第7話 弓の師匠の結婚

 俺は11歳になった。今日は弓の師匠、ボーロ様の結婚式だ。本来、俺は結婚式に参加できないが弟子であることとブランク男爵家の騎士ということで参加させてもらえている。そのくらい親しくないと参加できないらしい。ちなみに貴族にしては21歳のボーロ様の結婚はかなりの遅めだ。


 貧乏貴族ゆえに結婚資金を貯めるのに時間がかかったのだろうな。


 ボーロ様のお相手は隣に領地を構える、これまた貧乏貴族のストローグ騎士爵家の次女タルク様と結婚する。見た感じすごく美人だった。


 年齢は16歳。今年21歳のボーロ様には丁度いい年齢かもしれない。この世界は男性は18歳成人、女性は16歳成人で少し変わっているが1年もすれば慣れる。


 何故女性が16歳成人かというと女性は早く結婚して後継を産まなければいけないという理由らしい。昔は男女共に18歳成人だったらしい。どうして男性の成人年齢も下げなかったんだろう。やはり、少子高齢化もあるのかな?


 ちなみに長男のシルムン様は子供が5人いる。5人中4人が女の子らしい、最後の1人が後継ぎ。一番下が男の子か、姉様たちにこき使われてないか心配だ。まあ、男尊女卑の世界のようだし大丈夫だろう。


 ボーロ様とお相手のタルク様は意外にも幼馴染だったらしく貴族としては珍しい結婚だ。羨ましい限りだ。


「そうだ、シヨウ君。僕たちの子供を妻にしなよ」


 どうやら俺を王国に出したくないようだ。俺は王国に出ていっぱい稼ぎたいんだけどね。しかも10歳以上離れた子供と結婚したくないよ。俺は歳上歳下5歳差が限界だ。まあ、アルエ様となら喜んで結婚するけど。


「次はアルエの嫁ぎ先を探さねばな」


 どうやら俺じゃアルエ様のお相手は務まらないらしい。まあ実際、俺は今年で39歳だし〜と考えると相手は熟女になるよな。まあ、結婚して子供ができればそれでいい。


「幸い王国騎士団長のバイオンがいるわけだし、バイオンに探してもらうのもアリだな」


「父上、俺はそんなに偉くないですよ…」


 この場で俺はバイオン様に初めて出会った。バイオン様は次男のボーロ様と良く顔が似ていてイケメンだ。今年17歳で来年結婚する予定だ。


「おっ、君がブランク男爵家の騎士シヨウ君だね。兄さん達から聞いてるよ。そうだ!俺1週間休みだから特訓に付き合ってあげるよ!」


 なんと王国騎士団長のバイオン様が直々に槍の使い方を教えてもらえることになった。


 結婚式が終わり次の日、早速バイオン様の特訓だ。まずは槍の基本的な扱い方から始まる。


「うん、シヨウ君は槍の才能あるね。試しに槍に魔法を付与してみよう」


 バイオン様は魔法が使えないが魔法付与の仕方が分かるらしい。


「魔力を槍の先に溜めて突く、これが基本だね。結構単純でしょ?でも魔力量がそれなりにないと難しい技なんだよ」


 槍の先に魔力を溜めると刃の先が赤く燃えは始めた。俺は試しに木に向かい槍を突く、すると木は燃えながら切れた。


「驚いたよ。魔法の使い方うまいね。そうだ、王国の魔法学校に通ってみたらいいんじゃないか?」


「却下する」


 バイオン様の提案にブランク男爵様が意を唱える。まぁ、俺がいないとブランク男爵家の食生活が質素になっちまうよな。


「シヨウよ。お前を養子に迎えたい」


 バイオン様は嫌そうな顔をする。養子か…まあシルムン様達はいい人だし兄弟になるのもそれはそれでいいかも。まあアルエ様が立派に成人するまでは奴隷として生きてもいいかもな。


「わかりました」


 俺がそう返事すると嬉しそうな顔になるブランク男爵様であった。一方でバイオン様は呆れたような表情でため息をついた。


 そんなバイオン様に特訓してもらう日が最後になった。やっぱり王国騎士団長に任命されるだけありかなり有意義な時間を過ごせた。


「シヨウ君、困ったらいつでも相談しに来てほしいな」


 バイオン様は何が言いたいのか今の俺には全く分からないが、頭の中に頼れる師匠の存在がいるということを覚えておこう。(現実逃避)


「シヨウさんがお兄様になるなんて思ってませんでした!」


 アルエ様は俺が義兄になることにすごく嬉しそうな反応を見せてくれる。俺もこんなに可愛い妹ができて嬉しい。


「これからはシヨウ義兄様と呼ばせていただきますね」


 アルエ様は歳が近い兄ができて嬉しいのだろう。


「あ、アルエ様。俺はそろそろ狩に行ってきます!」


 騎士言うなれど俺は騎士らしい仕事をしていない。ただただ狩りをして肉を得るだけ。


 それにブランク男爵様の家族になったが俺は今も小屋で暮らしている。まあ肉は食べられるようになったけど…俺が狩ったから当たり前だな。


 ここでは鳥、猪、兎の肉が取れ、どれも狩り難い動物だ。俺は一回の狩に鳥8羽、猪2匹、兎3羽を狩ることができた。その内鳥1羽、兎1羽をもらうことができた。


 ブランク男爵家の夕食は潤っている。贅沢に鳥を1人1羽食べたらしい。なんか腹立つ。少しは領民に分けろや。


 俺はブランク男爵様に不満を覚えるのだった。おそらくブランク男爵様は狩が上手く、魔法が使える俺を安価で取り扱おうと思っているのだろうな。アルエ様が成人するまでは黙って奴隷をしてやるよ。

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