第9話 謎の来訪者

 折れた木が地面に転がり、石で止まっていて、蔦などが絡みついていた。その木を背あてにして座っているのが2個ある。それは、玉ねぎの形状をしていて、目と口があり手足が生えている生物で頭頂部にあたるところは緑色のものが生えていた。


「ここで願い事をすると叶うらしいぜ」


「本当に?」


左の玉ねぎは頭を指さす。


「ああ、俺は髪の毛を切ってほしいって願うぜ」


右の男は「じゃあ、俺は食料が欲しい」


そう言うと二人は目を瞑る。


 横一閃!!二人から生えている緑の物は刈り取られていた。ドスッと鈍い音がし、横に濃い土が置かれる。目を開ける2人。


 左の玉ねぎは頭上を探る


「おお!!すげぇ、刈り取られてる。しかも、全く痛みを感じなかった。やった奴はプロだぜ」


「こんなとこに腐葉土が置かれている。いかもこいつは高級だ、分かってる奴だ」


 二人は手を叩いて喜んだ。


 玉ねぎの根をポーチに入れるソフィ、ポーチに入れ終えると体勢を崩し、手をついて倒れた。足元を見ていると、木の根があった。両手を見ると手を擦りむいている。辺りを見回し、何もないことを確認するとポーチから濃い緑の葉っぱを取りだした。


 緑の葉っぱを手に擦り付ける。ソフィの顔が歪む。出血が収まったことを確認するとソフィは歩き出した。ソフィの姿を伺う2匹の姿がある。お互いに見つめあい頷いた。


ソフィは木の前に立つそこには頭頂部がはげた猿の顔が彫ってあった。


「ここから先はビッグエイプの縄張りですね」


ソフィは呟くと振り返り、数歩進む。するとそこに白い毛で目が大きく、手足が長い猿が佇んでいる。


「ビッグエイプは縄張りに入りさえしなければ、襲われないはずですが」


 ソフィの背中にドンと何かがぶつかる。振り返るとビッグエイプが立っていた。


ソフィは下がり、二匹の真ん中に立つ。ビッグエイプはソフィを見つめている。「仕方ありませんね」ソフィは寝転がり、ローブをめくり、腹を出した。


 「これは降伏の形です。これで敵意が無いことを示せば、どこかに行くはずです」


 二匹はソフィを見つめている。


「これで行かないとは、、、酒場で見つけた雑誌に載ってた気持ち悪い格好をすれば、呆れて、行くはず、」


 ソフィは足を投げ出し、右人差し指を口に咥え、上目遣いになる。2匹のエイプはお互いに見つめあい、口元がゆがんだ「あれ?もしかして今、失笑をしましたか?」


 一匹のエイプがソフィに素早く近づいた。身構えるソフィをエイプは担いだ。


「なんか、納得がいきませんが、、」


 ソフィは何故、この二匹が去らないのだろうと考えていると何かに思い当たった。


「わかりました。あなた達は雄ですね」


 2匹のエイプは縄張りの中を進んでいった。


 エイプは木に飛び移ったり、走ったりしながら、移動していると、しばらく進み、動きを止めた。エイプたちの前に立ちはだかる物体があった。


 ソフィは体を捩じり、振り返るとそこに木があった。エイプは歩きながら近づく、するとそれはただの木じゃなく。木が何かに絡みついているように見える。さらに近づくと見覚えのある、青を基調としたものに木のようなものが絡みついているのがわかる。近くまで行くとソフィは絶句した。それは魔を宿した木に寄生され、赤い目をしたレイスだった。レイスは一人、呟いてる。  


「目が赤いということは予知を使ったんですか?」


2匹はレイスの前で立ち止まった。「綺麗なニーナに可愛いアンナ、お父さんは名声を守りつつ、お前たちを救うことができたんだ。これからはずっと一緒だよ。どこにも行かない」


 レイスはエイプに気が付いた。「やあ!私の自慢の妻と娘を見てくれ」


 レイスは何もない空間に自慢の家族を紹介するように手を掲げる。エイプはレイスの脇を通り抜けようと歩き出す。そんな二匹をレイスは手を広げて、進行を妨害する。


「よく見てくれよ!自慢の家族を」


 ソフィを担いでいないエイプがレイスに右手でパンチを打ち込んだ。レイスの首は半分避けて、静止した。レイスの脇を通り過ぎるエイプたち、後ろからうなり声が聞こえた。ソフィはレイスの裂けた首が木の繊維で補強されていき、首が元に戻るのを見た。笑っていたレイスの顔がゆがんだ。


「俺の家族を見ないなんて!」


 レイスは2匹のエイプにそれぞれ手を向けたすると手が木に代わり、エイプに向かってくる。2匹は地面に伏せて、木が行くのをやり過ごす。そして走り出した。遠くに見えるレイスにソフィが呟いた「あなたに永遠の眠りが訪れることを」




 走っていたエイプの歩調が歩きに変わった。ソフィは床にゆっくりと降ろされた。周囲を見るとビッグエイプの群れが居た。多数エイプは何かを中心に見守っている。二匹は群れの中に行く。


