第20話 大地を割るメイド

「B002番、アキです」


「B888番、ナインです」


 オイナーが雇ってきたメイド2人の名前は番号ではなく前の名前をつかってもらう事にした。


「アキは魔力持ちとオイナーから聞いたが」


「はい、火の魔法が使えます」


 アキは他に格闘、剣、槍が得意らしい。クーカーと少し似ているが少しアキの方が落ち着きがある。


「クーカー様がこちらにいらっしゃるんですか?」


「いるけど、知り合い?」


「実はクーカー様は私の師匠なんです!」


 アキはクーカーに格闘、剣、弓、槍を教えてもらっていたが弓だけは上手く扱えなかったらしい。


「久しぶり、アキ。まさか奴隷になるなんて思わなかったよ」


 アキは平民で親の借金返済のために売られた可哀想な子だった。


 クーカーとアキの出会いは、クーカーが旅の途中魔物に襲われていたアキを助けたのが初めだったとのこと。


「ナインも何年かぶりだね」


「お嬢様、お久しぶりです」


 どうやらナインもクーカーの知り合いのようだ。


「クーカーって奴隷全員知り合いだったりして」


「そんなわけないよ!」


 ナインはライゼン男子家のメイドだったらしいが、ライジング男子の夜這いを断ったせいで売られた身らしい。


「…運命に感謝だな」


「これはいい運命なのかな…」


 俺とクーカーは微妙な顔をする。


「私は運が良かったです!オイナー様には感謝ですね!」


 アキはポジティブで良かったよ。


「またお嬢様のお世話が出来ることを嬉しく思います」


「今度は私より、ご主人様を優先してね」


 クーカーの言葉を聞きナインは俺の方を向き頭を下げる。


「ご主人様、これからよろしくお願いします」


 かなり警戒されているような気がするが、先ほどの話を聞いた以上積極的にはナインに近づかないようにしよう。


「自己紹介はここまでにして2人ともこっちに来て」


「なんですか?」


「奴隷解除をする」


 2人は驚く、アキは魔力持ちだから色々役立つし、まあそのついでにナインの奴隷解除もしちゃおうってら事だ。奴隷解除に関しては魔力持ちであれば誰でも出来るし。


「良いのですか?」


「心配するな、ナインの奴隷解除はアキのついでみたいなものだし」


 早速2人の奴隷解除をして、すぐに仕事をしてもらう。


「来てもらってすぐだが、早速仕事を頼めるか?」


「お任せください」


「任せたナイン、アキは料理以外何もできないって言ってたよな?」


「はい、ですので何をしたらいいですか?」


「じゃあ魔法の勉強をしよう」


 人それぞれ使える魔法が違うから教えられない、だが俺みたいな万能タイプは可能だ。彼女はうちの良い戦力になるだろう。


 ナインに家事を任せて早速アキを連れて特訓に出かける、何故かクーカーもついて来た。


「魔法の前にアキ、私と勝負しよ!」


「はい、是非!」


 2人は剣を持ち構える、あのさ俺を置いてきぼりにしないでほしいな…


「行きます!」


 アキはクーカーに切りかかるが、クーカーはその剣を受け止めて流す。


「まだまだ!」


 剣では勝てないと思ったのかアキは槍に持ち替え攻撃を続ける。


「あまい!」


 クーカーは剣を地面に刺し、右手でアキの槍を掴み投げ飛ばす。


「パワー!!」


 投げ飛ばされたアキは突然叫び出し地面に拳を突き付ける。すると大地が揺れ出した。


「ちょっ…いくら人がいないからって…」


 なんとアキの右手の拳一つで地面が割れてしまった。


「アキ…お前何してくれちゃってんの!」


 大きく地面が割れ平だった地面が不安定になる、せっかく地面を整地したのに苦労が水の泡だ。


 俺とクーカーはアキの起こした地震の衝撃により倒れている。これは災害級にすごい馬鹿力だな。


「すいません…」


「はぁ…クーカーの気は済んだか?」


「うん、ありがとう」


 クーカーの気が済んだところで、少々気を悪くした俺はスパルタ特訓をアキに強いるのだった。


「私、魔法苦手なんですけど…」


「つべこべ言わず火球をぶつけて来い!」


 だが、いつまでもアキは火球(ファイアボール)を投げつけてこない。どうやら俺の怒っている姿を見て萎縮しているようだ。


「あの、シヨウさん。ここまでにしましょ?ほら、アキが怖がってますから」


 その事件からしばらくアキは俺に近づかなくなったとさ。

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