第12話 母
室内で眼鏡をかけたソフィが切った木の実を入れ、すり鉢で棒を使い、すりつぶしていた。レオンは机に向かい、紙に記入をしている。
「姉さん、今月はこんだけ儲けがあるよ」「もう少し、儲けたかったわね、やっぱり、あれは奮発しすぎたかなぁ」
ソフィは蜘蛛にあげた木の実の事を思い出していた。
石造りの見張りに二人、甲冑を纏った門兵が門兵が門の前で立って、前を見ていると大量の何かが接近してくるのを発見した。
「何だあれは?」
「蜘蛛?」
どんどん近づいてくるとそれは小動物程度の大きさの大量の蜘蛛だった。
「やばい」
「あれだけの蜘蛛が来たら、町は壊滅する」門兵は非常ベルを鳴らし、スピーカーを掴んだ。
サイレンが聞こえてくる、「姉さん!」レオンは叫ぶとソフィは外に飛び出した。「特別任務、町に大量の蜘蛛が接近、動けるものは直ちに町の子蜘蛛をしてください!」
家で防具を装着する勇者、風呂から飛び出す女性。
ソフィは翼を生やした白馬を駆り出した。
ここはキア国の石造り堅牢な城門の前。多数の重厚な鎧を着こんだ隊員とローブを着た隊員が6たい4の割合でそれぞれの列の後ろに数人薄い鎧を装着した隊員が整列し、直立不動で待機している。静謐を破るように壇上の上に装飾がついた鎧を着こんだ中年男性がガシャガシャと金属音を鳴らしながら登場した。
「皆、下の町では蜘蛛が大量に発生した」中年男性がいうとざわざわとうわさ話が聞こえる。
「皆、静粛に」
緑の髪の黒いローブを着た女性が声を上げる。
「総隊長、我が国防軍は救援に行かないのでしょうか?」
総隊長は声のした方を見る。
「ここの軍隊を出すと指定野生生物からの襲撃から市民を守れなくなる。よって、町が突破されるまで我が軍はここで待機する」
「見殺しにするのでありますか?前回は救援に向かったと聞いております」
「前回の指定野生生物は浮遊しているため、応援に向かったが今回は事情が異なる。よって、待機を命ずる」
「しかし」
「この中で、町から推薦されてきたものは手をあげなさい」
半数以上の手が上がった。
「ここにはあらゆる町から面接官に推薦されてきたものが大勢いる。一番隊隊長は何処の出身かな?」
「私はルバ町から推薦されて来ました」
「前のダナ町で彼らの戦いぶりはどうでしたか?」
「まさしく勇猛果敢、ここに推薦したい人物が数人おりました。」
「彼らでは不足があるか?」
「彼らの腕では蜘蛛ごときに手こずるとは思いません。私たちが到着する前に終わっている可能性が高いです」
「以上、無駄骨は折りたくない。私たちは彼らの武運を祈ろう」
門の外にいる人物は走り出した。
重厚な鎧をまとっている騎士たちはふっと笑った。
「間者でしょうか?」
ローブを纏った女性が答える。
「いいえ、ただの野次馬かと思います。ですが、あの魔力はとても強力で、最近、感じたことがあります。成長すればスカウトの目に留まるかと」
「強力なだけでは我が国防軍は務まらないからな。それを気づくことができればいいのだが、所で時間があるな。しりとりをしよう。」
「前回は一番隊からだったな。今回は二番隊からだ。最後に「ん」を言った部隊と制限時間内に答えられなかった部隊は腕立て伏せ30回」
「では、始め」
2番隊の先頭が答える「誠実の2番隊」横に進む「冗談きついぜ、イービルアイ」横に進む「またいかよ、イソギンチャク」横に進む「被っても腕立て伏せだから気を付けろよ。狂い草」横に進む「声でけえぞ4番隊。サウスタワー」
ソフィはペガサスにまたがている。並木道を通ると後ろから羽音が聞こえるソフィはペガサスを止めて、首筋を押した。ペガサスは頭を下げて、自身は鞍にへばりついた。自分の首があった場所を何かが通過する。そして、それはしばらく進んだ場所で停止した。
「あんなところで不自然に止まっている」
クワガタは羽をばたつかせたまま、動かなかった。クワガタの上から黒い影が忍び寄る。手で羽を掴むと後ろから嚙み付き、クワガタの羽は止まった。
「まだまだ、クワガタ程度じゃ足りないわ。あら」クワガタを捕食した生物はソフィに気づいた。
「また、会ったわね」アラネだった。
「こんなところで何をしてるんですか」
「見ての通り、狩りよ。クリスに嵌められてね。馬鹿だと思って油断してたわ」
アラネは寂しげな表情を浮かべる
「大事な用事ができたの、町に行かなきゃいけないけど、出産で体力がなくてね」
「そのペガサス一匹くれないかしら」