 あっという声がして、声の方を振り向くとシャーロットとアラネが座っていた。シャーロットは顔を背け、アラネはソフィの顔を見つめていた。


 3匹のエイプがソフィの前に立つ。はげた頭のエイプの左右の脇に二匹が並ぶ。はげた頭のエイプは手招きをして、群れの中に戻っていく。ソフィは後に続いた。


 群れの中に入るとエイプが横たわっており、左肩から右腹部まで鋭利な刃物で切られた傷が一直線に付いていて、苦しんでいた。禿げ頭のエイプはソフィに向き、草を握り、すり合わせる動作をする。ソフィは頷き、ポーチをあさり、糸が付いた針を取り出した。一匹のエイプが前に出ようとすると禿げ頭のエイプが手で静止するジェスチャーをし、エイプは止まった。糸で傷口を縫い付けていくソフィ、縫合が終わるとポーチから濃い緑の草を取り出す。ソフィは倒れているエイプの片手を指さし、押さえつける動作をする。シャーロットはフンと鼻を鳴らし


「わかりっこない」と言った。


 すると4匹のエイプが手足をそれぞれ押さえつけた。シャーロットはありえないという表情で見ていた


「嘘でしょ?エイプが人間の動作を理解したなんて?」アラネはふふっと笑った。ソフィはエイプの傷口に薬草を練りこんでいく。エイプは暴れたが、手足を動かすことはできなかった。傷口全部に薬草を塗り付けたソフィは群れから離れた。


 しばらくすると、エイプは暴れるのを止めた。一匹のエイプと小さいエイプが倒れているエイプの横に立っている。残りのエイプは群れから離れると一匹のエイプがシャーロットの前に立った。シャーロットは警戒する「何なの?」エイプの顔は笑っていた。シャーロットは怯える。ソフィはエイプの様子を見る。


「貴方、杖は持っていますか?」


「落としたわ」


「いいですか、隙を作ります。その隙に逃げますよ。「貴方も」そう言って、ソフィはアラネの方を見る。アラネは眉をひそめた後、怯えた表情で頷いた。ソフィはシャーロットに杖を向ける。シャーロットは身構えた「身体能力向上魔法です。大丈夫です」


「Wallfahrt(巡れ)」と呟き、片方のイヤリングを外し、口づけをする。するとイヤリングは琥珀色に変わった。そして自身に杖を向け、


「Wallfahrt(巡れ)」と呟く。ソフィは石を取り出すと目の前にいる、笑っているエイプの後ろにいるエイプに投げた。当たった。あてられたエイプは振り返ると笑っているエイプの肩を掌で叩いた。振り返ると叩き返した。その隙に3人は走り出す。


 木を飛びながら、移動する3人、後方からガサガサという音が聞こえる。


「もう来たんですか」前方に光が見える。杖から茶色の魔法陣が浮かび上がる「Los(行け)」杖から砂煙が舞い上がると目の前に砂が付着して、浮かび上がった網目状の物が目の前に現れた。警戒の色を表すソフィとシャーロット二人が避けようとしたらアラネがソフィを突き飛ばし、ソフィは網目状の物に搦めとられた。森が明け、光に当たる。シャーロットとアラネは森から生還したシャーロットは怒りを顔に「貴方、なんてことをするんだ」「後輩にプレゼントをね」ガサガサっと音がし、上下、黒のインナーを着用したソフィが現れた。ホッとため息を吐くシャーロット、無表情でソフィを見つめるアラネ「ローブを脱いで脱出したのね」


「あと少し、遅かったら食べられている所でした。送り返しますか?」


「いいえ、自然では食うか食われるか、貴方の方が上手だっただけよあの子も後、一匹でも食べれば変体できるわ。貴方たちでは進化というのかしら、その為に手助けしたのよ」


 ガサガサとジャングルからエイプが現れた。エイプはシャーロットを見つけると向かおうとする身構えるシャーロット、次にアラネを見るがすぐに目を逸らす。


「あら、残念、来たら、食べようかと思ったのに」


 インナー姿のソフィを見つけると笑い、ソフィ近づいた。ソフィは右足を後ろ下げ腰から背がギザギザになっているサバイバルナイフを取り出した。アラネは不思議な顔でソフィを見つめる


「動物に怪我をさせちゃいけないんじゃないの?」


「ナイフや体術が武器と認められるのは勇者や武闘家です。しかも私の腕ではこのエイプに傷一つ与えられませんよ」そう言いながら、ソフィは回り込んだ。


じりじりと移動し、ソフィが森を背にしたとき、ソフィの動きは止まり、左手で杖を出し、構える。杖から茶色の魔法陣が浮かび上がる。


 「Los(行け)」目の前に砂の壁が出来上がる。エイプは助走をつけて、走ると壁を通り越した。その時、ソフィはナイフを捨てて、右手でエイプの左肩の毛を掴み、右手でエイプの左肩の毛を掴み、右足をエイプの腰に当て、後ろに倒れこんで、エイプの前に出てくる勢いを利用して、森の中に突っ込ませた。ソフィは立ち上がり、エイプが突っ込んだ先を見ると軽く息を弾ませ「巴投げというものです」

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