特別2話 サンダー・ガール

 私の名前はクーカー・ライゼン。ライゼン男爵家の長女で『サンダー・ガール』とも呼ばれている。


 私の趣味は技を磨くこと、格闘、剣、弓、槍、魔法全て入学試験で主席を取るほどの技術を身につけた。


 身体が152センチと小さいけど、常に大きなバックを背負い弓、槍を付け、腰に剣を備える重装備で生きてきた。


 いつどんな魔物が出るか分からないし、私は、気まぐれでよく旅をしているからバックも大きい。バックの中には絆創膏などの治療道具と長持ちする食べ物が入っている。


 そんな私も今年で14歳、親からは婚約者相手を紹介される日々を送っている。もう、遊んでいる時間は無いと言われているようなものだ。


 でも、シヨウさんが伯爵となり、領地を得た。私はそれに乗っかる形でシヨウさんの家臣になった。


 ゆくゆくはシヨウさんの側室になれたらいいなと思っている。もっともシヨウさんにその気はないようだけど。


 私もシヨウさんを異性として見た事があまり無いし、女は好きな相手と結婚できる方が珍しい。


 でも、シヨウさんは変わった考えをしていて、この前『俺は1人の女性を愛したい』と言っていた。


 こんな考え方をする人がこの世界にいたんだなと驚いたけれど、そんなシヨウさんに愛される女性は羨ましいと思ってしまった。


『それは…恋ですね』


 ある日、私はシヨウさんに愛される女性は羨ましいと思っているということをタインに言った、するとタインに恋をしているのだと言われてしまった。


 これが恋なのかな?今の私には分からないや。


『今分からなくても、いずれ実感しますよ』


 それにしてもタインは色恋に詳しい気がする、どうしてだろうか?


『お嬢様、既成事実は早めに作りましょう。幸いお館様の許しも出ていますし』


 そうだ、シヨウさんとの婚姻はメリットだらけ。結婚して子供ができたら旅に出るのも許してくれそうだし。


『よし!目指せ側室!』


『そうだ、どうせならタインも側室になる?』


 珍しくタインは頬を赤く染めて動揺した。


『タイン…もしかして』


 つまりそういう事だ。タインは男性に優しくされた経験がないからシヨウさんに恋する気持ちは分かる。


 昔からタインとは上下関係なく話したかった、シヨウさんとの結婚を期にそれを実行したいと思う。シヨウさんと出会えて本当に良かった、


『私なんかがシヨウ様のお嫁にですか…』


『ほら!自分を卑下しない!遠慮せず行こう!』


 そうなると1人になるオイナーさんが可哀想だけど。ごめんね、オイナーさん。


 ある日の晩、モリヤマ伯爵邸のシヨウさん寝室に私とタインは侵入していた。


「何も考えず女性の部屋を隣に作るなんてバカだよね…」


 私は小声でタインに話す。シヨウさんは意外と身に危険が迫っていても気が付かないタイプみたいだ、いつ既成事実が作られるか分からないよ?


 部屋割りについてだが、2回にシヨウさんの部屋がありその下にオイナーさんの部屋、ショさんの隣の部屋に私の部屋、私の部屋の隣にタインの部屋となっている。この部屋割りはオイナーさんが考えたもので、妻じゃなくても貴族に見栄を張るため私たちを隣の部屋にしたとのこと。


「既成事実と言っても添い寝ですけどね…」


 添い寝だが、明らかに下着姿に近い格好だ。布面積は狭いし。よくもまあタインは恥ずかしげもなく着れるものだ。


「ふふ…お嬢様は初心なのですね」


 恥ずかしがる私を見てタインは楽しそうに笑う。何年かぶりにタインが笑っている姿を見た。シヨウさんと暮らせばタインの笑った姿がいっぱい見られるような気がする。


 何も考えず眠ってるシヨウさん、彼を挟む形で横になる私とタイン。


 翌朝、シヨウさんの叫び声で起きた私とタインは顔を見合わせて笑うのだった。

 

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