったのが一八六八年ですから、バレエ「ドン・キホーテ」の舞台は中世ヨーロッパですが、作品が作られたのは明治時代(一八六八年から一九一二年)ぐらいですね。

 「白鳥の湖」(一八七七年)「眠れる森の美女」(一八九〇年)「くるみ割り人形」(一八九二年)なので、チャイコフスキー三大バレエは明治時代の作品ということになりますね。

 バレエ「ドン・キホーテ」は物語も、一つ一つの踊りもたいへん魅力的な作品です。


バレエの表現

 バレエは言葉のない芸術。音楽とマイム(身振り手振り)で表現していきます。マイムの意味など知らなくても、全幕バレエの内容は十分にわかると思います。いちいち説明しないとわからないほど難しいものではありません。長い歴史の中で培われた名作、それを舞台で表現するバレリーナ、バレエダンサーたちは細かい動き、顔の向き、手の動き、足を一歩踏み出すタイミング、音の取り方など、日々厳しい練習の中でそんな繊細なところまで注意しながら、注意されながら毎日練習しています。そのように表現され演出されています。

 今日初めてバレエを見る方にも、だいたいの登場人物たちの気持ちは伝わります。登場人物の、その場、その場での感情は伝わっても、全体の物語は、やはり知っておくに越したことありません。

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