「お断りします」
「じゃあ、貴方ね」
「それもお断りします。」
「折角、選択肢をあげたのに、あれも嫌だ、これも嫌だなんて、贅沢ね。私たちは選り好みする余裕なんてなかったわ。まずいものでも食べるしかなかった」
「ここはジャングルではないので」
「ふっ」
アラネは失笑すると糸をソフィの後ろに糸を吐いた。糸は木にかかり、ソフィを包囲した。
前後はアラネの糸、左右は木
「貴方は法律で知的生物である、私を攻撃することはできないわね、一方的に攻撃するなんて、弱いものいじめみたいで気が引けるけど、許してちょうだい」
下に降りてくるアラネ、ソフィは森に入り込んだ。ソフィの動きが止まる。
「前後がだめなら、左右に行くわよね?でも、ごめんなさい、そこには罠を仕掛けていたの」森の中には糸が張り巡らされていた。
「貴方なら気づくと思ったけど、焦ってたのね。でも、油断が命取りよ」
「いいえ、虫たちの死骸でそれには気づいていました。」
「では、何で」
「ここには凶器があります」
ソフィは杖を構える。緑の紋章が浮かび上がる。
「sprenge es(吹き荒れろ)」風が吹き、葉を飛ばした。その葉が糸を切り裂いた。
地面に落ちるアラネ
馬は立ち上がり、ソフィを乗せた
「体力を使いますがお願いします。」
ペガサスは翼を羽ばたかせ、飛翔した。
「待って!」アラネの悲痛な声が響き渡る。
「後、一口だけでいいの。食させて」
「何故ですか」
「理由はすぐに分かる、下の子達も町からいなくなるわ、悪い条件じゃないはずよ」
「信じろというのですか」
アラネは真っすぐな瞳でソフィを見つめる
「ええ、頼むわ」
ソフィは地上に降りた。左肩のローブを捲る。アラネは噛みついた。肩を抑えうずくまるソフィ
「ありがとうございました。」
アラネは優雅にお辞儀をした。
「お礼と言っては何だけど、対価をあげるわ」アラネは糸を吐き出した。
「アラクネの糸、決してその痛みに支払うべき対価には劣らないはずよ」
アラネは町の方を向くと奇声を発した。
町では剣士が蜘蛛を切り裂き、格闘家は向かってくる蜘蛛を蹴り飛ばし、魔法士は杖から炎を放っていた。
急に全ての蜘蛛は何かに気づいたように相手に背を向けて走り出した。街の住人たちが呆然としていると数分後には蜘蛛は居なくなった。
剣士が呟いた「どういうことだ」
アラネは声を発し終えるとソフィを見つめる。
「ここを蜘蛛が通るんだけど、何もせず通してほしいの、彼らも手出しをしなければ、何もしないはずよ」
「何かしたらどうするんですか?」
「その時は好きにしていいわ」
アラネは悩みが解決したような清々しい顔をしていた。
「じゃあね」
アラネはそう言うとソフィの横を通り過ぎた。
町では鎧を装着した冒険者が作務衣を着た老人の肩を担ぎ、老人が鎧を見つめてほほ笑んだ。
「ドワーフの落ちこぼれの物でも役に立つの」
ローブを纏った女性が耳の長い色白の金髪の女性を介抱していた。
「まさか、人間にエルフが助けられるなんてね。故郷の奴らが見たらどういうかしら」
ソフィはペガサスにまたがって、地上の様子を見ていた。肩に包帯を巻いていて、そこは赤く滲んでいた。
蜘蛛の群れが並木道を通り過ぎた。ソフィは後を追う。
「どこに行こうとしているの?」
昼間のジャングルの集合した場所にアラネは居た。アラネの前に到着すると蜘蛛たちは立ちどまった。
「来たわね、さあ、これから始まる地獄へ旅立つ貴方たちへ最初で最後の贈り物よ」
アラネは糸を蜘蛛たちの前に出した。すると蜘蛛たちはアラネに向かって行った。
一匹がアラネの足に食いつく
「そうよ、私を食しなさい」
一斉にアラネに食いついた。
手を食おうとするとアラネは手で振りほどく。
「暴れるときはどうするの?」
蜘蛛は糸を吐き、アラネを搦める。
「そうね、糸をださないと獲物に逃げられるわよ、ここからは自分たちの力だけで生きていかなきゃならいの、そのための力を手に入れるために私で獲物の捕食の仕方を覚えなさい」
アラネの体全体に蜘蛛たちが覆いかぶさると、しばらくして、ジャングルの中に入って行った。アラネが居た場所には黒いドレスだけが残されていた。
ドレスの近くに降り立ったソフィはドレスを掴む。
「子供のために命を懸ける。これが母親の務めですか」
道具屋の材料調達 郷新平 @goshimpei
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