第18話 トラブルと婚姻

「なんじゃこりゃ!?」


 目が覚めると両サイドに女性陣が眠っていた。右手側にクーカー、左手側にタイン。


「未婚の女性に手を出してしまったのか!?」


 いや、よく見ると2人は布面積が狭い服を着ている。そもそも、14歳のガキにチョメチョメは早すぎる。


 ただでさえ今日は、ベータ様に会いに行くって言うのに朝からこれかよ。まあ2人が楽しそうに笑っているからいいと思うけど。


「責任とってね」


 クーカーがウィンクをする。やらかした、オイナーの部屋と俺の部屋逆にすればよかった。もちろんオイナーは許可しないと思うが。


「あと、タインもよろしく」


「お願いします…」


 2人がいいなら嫁にしてもいいけど、でもなぁ…


「いいけど、2人は俺のこと好きなのか?」


「私はよく分からないけどタインは好きだと思うよ」


 タインは頷いた。マジか、もっと早く告白しておけばよかった。


「そっか、俺も好きだぞ!」


 俺はタインを抱きしめる。


「ちょい!私もいるよ!」


「なんだよ、クーカーも俺のことが好きなんじゃないか?」


 朝から色々あったが、オイナーにはどう話そうか?


「オイナーすまん」


「あ?そりゃ仕方ないだろ」


 仕方ないで済むんだ…


「初恋は実らないって言うしな」


 オイナーも初恋だったんだな。でも、そこまで気にしてなさそうで良かった。


「そのつもりで部屋を隣にしたしな」


 ほぼクーカーとタインの夜這いの手助けをしたようなものじゃんか。なんと息の合ったチームプレイなのだ、俺も混ぜて欲しかったな。


 さて、朝から波乱があったが今日はやらなきゃいけないことがある。まずはアルフ様を迎えに行かないといけない。


「一年ぶりですね。モリヤマ伯爵様」


 デアンヌさんみたいによく話したわけじゃないが世間話程度はしていた仲だったアルフ様。


「伯爵様なんですから様を付けなくていいですよ」


 確かに爵位が上がって、バイオン騎士爵様より上になったから様はいらないな。


「早速ですが、行きましょうアルフさん」


 再会して早々アマゾン侯爵様の所に転移をした。


「転移魔法って本当に便利ですね」


 初めての転移魔法に興奮している様子のアルフさん。そういえば彼女はまだ19歳だったな。まだまだ可愛らしい歳じゃないか。


「ようこそモリヤマ伯爵殿」


 早速アマゾン侯爵様が出迎えてくれる。


「お久しぶりですお父様」


 アルフさんはアマゾン侯爵様に挨拶するとすぐさまどこかに行った。アルフさんは誰に会いに行ったのだろうか?


「では早速、ベータが待っている」


 アルフさんにベータさんの性格を聞いたけどいまいち掴めないまま今に至る、緊張してきた。


 俺はベータさんが待っている部屋に入る。


「お初にお目にかかります。ベータ・アマゾンです」


 青い髪が特徴的で、髪型はクーカーとほぼ同じのポニーテール。見た目は文系な感じがする。見た目がクーカーの2Pカラーで性格がタイン見たいと言うのが初見の印象だ。


「ベータは魔眼を持っている」


 ここで言う魔眼の効果は、使用すると1分先を見切る、加えて魔力を混ぜて使うと加速行動が使えるようになる。もちろん彼女は魔力持ちだ。


 加速魔法を使うと1分間で100回の打撃が可能だそうだ。


「それはすごいですね」


 そんなすごいベータさんに思うことがある。この人、一切動かない、瞬きさえしない。まるで人形のようだ。


「ああ、ベータは常に加速状態だから」


 つまり、魔法制御ができていないらしい。


「魔法制御ができないんじゃなくて、魔眼使いには魔法制御が不可能なんだ」


「おっと、私が長居するのもよくない。あとは若い2人で楽しんでくれ」


 ある意味アルフさんが言っていた『よくわからない』と言う理由が理解できた。2人きりにはなりたくない。


「えっと、ベータさんのご趣味は?」


 モゴモゴ口が動いている、これは頑張って普通の人間の話すスピードを調整しているかららしい。


「ない」


 これ、扱いづらいから俺になすりつけてんじゃないのか?


「そうですかー」


 本当にこんな子と結婚しなきゃいけないのか?しかも正妻ときた。


 趣味を聞いてから沈黙が続くが、少しして騒がしい少女が侵入してきた。


「やっはー!ベータ姉さんは相変わらず静かだな!」


「あの…どなたですか?」


 ベータさんと同じく青髪で、両サイドに三つ編みおさげで元気そうな少女だ。


「私はシグ・アマゾン!なあ、伯爵様、姉さんを嫁にするんじゃなくて私を嫁にしてよ!」


 意外な乱入者、でも、結婚するならシグ様の方がいいな。


「ちょっとシグちゃん!」


「アルフさん!」


 アルフさんも乱入、アルフさんはシグ様を部屋から出そうと必死だった。様子を見るに俺とベータさんの顔合わせを邪魔させないようにしてたみたいだ。アルフさん優しい!


「私を嫁にしてくれよ!無人島に住ませてくれよ!」


 どうやらシグ様の目当ては俺じゃなくて無人島の方みたいだ。潔くて嫌いじゃない。


「アマゾン侯爵様が良いって言うなら無人島に来てもいいですよ」


「伯爵様!それはダメですよ!」


 焦った様子でアルフさんが待ったをかける。


「この子を家に置いたら碌なこと起きないですよ!」


「いたずらっ子?」


「その範囲を超えてます」


 よく分からないが楽しそうじゃないか、うちには自由に出かけるクーカーやタインみたいな静かな子しかいないんだから。構ってくれる子ちょうど欲しかったんだよ。


「なぁ、ベータ姉さん。私に伯爵様を譲ってくれよー」


 ベータ様に申し訳ないけど、個人的にはベータ様よりシグさんを嫁にしたいな。でも見た目が幼いんだよな…


「私はシグに譲ってもいい」


「もう!ベータまでそんなこと言うの!?」


 アルフさんって相当苦労してきたんだな。騒がしい妹と静か過ぎる妹の世話なんて俺はできない。今日だけでアルフさんへの好感度が爆上がりしたのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る