第0,2話 対照的な2人の扱い方
「なら2人とも嫁にしたらいい」
アマゾン侯爵様がどこか嬉しそうな顔で言う、一方で呆れたような顔をしているアルフさん。
「せめてどっちかに…」
「さぁ、持って行った!持って行った!」
アルフさんが言い終わる前に外に追い出される俺とアルフさん、ベータさん、シグさん。
「面倒な2人を押し付けられたわね」
アルフさんが言うにはベータさん、シグさんの扱いが実の両親でも難しいから厄介払いしたみたいなものだとさ。
「まあ、無人島が賑やかになりそうなんでいいですよ」
アルフさんをバイオン騎士爵邸に届けて早速無人島にベータさん、シグさんを連れて行く。
「やっはー!これが無人島!あっ、見たことない木の実がある!」
はしゃぐシグさんはとてもかわいい。そういえばシグさんの年齢聞いてないな。
「ベータさん、シグさんの年齢っていくつなんですか?」
ベータさんは指でを使って5歳であることを伝えてくれた。
「まだ婚約に早いな…そうだ!彼女をケイ君の嫁にすればいいんだ!」
ケイ君は今年で1歳で4歳差、何もおかしくない。ケイ君が成人したら無人島に来てもらったらいいしね。
俺はロリコンじゃないから自分より5歳以上歳が下の奴とは例え側室であろうが結婚しない。
「ねえねえ!ここになってる実なんていう名前?」
シグさん木の上になる実を指差す。
「それはりんごだよ」
俺は氷の刃で木からりんごを切り離し、地面に落ちる前にそのまま器用に皮を剥き食べやすく空中でりんごを切った。
「食べてみな、美味しいよ」
食べやすく切ったりんごを木の皿に乗せてシグさんに渡す。
「はい、ベータさんもどうぞ」
「うんめぇ!」
この場にアルフさんがいたらはしたないとシグさんを叱ると思うがせっかく楽しんでくれてるんだ、暖かい目で見てやろう。
「それは良かったです」
「なあなあ!私に敬語は要らないぞ!伯爵様は私の旦那になったんだ、堂々としてくれ!」
俺は君を嫁にした覚えはないけどね。
正式な許嫁は結局ベータさんになったが、どうもシグさんが納得いかない様子だ。
「本当に伯爵様は、お堅いよな!私をシグ、ベータ姉さんをベータって呼び捨てにしていいんだぜ?そもそもだ、伯爵様が低姿勢なのはイケねぇ!」
なんだかんだ言ってシグっていい奴なんじゃないか?いたずらっ子の範囲を超えてるって聞いたけど今のところはおじさんくさい少女って感じだ。
「ベータ姉さんの通訳は私に任せてくれ!」
なんだよ2人セットにした方が楽なんじゃないか。
「なあ、伯爵様。やっぱり私を正妻にしないか?」
でもどうしてシグはこんなに正妻にこだわるのだろうか?
「ほら、ベータ姉さんじゃ外交向いてないし。その点私なら貴族の常識は知ってるし」
確かに正妻が碌に会話できないのは相当危険な気がする。まったく、ベータとシグの立場が逆だったら良かったのに。
決して姉の立場を奪いたいわけじゃないらしい。姉が内気で、魔眼という一種の病を持っているから守っているんだろう。
「シグは姉思いなんだな」
「おい、恥ずかしくなること言うなよ!」
しかし、何故そんなシグの優しさにアルフさん達が気付かなかったんだろう。
「まあ実際私はいたずらっ子だよ?でも、今は目標のために我慢してんだ」
「そういうことか、目標って?」
「目標は、ベータ姉さんが魔法制御できるようにすること!」
どこまでも姉思いなんだな、羨ましいくらいだ。
「でも、なんで正妻になることが魔法制御に繋がるんだ?」
「伯爵様がすごい魔法使いって聞いてたから、どうにかしてもらおうと思ってて」
「そうか、ベータも苦労してんだもんな。よし!俺もベータの魔法制御ができるまで手伝うぞ!」
こうして俺とシグの間に深い絆ができるのであった。
「ベータ姉さん…りんごが美味いのは分かるけど少しは話に参加してよ」
俺とシグが話している間黙々とりんごを食べていたベータ。まったく、どっちが姉なんだか分からないな。
「りんご美味しい」
「それはもっと前に言えよー」
なんだかんだあったが2人はモリヤマ伯爵邸に住むことになり部屋は、俺の部屋の向かいがベータとシグの相部屋となった。
「無人島にずっと行きたかったんだよ、やっぱり空気が澄んでいていいな!ベータ姉さんには落ち着ける場所が必要だし」
そんだけ、魔眼は精神を蝕むものだった。話だけ聞くと魔眼は最強で最高だけどそんなものが何の代償もなく使えるわけがない。
そう聞くと俺も、魔法が色々使えるが代償があるかもしれない。これからは慎重に魔法を使っていこう。
それにしてもシグはまだ5歳なのに随分と大人っぽいな。
「何度も言うけど伯爵様の前だけ大人っぽく振る舞ってんだからな!」
流石貴族の娘、逞しいな。
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