第17話:エピローグ
長野県のスキー場レベルの冬が終わり、季節は春。そこかしこで冬眠から目覚めた魔獣が咆哮をあげてはオーク達に狩られてゆきます。
冬の間ヤルことがなかった啓蒙されたオーク達は、冬の間ひたすらにヤルことをヤッたためにオーク村はヤッた結果に溢れかえっていました。
オークの妊娠期間は3ヶ月。その3倍の妊娠期間の人間ですら、出産後は骨がスカスカになったりします。
本来オークの苗床は1度限りの使い捨てでしたが人間リサイクル政策を強行、母体を守るべくスモウの新弟子を育てる要領で母体の肥育にはげんだ結果、ぽっちゃり系オーク妻が大量生産されました。
鍛冶屋の未亡人などは自慢のシックスパックがお肉に埋もれたことに悲嘆していましたが、スラム出身の女性達にはおおむね好評で、お腹周りのたぷっとした余剰カロリーに喜んでいましたね。
キリ◯マ親方も言っていました。チャンコを食いお腹がいっぱいになったと感じたら、さらに追加でもう一皿食う。そうすれば立派な力士になれると……痛い痛い、殴らないで下さい族長ハーレムズ。
ちなみに族長さんはちょっと脂を巻いたもちっとした女性が好みみたいでこちらも好評でした。
そうそう以前、オークの繁殖にはメンデルの法則が仕事をしていないと述べましたが、今回もメンデルさんやダーウィンさんは職場放棄です。
「この春は、50を超えるオークが産まれましたよ先生」
「やはり啓蒙ですかね?」
「……例年通りならオークは10体程度のはずなので……その影響も考慮する必要があるかと。
ただ単純に十分な量の食料を摂取した結果とも考えられますが、苗床を潰して実験すれば啓蒙を否定しかねませんので……悩みどころです」
「なるほど、食事量も変わりましたからねえ……」
冬の間に丸く肥え太った球体オークのマルコが微妙な表情を浮かべています。
最初に出会ったころはピンク色の小玉でしたが、現在のマルコは朱色の大玉。最近は四天王だとか中ボスな貫禄がついています。
ここのオークには人間のように、ライバルの足を引っ張りこき下ろして相対的に自分をageるといったなさけない文化はありません。人間ならばおべっかゴマすりお追従も実力の内ですが、オークは純粋な実力だけをシンプルに評価します。
マルコはかなりの実力者になりましたね。独立とかしないんでしょうか?
「通常、近くに人間の都市でもないと食料不足に悩むことになるのですが、先生のおかげで保存食が発達しましたので当面は問題ありません」
「それはマルコさん達の成果ですよ。皮革も布も鍛冶も軌道に乗りましたし、後はきちんと技術を継承していけば安泰です」
「スラム民によって放置された畑も再開し、作付けも順調です。くやしいですが、やはり農耕は必須ですね先生」
私がこの場所でやるべきことはもう無さげですねえ……
「と言うわけで旅に出つつ、人間の都市を目指そうと思いますよオババさん」
「アンタ、人間の都市を見たがってたからねえ。でもねマダナイ、この辺には人間はいないんだよ?」
「西のトロール領を抜けて南下、海をめざします。マグマがまだ冷えてくれませんから……」
南の溶岩の海、まだぐつらぐつら沸騰しています。西か東を廻って迂回するしか道が無いんですよ。
「人間どもはほとんど全ての種族と敵対しているからね、オークだと人間の都市には入れないよ?」
「オババさん、私を見てください」
「…?」
「ほら、私は族長さんやオークの皆さんのようにツノが生えていません、豚獣人で押し通しますよ」
そう、私にはツノが無いんですよね。
「あー……それなんだがねぇ……」
以下、オババの解説まとめ
・ここのオーク氏族はツノが生えており『豚鬼族』だの『深樹海オーク』だの『シン・フォレストオーク』などと呼ばれ区別されていた(過去形)
・調べた者はいないが、おそらく氏族に鬼神様の加護か何かが憑いておりそれがツノに、その鬼神成分だけよその子より強い
・鬼神成分の無い普通のオークにはツノが無い ← ココ重要!
「……………………豚獣人として推して参りますよ!」
「ほどほどにしなよ」
ボリボリボリボリ……
バリッ…バキッ…ブォリブォリブォリ…
パキッ…ポリポリポリポリ……
パチッ……ジュワワワァ……
ボリボリボリボリボリボリボリボリ…
春の山菜、タケノコである。
私、ボルタン、オペラ、メリーの4人が積み上げた巨大タケノコ巨大ハチクを囲んで山菜パーティーシダ植物の若芽の素揚げも添えて…である。
巨大タケノコは直径1メートルほど、ハチクにしても数十センチ。ワラビや、なんだろう? ワラビににたフワフワのついてるやつの素揚げも絶品である。でかいけど。
生でマルカジリ、塩を振ってマルカジリ、素揚げにして塩をつけてマルカジリ……これがデカルチャー……
なお素揚げには直径3メートルほどの大鍋を使用している。素材の大きさに合わせた結果だ。
「まあそんなわけで私は西のトロール領を越えて南下し、人間の都市を目指そうと思います」
ポリポリポリポリとハチクを齧っていたオペラが一瞬固まり、再びポリポリポリポリとハチクを齧ります。
「タイマンでトロールを撲殺出来ない者は連れていけません…」
「ブヒッ?」
「ああ、体長12メートルなボルタンはお留守番ですね、大きくなりすぎました。村を守って下さい」
「ブッフン…」
しょーがねえな、みたいな雰囲気のボルタンが巨大タケノコを丸呑みします。
タケノコを食べ終わるといよいよ本命。ワラビなどを素揚げしていたのは前フリです。
そう、体長30センチほどの……バンブーワーム!!
