2章
第17話 卒業後
ついに俺たちは魔法学校を卒業した。
それぞれの進路についてだが、まず俺は領地の発展に力をいれる。オイナー、クーカー、タインは俺の正式な家臣となることになった。
タインに告白する件だがどうも勇気が出ずに行動に移せないまま1年も経ってしまった。意外にも俺たち4人はそれぞれ恋愛に発展せず友達みたいな関係が続いていた。
「なあ、シヨウってどっちが好きなんだ?」
「どっちって?」
「クーカーとタインだよ」
「さあ…?」
どうやらオイナーは未だにクーカーの事が好きらしい、俺も人のこと言えないけど。
「シヨウは伯爵様なわけだが、婚約者は決まったのか?」
伯爵になってから学校ではたくさん求婚されたが全て断っている。名誉と金目当ての奴はお断りだ。
だが、断れないものもある。先日アマゾン侯爵様から連絡があった。アルフ様の妹ベータ様を嫁にしないかと。
アルフ様にベータ様の性格を聞いたが、不思議な性格をしていると言われ、いまいち情報が掴めていない。
それにしても、こんなに求婚されるなんて前世では有り得なかったな。
「実はさ、クーカーがシヨウの事が好きなんじゃないかって最近思ってるんだよ」
「そうなのか?」
初耳だ。
「でも、クーカーは既に婚約者くらいいるんじゃないか?」
「だったら、無人島で暮らさないだろ」
確かにそうだ、相当な理由が無い限り俺に着いていく必要はない。しかも、領地は無人島と来た。クーカーが俺かオイナーに恋していない限りメリットがない。
メリットと言えば、クーカーの実家ライゼン男爵家で俺の方が地位が高い。つまり、俺の家臣になった方が稼げるのだ。
そういえば、クーカーが俺の家臣になるということをライゼン男爵に伝えに行った時に変なことを言われたんだよな。
『うちの娘を嫁に頼む』
その時、誰もいなくてよかったよ。もしオイナーがいたら申し訳なさすぎる。
嫁にもらうとしてもアマゾン侯爵家様のベータ様がいる時点で正妻にはできないしな。
「なぁ、オイナー。お前はクーカーのことが好きで間違いないんだよな?」
「ああ、そうだ」
俺はオイナーの肩を強く叩く。
「だったらもっと頑張れ!俺は本当に好きな人と結婚できないから、お前だけでも…」
ベータ様との婚約はどうしても断れない。何せ無人島開拓の費用など少し援助してもらっているからだ。別に援助を受けなくて余裕があるが、周りと強い関係性を持たなければ貴族としてやっていけない。
前も言ったが俺は豊臣秀吉になりたいんじゃなくて明智光秀になりたいんだ。本当に好きだったタインを忘れて、ベータ様と愛を育もうと思う。
会ったこともない相手と婚約するのは不思議な気持ちになるが、この世界では当たり前だ。本人に了承がなく婚約が決まる場合もある。おそらくベータ様もそんな感じだろう。
あれ?そういえば、貴族階級によって決められた人数妻を持たないといけないんだっけ?子供をたくさん産めば変わらないだろ。
「シヨウよ。お前はベータ様だけを妻にしようとしてるみたいだけど伯爵は最低でも5人妻が必要だぞ?」
オイナーが言うには妻の数が少ないと周りから馬鹿にされるらしい。この世界は爵位も大事だが自、分がどれくらいの女を侍らせることができるかも重要と国王陛下が言っている。
でも、最愛の人を側室なんかにしたくない。タインがデアンヌさんみたいに苦労する様子が思い浮かぶ。
おそらく俺がタインを好きになったのはどこかデアンヌさんに似ていたからなのだろう。
俺は以前から子供好きと言っているが、実は相手は誰でもいいと考えていた。それは前世から同じ考えだった。だから結婚できなかったのだろう。
ある意味本当の恋は未経験だった。中身はもう40歳のおっさんなんだけどね。そうなるとタインが初恋に近い存在となる。初恋は実らないは事実だったんだな。
さて、これ以上過去の事を引きずっても仕方ない来週顔合わせするベータ様が優しい人間であることを願おう。
顔合わせにはアルフ様も着いてくる。バイオン領からライゼン侯爵領は遠いから俺がアルフ様を連れて行く。たまには実家に帰りたいのだろうな。
アルフ様は今年で19歳、ベータ様はアルフ様の腹違いの妹で15歳、俺の一歳歳上となる。姉さん女房と言いたいが一歳しか違わないんだよな。
そうだ、俺は昔から夢があった。それは、妻のことを『カミさん』と呼ぶということ、これは、前世父が会社の同僚に妻のことを話す時使う妻の呼び方だ。
『うちのカミさんの作る料理は美味いんだぜ』
見たいな感じに使う。かっこいいでしょ?
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