第4話 脱出せよ!

 無人島生活10年目に入る。俺は糸の魔法の使い方に慣れて、さらに新たに魔法が使えるようになった。


 ガオガオが熊を倒した時に使っていた氷の刃を創り出す魔法を見よう見まねで3年くらいかけて習得した。あとガオガオまでとはいかないが火の魔法も使えるようになった。もっとも指先で小さな火を作る程度しかできないが。


 火の魔法は攻撃としてはまだ使えないが、氷の刃はもちろんのこと、糸の魔法で攻撃もできるようになった。糸の攻撃はあまりにも残忍な技しか思いつかなかったのであまり使わないことにしている。


 さて、10年も経てば海も見つかる。俺は今日、この無人島を出る。俺は筏に乗り櫂で水を掻く。


 もう何時間経ったのだろうか、元にいた無人島が見えなくなったくらい進んだのに新たな島が見つからない。このままじゃ迷ってしまうため無人島に戻った。


 俺は後日再挑戦するため筏の拡張を始める。おそらく無人島を出て新たな島に行くには数日かかると思う、5日間程度の食料を積めるような筏を作る。


 そして2回目の挑戦に挑んだが、また失敗。前回は日数と食料についてだが、まずこれは予想不可能だから適当に食料を積む。さらに新たな問題は海で迷ってしまうこと。下手したら無人島に戻れなくなってしまう。


 よく考えればわかるはずの当たり前の問題に気が付けないほどに焦っている。今はガオガオが一緒にいてくれるが人間みたいにそう長生きできるわけでもない。


 3回目の挑戦、俺はもう考えるのはやめた。5日分の食料を筏に積み、ガオガオと共に無人島を出た。俺は海の流れに身を任せることにしたのだ。


 だんだん無人島が小さくなって見えないほどに距離は離れて行く。念のため無人島の木に糸魔法の糸を括り付けて戻れるようにしたから安心だ。


 気がつけば日が暮れて、そんな時を3日も過ごしていた。そんな時、途中で海の流れが変わった。それからは櫂を使わず海の流れに任せることにした。


 そして海に流されるまま2日、無人島を出て5日経った。遂に食料が尽きる。俺は無人島に戻る場合のことを想定していなかった。どうにかして島を探すしかない、それじゃなきゃ死あるのみ。


 ガオガオも大分疲れているようだ。それにしてもガオガオも老けたな。寿命が近いのかもしれないな。


 突如荒波が押し寄せてきた。俺とガオガオは荒波に呑み込まれ筏は水没、そのまま気を失うのであった。


「ああ、俺死ぬのか」


 俺の38年の人生、無人島10年の人生。俺の大好きな子供を作ることが出来ず、未練を残してこの世を去る。非常に残念だ。

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