彩葉の思い
「先輩!どうせ食べるなら私から食べさせるのも良いと思うんです!」
「急にどうした!?そんな無茶苦茶なこと言って?」
「どうしても先輩に『あーん』したいんです!」
俺は察した、恐らく受け入れないと弁当を食べさせてもらえないことに...
「流石にまだまだチャンスがあると思うから今日くらいは...」
「そうやって逃げるつもりですよね?それに初日からあーんで、食べさせることによってこれから毎日それで食べさせることが...」
「ならないよ!?一回限りだと思うよ?」
「一回病院でもあーんしたじゃないですか!」
「いやあの時は俺も混乱してたし...」
それにあの時はそういうノリだっただけで...
「先輩は私が作った弁当、欲しくないんですか?」
「それは欲しいけど...」
「それじゃ諦めてあーんされて下さい!」
「...わかった、一回だけだからな!」
「最初からそうしとけば、もうちょい長く昼休みを楽しめたのに...」
それはちょっと無理がある発想じゃないですか?彩葉さん。
「それじゃ行きますよ!」
「そんな掛け声とかいる物なの!?」
「少し静かにしてて下さい!」
それは確かに、でも彩葉の顔が近くて緊張してるんだ許してくれ!
そう言ってる間にも彩葉の手が近づいてきた...
「あーん」
俺はその声に合わせて口を開いた。
「ん!」
あまり見ていなかったが、今食べさせられたのはだし巻き卵だったようだ...
「どうですか?正真正銘私の手作り料理は!」
俺は口に入れられた卵を食べすすめていく...
味としては、甘めに作られているのにも関わらず、出汁の味がしっかりと出ていて、ふんわりとした食感!
なんか俺、食レポマンになってないか?
「美味いな!今度作り方とか教えてもらって良いか?俺普段妹の弁当とか作ったりするからこれ作れたら、喜んでもらえそうだ!」
「良いですよ!ってか私は先輩の願いは断りません!」
「ありがと、じゃあ日にちはそっちが行きやすい日でいいよ!」
料理は好きだ、決して得意とかではないが、暇があったら料理を作りたいな、と思うくらいには好きだ。
「それじゃもう弁当自分で食べてみて良いか?」
「ダメって言ったら?」
「今日はコンビニ弁当で済ます!」
「それは...ダメですね」
彩葉的にはそっちの方がダメらしい。
「だって先輩の体にも良くないですし、私の弁当の感想も貰えないし、先輩の財布も軽くなりますし、よくないことだらけです!」
「まぁそういうことになるのか?」
「はい!なので後は先輩の自由で食べて下さい!本当なら私が食べさせてあげたかったんですけど...」
そう言って弁当を渡してきた...
「感想は、言って下さいね?」
「わかってるよ、流石に作ってきて貰ってるんだし...」
「ならよしです!」
そっからは彩葉の弁当を最大限に味わい、その感想を彩葉に告げると、すごく嬉しそうにしていた。
「先輩、そんなに美味しかったですか?私の弁当」
「そうだな、すごく美味しいと思うぞ」
「それなら明日も作ってきますね!」
「もう一回言うが無理はしなくても良いんだぞ?俺は別に自分でも作れるし...」
「私はたとえアイドル活動の時間を切り詰めてでも、先輩の弁当を作りますよ?」
「それを無理してるっていうんだ!正直弁当を作ってきてくれるのはうれしいし、また作ってもらえるなら作ってほしい、でも俺は彩葉にアイドル活動を怠ってほしくないし、そのために頑張ってる彩葉もみたいんだ!」
これに嘘は混じっていないし、今彩葉がアイドルの活動をしてライブを開くっていうなら、行くつもりでもある。
「先輩は、私のアイドルの姿も気になるんですか...?」
「そうだな、今の彩葉とは違う可愛さを感じたかな?」
「......」
彩葉は、下を向いて黙ってしまった...
その時の彩葉は、すごく赤く下を向いている表情は、笑っているように見えた...
「そうですか...なら見せてあげますよ!」
「え!?」
「いつだって私はあなたのアイドルですよ!」
彩葉は抱き着いてきた。
「ちょ!彩葉近いよ!」
「ダメです、このまま昼休みが終わるまでこうしていましょう!」
「終わるまで!?」
「そうです!終わるまでです!」
さらに彩葉は身を寄せてくる...
「彩葉さすがにそれ以上は...」
「ん~離れたくないです~」
彩葉はまさに俺に甘えているような感じで、くっついてきた。
「この前先輩が私に甘えてきたので先輩も私を甘やかしてください!」
「...わかった、彩葉の好きなだけ甘えてくれ」
「先輩は何言ってもやらしてくれる、優しいところも大好きですよ!」
「大好きとかそんなに軽く言わないでくれ...」
「何回だって私は言い続けます、先輩がこの思いに応えを言ってくれる時まで!」
「そうか...まぁいつかは応えるよ...」
「それでよしです!」
俺は彩葉にいつか俺の思いを伝えることができるのだろうか?
それを告げた時俺と誰かの仲が切れてしまったりしてしまうのではないだろうか...
それが怖くて今の発言が嘘になってしまうのではないか?
「先輩不安そうな顔してますけど大丈夫ですか?」
「あぁ...いやなんでもないよ!」
「嘘ですね!」
「え!?」
「なんでもない人がそんな顔しませんよ!」
「......」
彩葉に心が見透かされているような感覚があった。
「私は先輩が何考えているかもわかりません!でも、先輩が困ってたりしたら支えます、だからそんな顔しないで下さい!後嘘も駄目ですよ?嘘ついてると私も何もできなくなるので!」
「彩葉...」
「先輩!好きなだけ私に甘えてください!本音を私にぶつけてください!その代わり私も先輩に甘えるので!」
俺はその言葉に涙をこぼした...
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