第13話 魔法指導
「君がこの魔力の元か」
50代くらいのおじさんが突然話しかけて来た。ところどころ白髪混じりの汚いおっさん。服装も魔法使いらしい黒布装備。
「俺の名前はビルダー。王国随一の魔法使いでこの前まで国王陛下の子供の魔法指導をしていたんだ。まあ、その子供は魔法使いじゃないんだがな」
笑いながらビルダーとやらは話す。魔法使いじゃないのに魔法教える意味あるのかな?てかこのおっさん臭えな。
「はぁ、あっ、俺の名前はシヨウです。あのその魔力の元ってクーカーのことじゃないですか?」
俺の隣にいるクーカーを指差す。
「確かに彼女もすごいが、お前からすごい魔力の臭いがぷんぷんするんだ」
魔力の臭いって…あなたの体から漂う異臭なんじゃないのか。
「へぇ、じゃあ俺になんの用があるんですか?」
「いやさ、魔法使い不足でよ。スカウトしに来た」
「あっ、お断りします。ねえクーカーがスカウト受ければ?」
俺は汚いおっさんをクーカーになすりつける。
「お前、クーカーちゃんになすりつけんなや」
オイナーがここぞとばかりクーカーを庇う。
「クーカー君が来てくれるのは嬉しいんだけどよ、やっぱりシヨウ。お前に来て欲しいんだ」
「えー…」
「あの、ビルダー様。私、ビルダー様の指導受けたいです!」
なんとまた余計かことを…俺の周りには余計なことしか言わない奴しかいないのか?
「おう!クーカー君は素直でいいね!シヨウお前はどうする。女に負けて悔しくないか?」
ちっとも悔しくない。俺は男女に優劣をつけるタイプじゃないんでね。
「シヨウさん!一緒にビルダー様の指導受けましょう!」
「しゃあ!そうと決まれば早速特訓だ!」
俺はクーカーに手を引かれながらビルダーさんを追いかけて森にきた。ちなみにオイナーは置いてきぼり。もちろんタインはついてきている。
「まず、シヨウ。お前は複数の属性魔法が使えるのは間違い無いな」
「ええ、使えますが大したことないですよ」
「複数使える時点で大したことなんだよな」
「そうですよシヨウさん。シヨウさんはもっと魔法磨いて王国に役立ってください」
つくづく余計なことしか言わんなこの主席の嬢ちゃんは。この子、戦時中の日本人みたいなこと言うな。お国のためってか?
「そうだぞ、クーカー君の言う通りだ!」
そのクーカーの一言で俺はビルダーさんの魔法指導を受けることになった。それが決まってからはしばらく狩に行けなかった。
ビルダーさんの魔法指導が始まり早1ヶ月経った。俺とクーカーは以前と比べて魔力量と魔法の技術が上がった。俺は火、氷の魔法の他に風、水、土の魔法を覚えさらにクーカーの「ライジングスピア」を使えるようになった。
一方でクーカーは回復魔法を使えるようになった。成長が早い俺たちを見てビルダーさんは満足している様子。
「いやー間に合ってよかった」
そうビルダーさんが呟く。めっちゃ嫌な予感がしてならん。クーカーもそれを感じ取ってるぽい。
「あの、何が間に合ったんですか?」
ビルダーさんの話によると古代一二神獣の内の一つ軍神赤兎馬という魔獣が残り2ヶ月で復活するとのこと。指導で1ヶ月経ったから、残り1ヶ月で復活する。
軍神赤兎馬は魔法でしか倒せないらしく現在魔法使いを国中から集めているがなかなか魔法使いが集まらないらしい。
現在の王国は過去一で魔法使いが枯渇しているらしく軍神赤兎馬を倒せるほどの戦力がなかったが、ビルダーさんが俺の膨大な魔力量を感知して、俺に指導。そして軍神赤兎馬に対抗できる手段ができた。
「まさか俺1人で戦えって言いませんよね?」
「そりゃ手伝いたいけど、俺の魔法じゃシヨウの足を引っ張るだけだぜ?」
元からビルダーさんの魔力は俺より少なかったから対抗できない。
「まあ、援護くらいはするさ」
「私もライジングスピアを飛ばすくらいはするよ」
なんと無責任な。
「まあ報酬もあるし、なんなら王様が爵位をやるとも言っていたぞ」
「報酬ですか…じゃあ金じゃなくてお米が欲しいです。あと、爵位はいりません」
やっぱり俺は日本人なんだな、最近真っ白な白米を食べたいと感じることがまず多くなってきている。
「シヨウは欲をがないな…」
「そうは言いますが、ビルダーさん貴族になって得することあるんですか?」
「嫁がたくさん作れる」
「いらねーよ!」
貴族には決まりがあって騎士爵は嫁が2〜3人、男爵は3〜5人、子爵、伯爵、辺境伯は5〜6人、侯爵、公爵は6人以上の嫁を持たなきゃいけないと言う暗黙のルールがある。
「俺は一人の女性を愛するタイプなのです」
「私そういうの嫌いじゃない!いい考え!」
どうやらクーカーの好感度が上がったようだ。タインの反応は…うん、いまいち。
何度でも言う、豊臣秀吉みたいに貞操観念ガバガバの猿にはなりたくない。俺は真摯な明智光秀にる。
「とにかく、軍神赤兎馬討伐の依頼は受けますよ」
「そうか助かるぜ。今まで俺しか優秀な魔法使いがいなかったが、お前が俺の跡を継ぐんだぞ」
ふむ、ビルダーさんもなかなか苦労したんだな。聞く話によると20年前古代龍を倒したらしい。この人も嫌々古代龍討伐をしたんだろうな。
「俺が死んだら遺骨くらいは拾って下さたいよ?」
「お前…死ぬ気か?」
「そのくらい覚悟しなきゃ軍神討伐なんてできないでしょう」
軍神赤兎馬討伐の報酬としてお米は少し割に合わない気がするが、金の方ももらえると信じよう。珍しい白金貨が欲しいな、使わず部屋に飾りたい。
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