つつじの木の下に

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 こどもの時に不思議に思った話です。

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 二人で日かげを選んで歩いていた時、まこちゃんがふらりとつつじの木の方へ近付いて行きました。まこちゃんはつつじの木のてっぺんに手を伸ばすと、両手で何かを大切そうに包み込みました。

「なあに、それ。」

 わたしはまこちゃんの肩ごしに、手の中をのぞき込みました。手のひらの上に転がっていたのは、せみの幼虫でした。あめ色のからのすきまから、うすきみどりの背中が見えています。ちゃんと、ふかできなかった幼虫なのだなと思いました。

「朝、ありに運ばれているのを見つけたの。その時はまだ少し動いていたから、木に登らせたらきちんとふかできるかなって、思ったの。」

 まこちゃんは少し悲しそうに見えました。

「おはかを作るね。」

 まこちゃんはそう言って、つつじの木の下にしゃがみこむと、近くにあった石で地面を掘り始めました。土がかたくて、なかなか穴が広がりません。小さくできたくぼみに、せみの幼虫を置いて土をかぶせましたが、幼虫の顔が見えていました。まこちゃんは、幼虫の顔の上に、穴を掘るのに使った石を起きました。

「待たせてごめんね。」

 まこちゃんはわたしに向かって、首を傾げました。

「ううん。」

 わたしたちはまた、歩き始めました。

 わたしは、こっそりせみの幼虫のおはかを振り返りました。とても、かわいそうだと思ったからです。せっかく見つけたせみの幼虫を、とても高いところから横取りされてしまった、ありたちがかわいそうだと思いました。

 どうして、まこちゃんはそんな酷いことをしたのだろうと、とても不思議でした。

 それから、せっかく空を目指して外に出たせみの幼虫を、また土の中に戻してしまうのはなんでだろうと思いました。空を飛べなかったけれど、きっと、空の見える明るいところにいたほうが嬉しいのではないかと思ったからです。

 でも、わたしは思ったことの全部をまこちゃんには言いませんでした。まこちゃんが一生けん命になっているのが、とても可愛かったからです。まこちゃんはいつも先生たちや年上のお姉さんお兄さんに褒められています。可愛くて、みんなから褒められるまこちゃんがすることはきっと正しいことなのだろうと思いました。

 正しくて、優しいまこちゃんと違って、わたしはへんな子どもだそうです。お母さんは、わたしを怒るとき、「おかしい。」と言います。わたしはふつうとはちがうみたいです。だから、ふつうじゃないわたしは正しくないのだと思います。さっき、せみの幼虫にたいして考えたことも、お母さんに言えば怒られてしまうでしょう。だから、だまって、まこちゃんの後ろを見ているだけにしました。

 わたしはまこちゃんが大好きです。優しいところも、明るいところも、みんな大好きです。今日はまこちゃんといっしょに帰れたのが嬉しくて、家に着いた頃には、せみの幼虫のことは忘れてしまっていました。

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