至福の朝食

 目を覚ますと、携帯に通知が来た。


 彩葉『朝はまだ食べないでくださいよ?』


 それは彩葉からの連絡だった...

 俺はすぐさま連絡を返す。


 樹 『一応聞いておくが、なんで食べちゃいけないんだ?』


 そうしたらすぐに既読がついて返ってきた。


 彩葉『私が朝食を作ってきたからです!』

 樹 『いいのか?』

 彩葉『いいんです!私が作りたいと思ったんで!』

 樹 『わかった、ありがと朝食楽しみにしとく』

 彩葉『楽しみにしといてください!あと、昼も弁当とかいりませんからね?』

 樹 『なんかそこまで作ってもらうのは気が引けるな...』

 彩葉『別にいいんですよ!』

 樹 『それならいいが無理はするなよ?』

 彩葉『大丈夫です!』


 彩葉とのメールを終わらせ、俺は携帯をしまい一階へと向かう。

 朝食と弁当を作るのは俺の担当で、晩飯を作るのは小鳥の担当だから、俺は小鳥の朝食を作り始める...


「おにぃおはよ!」

「小鳥おはよう」

「なんかおにぃに朝ごはん作ってもらうの久しぶりな感じがする!」

「数日だけだったろ」

「それでも私は長く感じたの!」

「はいはい...」


 そういって俺は目玉焼きを作り、焼いた食パンと一緒に皿に盛り付ける。


「ほい、小鳥の朝飯だぞ!」

「ありがと、おにぃ!」


 続けて弁当を作る、といってもほとんど冷凍食品で終わらせる簡易的なものだ...

 俺も難しいことまではできないからな。


「弁当は机の上置いとくから!」

「わかった~おにぃがいると楽だなぁ~」

「別に手の込んだことはしてねぇよ!」

「それでも何もしなくてもいいのは楽だよ?」

「それはそうかもな」


 俺はそういってもう一回階段を上り自室に戻り、制服に着替える。


「はぁ、今日から学校か~授業も少しは進んでいるだろうし、行かないといけないのはわかってる...が!めんどくさいんだよなぁ~」


 なにをモチベに俺は学校を楽しめばいいんだろうか...

 まぁ勇也としゃべることをモチベに考えておけば、少しはだるさもマシになるかもしれない。

 そういって俺は頭の中に勇也を召還した...


「学校に行く気がどんどん失せてきたな...」


勇也を召還したのは間違いだった、最悪な気分になるだけだった...

想像上の勇也は俺の想定よりうざかった。

想定ってなんやねんって話ではあるが...


「あ!それそろ出ないと!」


そろそろ彩葉が来る時間となった。

俺は一階に降り、出る準備を終わらせた...


「小鳥ー!俺はもう出るから!」

「うん。行ってらっしゃいおにぃ!」


(バタンッ)


玄関を閉め鍵もかけ、外の指定された場所にて彩葉を待つことにした...


ここ最近はいろんなことが立て続けで起こるな。

俺的には、何も起こらず暇な日々を過ごすくらいならば、何か起きてほしいと願うが、こんなに変化が起こる日々は久しぶりな気がする...


「これも彩葉のおかげってことなのかな?」

「私がどうかしたんですか?」

「うわっ!」

「さすがの私も、そんな変なものを見たときみたいな反応されると傷つきますよ!?」

「それはすまない、少し驚いちゃって...」

「まぁいいですよ、それより!さっき言ってましたけど、わたしがどうかしたんですか?」

「いや別に何も?」

「それならいいんですけど...」

「それより早く行こうぜ!それと早く彩葉の朝飯も食べたいし...」

「急いでも先輩の分のご飯は逃げませんよ!」


それもそうだが、そろそろお腹がすいてきてしまった...


「まぁ先輩が、そんなに食べたいっていうなら早く食べましょう!」

「やったぁ!」


俺は無邪気にもそう喜んだ。


「ふふっ...」


彩葉は微笑んで、こっちを見てきた...

微笑んだ彩葉は天使に見えた。


「どうかしました?」

「いやなんでも...」

「そうですか...あっ!あそこに座って食べれそうですね!行きましょう!」


そこには座って食べれそうなくらいのベンチが公園においてあった...


「ほら早く座りましょう!」

「そうだな」

「はい!これが先輩のご飯です!朝から頑張って作ってきたんだ感想とかほしいです!」


そこにあったのは、すごくおしゃれなサンドウィッチだった...


「いただきます!」

「どうぞ...」


(あむっ)


「ん!」

「どうです?おいしいですか?」


味は完璧なレベルでおいしく、中の具材がどれも引き立っていて、バランスが綺麗に取れているサンドウィッチだった...

サンドウィッチに差が出ないだろ!とか言ってるやつマジでうまいサンドウィッチは美味いから!


「すごくおいしいよ...ほんとにびっくりするぐらい...」

「それならよかったです!」


そんなおいしいご飯の時間はすぐに終わってしまい、その余韻に浸る暇もなかった...


「そんな残念がるぐらいなら、また明日も作ってあげますよ?」

「ほんとに?」

「いいですよ!何なら先輩の家に泊まり込みで朝昼晩を...」

「それは無理だよ!?」

「えぇ~先輩と一緒に暮らしたいです~」

「それが無理なんだよ!」

「しょうがないですねぇ~先輩は...」

「俺が悪いみたいにしないでくれない!?」


そうやって俺に罪悪感を負わせて許可してくれるかもって思ってるんだろうなぁ~


「もう彩葉のその戦術には引っかかんないから!」

「むぅ~」


ぐっ!可愛い!けど優しくしてはいけない!


「それじゃ昼くらいは毎日作ってほしいな...」

「ご飯で私の虜にして、私のご飯以外食べたくなくしてあげます!」


怖いよ、言うことが、そんなに俺に朝昼晩のご飯を作りたいか...


「早くいくぞ?彩葉!」

「あぁ!このままじゃいろんな話をつけられそうだからって、話をずらしましたね!先輩はそういうとこがずるいです!」

「お前も十分にずるいからな?」

「先輩はそういうのが好きじゃないんですか?」


マジで勇也今日あったら一回後悔させてやる、そんなことまで言いやがって!


そう決意を固め、彩葉と学校に向かうのであった...

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る