第3話 魔法だけでもあると生活は豊かになる
この地に降り立ちかれこれ5年になる。俺は5歳になり、狼のガオガオも立派に成長して大人になっていた。
5年経っても人が見つからない、ここは無人島のようだ。動物は何回か見つけるがそれも少ない。
5歳になって気がついたことがある、それはこの世界に魔法が存在することだ。
ある日、数年ぶりに熊と遭遇した。もちろん前と同じように俺には熊を倒せるような力はない。たが、ガオガオは違った5年前より勇ましい姿を見せてくれる。
ガオガオと熊は対峙する。側から見れば大きさと力が強い熊に軍配が上がると思うが俺にはそうは見えなかった。
ガオガオは雄叫びを上げると熊に攻撃を始める。だがガオガオは唯一の攻撃手段である噛み付く攻撃をしない。ガオガオは熊の周りを走る。
熊はそれほど頭が良くないのか目を回し混乱し始めた。それと同時にガオガオは目の前に氷の刃を一本作り出し熊に突き刺した。熊は死んだ。
見事であった。俺はガオガオを褒めた。ガオガオは嬉しそうに尻尾を振っている。俺も魔法を使いたいな、ダメ元で特訓してみよう。
さて、あの熊の死骸はどうするか。ガオガオは熊食べたい!見たいな目で俺を見てくる。前世でも熊を使った料理はあったが獣臭くてとても焼くだけで解決できる物じゃない、あと火がない。
俺たちは日が暮れるのと同時に寝て夜が明ける時間に起きていた。この森は寒くないし火なんて必要がなかった。
でも果物に飽きていたのも事実。ガオガオは火がないことに悩んでいる俺を見て、小さな枝を集め出した。その様子を俺は眺める。
器用に折るとパキパキ音が鳴るほどに乾いた枝を集めて置く。ある程度集まったら次にガオガオは口から火を吹いた。
小さな火種ではあったが燃えやすい木の枝がたくさんあるから十分だ。俺は再びガオガオを褒めちぎってやった。
この後は俺の仕事だ。先に石の刃で熊の血を抜く、大量の血が噴き出し俺の体が大胆に血でよごれた。服を着てなくてよかった。ちなみにこの5年衣服を着用してこなかった。幸い冬は来なかったし。
次は石の刃で熊の皮を剥ぐ、こいつで衣服を作ろう。この前作った木の桶の水に熊の皮を浸ける。
かれこれ5時間が経過した。一人で巨大な熊を解体した。さて、調理をしよう。
石の刃は切れ味が悪いため雑な切り方になるが熊の肉をぶつ切りをして、これまた木の桶に浸けて血を洗い落とす。
そしてそのまま焼いて食べる。
「うん、獣臭い。でも肉を摂らなきゃ強くなれん、だろ?ガオガオ」
一方でガオガオは美味しそうに焼かれた熊の肉を食べていた。生肉より焼いた肉の方が好きなようだ。
後日、俺は熊の肉を使い服を作る。縫うための糸と針がない、熊の手を切り腕を通す。熊の頭をフードにして、下半身もズボンにし、鋭い爪は武器として使うことにした。
でも、やっぱり皮同士をくっ付ける糸の代わりになるものが欲しい。このままでは着ることはできない。
俺は試しにガオガオに魔法で皮をくっ付けられないか聞いてみたが顔を横に振る。
やっぱりダメか。俺が諦めかけた時俺の手の指から糸が伸びて皮と皮を繋ぐ。
「魔法!…なのか?」
これは魔法なのか分からない。だがすごくありがたい。
数時間後、立派な熊のフード付きパーカーとズボン、あと熊の足を使い靴も作った。本来なら皮なので硬い着心地になるはずなのだが、すごく柔らかい生地になっていた。これも魔法の力なのかもしれない。
それにしても俺の手先は器用だな、魔法の力もあるのかもしれないが。
もしかしたら俺、新人類の先祖になるかもしれない。もっとも子を成すための女性が見つからないから無理だが。
でも、この無人島を出ると村とかが見つかるかもしれない。俺は木で筏と櫂を作ることにした。
「これで無人島から出られる!」
俺は川に筏を浮かべ、川の流れに任せて海に降ることにしたが失敗した。川に筏がはまって動かない。横着せず海を探そう。
早くこの無人島から出たいな。
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