第11話 クリスとレイスの計画
黒と黄色のドレスを纏った女性がロッジの扉を開けると中は暗くテーブルの上に空の酒瓶が大量に置いてあった。テーブルに倒れこんでいる男は女性の姿を見つけると顔を上げた。
「ようアラネ、来たか」
酒臭さに顔を顰めるアラネ。でも、これから行うことに対しては我慢するしか無いと諦めた。
「ひどいですよ、置き去りにするなんて」
アラネはお淑やかに怒る演技をした。
クリスはアラネを睨みつける。
「蜘蛛がそこでくたばる訳ないと思ってたからな」
アラネは目を丸くして、クリスを見つめた。
「知ってたのね」
アラネは演技を止めて、淡々とした口調になる。
「ああ」
アラネは考える。魔物を討伐する勇者が見過ごすなんて、しかも、一晩を過ごすなんて
「何故、私を受け入れたの?」
クリスは顔を顰める。
「虫との情事なんて死ぬ程嫌だったけどな、でも、レイスとの占いで必要だったからな」
「どんな?」
アラネは口早に聞く。
「そんなことより、やることがあるんじゃないのか?」
クリスは面倒な態度を取る。
「何をするか知ってるの?」
「ああ」
「そうね、いい覚悟だわ、惚れそうよ」
「だから、お前は俺に目を付けた」
アラネは呆れたように笑う
「どう、最後にもう一回する?」
クリスは顔を横に振る。
「いいや」
「そう」
アラネは蜘蛛の姿になり、クリスに近づいた。アラネは考える、何か嫌な予感がする。だが、その不安を押し込んで、決行することにした。
アラネを睨むクリス、アラネは腹部をクリスの腹部に近づけるとぐっと押し込んだ。険しい表情を浮かべるアラネ、しばらくするとへたり込んだ。
「私の務めは終わったは、悶え苦しむまでに私をその剣で刺すなり、いたぶるなり好きにしなさい」
「そうしたいのはやまやまだが、俺にも都合があるんでな」
「もうすぐ死ぬというのに何をするというの」
クリスは冷酷な目でアラネを見下ろす。
「レイスは前のドラゴン襲撃の時に家族をベアに襲われたと言ってたな、一目散にドラゴン退治に来たと、違うんだよ。」
アラネはクリスの豹変に戸惑う。
「どういうこと?」
「本当は家族を救う未来を見たんだ、そして、見てしまった。家族のために村を捨てたとぼろくそにこき下ろされ、やがて耐えられなくなり、自害する自分の姿を。その後に村を救いに行く未来をな。そして、村に向かったら、家族は死ぬが英雄と称えられる自分の姿をな。それで決行した。でも、あいつは自分が家族を殺した罪悪感に耐えられなくなった。言ってたぜ、子供がお父さん、何で僕を見捨てたのって枕元に夜な夜な立つんだとさ、それで冒険者らしく戦ったという名声と家族に会うというために今回のゲームに参加したんだ、魔霊樹は栄養を吸い取る代わりに好きな幻覚を見せるという能力があるからな」
「貴方は」
「無論、俺は復讐だ。」
「復讐?」
「知ってるだろう、俺がキースの野郎に寝取られたって、家族のために働いている俺を差し置いて、あんな野郎と浮気しやがって」
「それでキースは確かに消えたわ。」
「礼をいう」
アラネはクリスを見据える。
「この結果を知ってたのね」
クリスは無関心にアラネを見る。
「ああ」
アラネは思う。この男、何を考えている?
「では、貴方に卵を産み付けさせたのはどういうこと?」
クリスはク、ク、ク、と声を押し殺した笑いを浮かべる。
「あのあばずれを始末するためさ、お前が俺に卵を産み付けさせるにはお前にお俺を意識づけさせるのとソフィにあそこから逃げ出させる必要があった」
「なるほどね、それでエイプを一体切り裂いて、逃げ出し、私に恨みを抱かせるためにわざと逃げたと」
「下手をするとお前があそこでエイプどもとやりあって、こっちに来れなくなる可能性があるし、エイプに卵を生みつける可能性があったからな。ソフィの存在は絶対だった。だからあそこにあのメンバーが集まるのは必然だったんだよ」
「それも占い?」
「そうだ」
「じゃあ、卵を産み付けさせたのはどういうこと?」「あいつが関係を持ったのはひとりじゃないかもしれねえ、それでいままで隠し通してたやつは、戦いで生き残ったら、助けるようにしたんだ。実は今回の件であいつが助かるかはあの世に行って会えた時の楽しみにしようかと思ってな」
アラネの顔が青ざめる
「その戦いの相手ってまさか」
クリスはニヤリと貰う。
「そう、お前と俺の子供だ」
アラネは思う。コイツ、冒険者の癖に市民を巻き添えにするというの?
「じゃあな」
そう言うとクリスは勢いよく飛び出した。
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