たぶん180度ほどに熱せられた鍋の油にバンブーワームを投下します。
パジュン! バチバチとはじけ飛ぶラード! のたうちまわるバンブーワーム!! 料理は闘いですよ!
火の通ったバンブーワームを竹の皮の上で油をきりつつ塩を振ります。
いただきます。
「あれ? 美味いぜご主人!」
「あれぇ? 美味しいでふ☆彡」
「ブギッ!」
竹由来の香り、油揚げにしたことで甘みの増した肉、ホクホクポテトのごとき食感にマッチしたゴブリン塩……
そういえば、面倒くさいので今までスルーしてきましたが、このゴブリン塩、美味しいんですよね。確認したいようなしたくないような……ま、今はバンブーワームを食べましょう。
モクモクモクモクモクモクモクモク…
モッシャモッシャ…
バチュン! ジュワワワァ……
ゴフッブフウッ…ガツガツ…
ホクホクワーム美味しい…
素材が尽きるまで延々と揚げては食い揚げては食いました。
兄弟達とはしばしの、場合によっては『延々の別れ』だと何度もその場で別れ続けることになると小一時間────
なかなか有意義な晩餐でしたが、オペラとメリーは終始、おとなしかったですねぇ……まあ、やむなし。
「行くのかマダナイ?」
族長以下、皆が見送りに来てくれました。この世界に来てからの知り合いがズラリと並んでいます。
私の感性は前世からかなり擦り切れていますが、ちょっとクルものがありました。表情にはだしませんよ?
「ええ、章の終わりに電柱の影から『ウフフ』と笑うぼきゅの考えた悪のそしきのおんなかんぶとか、章が変わったとたん『うわなんだあのてきはーこうげきがつうじないぞー』などとほざく最強タグつきのなろーしゅや『すたんぴーどだ学園を守ってくれ』などと寝言をほざく学園長を殴るには人間の領域に──」
「落ち着きなマダナイ、アンタの言う事は時々認識出来ないんだよ!」
おっと、テンションの上がったヲタクのように早口になってしまいました。これはきっとアレです、精神が身体に引っ張られたという状態ですね、つるかめつるかめ。
「では行きます、族長や皆に、少しだけ私の祝福を…」
ぺかー…と皆が光りました。
「ティス! 今のはどうなる?!」
なぜか族長さんが慌てています。
「ボウヤ落ち着きな! セーフ! ギリギリセーフだよ!」
オババも慌てています。ここにいる間、地味に客将扱いでハブられていた意趣返しですね。
「む? 足りませんでしたか? では全力で──」
「やーめーてぇーーーっ!!」
この世界、神様が普通にその辺を歩き回っています。
下級のドバト(天使)が一羽堕ちてきた程度で壊れる世界の話も生前よく見ましたが、この星を創造した星神様は地表で神々がタイマンはっても壊れない星を創造したそうです。
そんな話を族長氏族の氏神のオババから聞きました。
では答え合わせです。
・この星の被造物はほぼ全て星神様由来の魔力を持っている。
→ 私に魔力はない
・族長氏族は鬼神様にも愛されツノがある。
→ 私にツノはない
・創造神に創造された人種は星神様由来の魔力を持たない
→ 私は人間ではない
・ためしに軽く祝福したらぺかーっと光った
「つまり、私が豚神ですか?」
「たぶん獣神様系列の神格だと思うんだがねぇ…。いつ気づいたんだい?」
「結構ヒントもありましたからね。それで、なんとなく私をハブっていた理由は?」
「どんな荒神様かわからないからね。付き合ってみれば、伝説の怠惰の魔王みたいな野良神様だったわけだがねぇ…」
フム、まあわかりますね。……伝説の怠惰の魔王ってなんでしょうか? あ、鬼神のやつ私に祝福をよこしてませんね、殴りに行きますか?
「やめたげてー! たぶんアンタ鬼神様より強いからーーっ!」
キャラ崩壊するオババをいじるのも楽しいですが、そろそろ出立しますか。
私が神格持ちなら選択肢が拡がります。王権神授の国王など格下、神の代理の勇者だの聖女なども格下、殴り放題ですよ!
水戸黄門、好きでしたよ……人生ラクアりゃ雲あるさ…
「では行きます。族長さん、オーク帝国を建国してオババ神殿を建てたら、豚神の小ぢんまりした社もとなりに建てて下さいね」
「う、ウム…」
私が西に歩を進めるとなじみの気配が走り寄って来ます。
「ご主人ーー!」
「マダナイ様ーー!☆彡」
いつもの馬と羊ですね。次は鹿を仲間にすべきかとアタマの隅にメモをとりました。
「寄生虫ヒロインを飼うつもりはありませんよ?」
押し黙った二人のアタマに手を乗せます。今なら、アレが出来る気がしたので……
アレですよ、ナメク人最長老の……
ズモモモ……と馬と羊から何かが、『存在力』が(※ 潜在能力ではありません)引きずり出されます。
『ミギャーーーーーーー!!』
馬と羊は、全身の穴という穴から内容物をぶちまけのたうちまわり跳ね回りながら気を失いました。
「あ、あれ? またぼく何かやっちゃいました?」
(第一部? 完)
『第二部:予告編』
ソロで歩を進めるマダナイ
集まる新たな仲間たち!
「私は愛の妖精、フォー・LOWCOST・ホワイト!」
「私は勇気の妖精、ジェイ・NOSIDE・ブラック!」
「人間さんなんかイラナイのです」
「商人さんなんか必要ないのです」
『2人は、鮮血の──
(たぶん続かないwww)
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