土曜日の朝

目を覚ますと朝6時だった。土曜日の朝早くに起きることなんて半年ぶりだ。朝早くに起きるどころか昼過ぎに起きることばかりだった。晴天という訳でもない、「僕は朝六時の空だよ」とでも言いたげなぼんやりとした空だった。どうにもスマホをいじることが勿体なく感じて散歩に行くことにした。行き先を考えているわけもなかったため川沿いを歩くことにした。コンビニでサンドイッチとホットカフェラテを買った。飲みながら歩いていると制服姿の高校生を見かけた。部活にでも行くのだろうか。半年前までは高校生だったなんて嘘のように感じた。休日の朝6時に学校に向かっている高校生に無限の可能性を感じる。本格的に高校生活を振り返りそうになったが、振り返ることはできなかった。振り返る思い出がないだけなのだが。想像以上の距離に対して怯まなかったのは土曜日の朝だからなのかもしれない。歩き進めているとホームレスが横たわっていた。layだっけ。lieだっけ。すでに受験勉強の知識を忘れ始めていることにショックを受けながら、歩き進めていく。ふと昔読んだ小説の記憶が浮かんできた。街のおっさんが10歳を過ぎた少年たちに対して、キリスト教の告解を真似た儀式をやろうとするというものだった。この場面を強く覚えているのは中学時代のせいだろう。車道に石を起き、タイヤに弾かれるのを楽しむという行為をして、学級会議の対象になった友達がクラス全体に向けて謝っていた。宗教っぽいな、なんてませた事を思っていたのを覚えている。その時は行為の歪さに対して感じたのだと思っていた。今思うと、神に正直に告白して許してもらい今後に務める告解という行為の神が、謝られる側のクラスメイトに置き換わっていたからなのだと思う。友達からの謝罪を当たり前のように受け止め、当たり前のように許したということは怒りを感じていたのだと思う。その怒りの原因が全くわからない。ふと、カップに口をつけるとほとんど入っていなかった。階段に腰を下ろし、サンドイッチのフィルムを剥がしてみたが全く食欲がない。土曜日の朝6時というだけで何でもできる気がしたが、いつもと何ら変わりのない自分の体が愛おしく感じる。

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虚言癖 @kankurou1016

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