第4話 国防軍試験開始

鐘が鳴る




砂場の足場を進み、ざっざっと砂埃を上げて、前に進む。


それぞれが中央付近に立つと止まる。




エマはロミがズハンに杖を向けているのを確認すると自身も杖を地面に向ける。


「私が壁を作る。そこに隠れて」




ロミの杖から水色の紋章が浮かび上がり、ズハンに向かう。エマの杖から茶色の紋章が浮かび上がり、足場の砂が壁になって、目の前を覆いつくし、水を遮断する。


 シャーロットは砂の壁を避けて、前に進む。


 どよめく会場。




 中年男性は「ほう」と言って、顔を眇める。




アイリスが前に出る。


「さすがはキア国魔法学校の主席、気が強い」


「逃げますの?」


アイリスはふっと笑う。


「まさか」




ズハンはエマを見る。


「僕も戦わなきゃ、アピールが出来ないんだけど」


エマは土の防御を解く。ズハンはエマを見つめる。


「あの・・・」


ズハンの視線に気付くエマ。


「?」


ズハンは照れ臭そうに


「ありがとう」


エマは笑った。


「仲間なのよ気にしないで」




シャーロットは杖を構える。杖から赤い紋章が浮かび上がる。


「Ausbrennen(燃え尽きろ)」)


 巨大な炎がアイリスの周りを囲むとアイリスを締め付けようと隙が狭くなってくる。


「こいつは強力だな」


 アイリスはそう言うと杖を構える杖から水色の紋章が浮かび上がる。


「Schlucken(飲み込め)」


 杖から水が沸き上がると先頭から炎に向かい、炎を飲みこみながら進んだ。


ソフィの杖から黄色の紋章が浮かび上がる。


「Durchdrücken(突き抜けろ)」


 雷が水を突き抜け、アイリスに向かうが既にアイリスの杖には茶色の紋章が浮かび上がる。


「Deckel(覆え)」


地面の土が盛り上がり、アイリスの周囲を覆い隠した。


 雷は土に当たると消えていった。


 シャーロットの杖から緑の紋章が浮かび上がる。


「Blasen Sie es weg(吹き飛ばせ)」


 渦を巻いた風が現れ、アイリスの周囲の土を吹き飛ばした。




 ソフィとマリーは興味深く見ている。


「すごい魔法ね」 


「でも、ソフィーも負けてないんじゃないかしら?」




 中年男性は何気ない顔で見ている。


「威力はすごいな、でも、肝心なのは」




 ズハンが腰に差してる二本の刀を両手に持った。左足を前に出し、左手を正面に右手を右頬の近くに構えた。


 レインは剣を握るとじりじりと前に出る。


 ズハンが左手で首元に切りかかるとレインは剣の峰で受ける。すると次は右手で切りかかる。峰でガードする。


 左、右を繰り出すが、ガードされる。ズハンは一歩、右足で地面を蹴りだし、勢いよく、左足を前に出して、左手で突きを放つ、レインは左足に足払いをかけると、ズハンは体勢を崩す。レインは頭から打ちこむとズハンは右手を前から弧を描くように振り上げて、打ち込みの軌道を変え、ズハンの横に打ち込ませた。


 ズハンは再び、左手に突きを放とうとすると、レインは砂をズハンの顔に蹴り飛ばした。


 レインは息を荒くしている。


「お前、名前は?」


「ズハン」


「なかなかやるな、思い切りがいい」


「どうも、あんたもなかなかやるね。今の突きでもらったと思ったよ」




 エマが杖を構えると杖から茶色の紋章が浮かび上がる。


「Essend(食らいつくせ)」


 ロミに周囲の砂が上がり、多い被さる。


「やるね」


「褒めるのはまだ早いですよ」


 ロミの杖から緑の紋章が浮かび上がる。


「Abprallen(跳ね飛ばせ)」


 竜巻が起こり、砂を舞い上がらせる。


 エマの杖から赤い紋章が浮かび上がる。


「Geboren werden(生まれろ)」


 杖からフェニックスが誕生した。フェニックスはロミに向かった。


 竜巻に向かうと風を吸収して、巨大化した。


 ロミの杖から青色の紋章が浮かび上がる。


「Regnet(降り注げ)」


 ロミの周囲に雨が降り注ぐ。フェニックスは濡れて、燃えカスがロミの後ろに落ちた。


 エマが杖を構えている。


 ロミの近くで何かが光った。ロミは咄嗟に弾く。確認するとクナイだった。


 その時「ロミ、伏せろ!」という鋭いレインの声がして、即座にロミは伏せると頭上をフェニックスが通り過ぎた。


 「忘れてた。フェニックスは蘇るんだった。それにしても凄い魔法のコントロールだね」


 「苦労しました」






 ソフィが興奮して、マリーを揺さぶている。


「炎の鳥よ!すごいわ」


「貴方が作った風と雷のおじさんもすごいと思うわよ」




中年男性は感心した様子で眺めている。


「中々、研鑽を積んでいるな。いい魔法使いになるだろうな」




 レインがズハンを笑いながら見つめる。


「少し、濡れたか、お前たち、いいコンビネーションだな」


「どうも、僕も少し、濡れちゃった」


「お前たち二人、できてるのか」


「へ?」


ズハンが間の抜けた返事をするとレインは切りかかった。


「うわ」


「恋は全然のようだな」


「せこいよ」


レインの頭への攻撃を左手の剣でいなし、右手で切りかかる。レインは振り下ろした剣を下で持ち替えて、振り上げる。ズハンは一歩、後ろに下がった。




 ロミの周りを風が吹き荒れている。


 エマは集中すると杖を構えた。茶色の紋章が浮かび上がる。


「Wach auf(起きろ)」


 エマの周囲にある砂が舞い上がり、一か所に集結する。


 ロミは興味深く見つめる


「土は風に弱いことは知ってるんだよね?てか、さっき、吹き飛ばしたし」


 砂が集まると胴体と手足が出来上がった。


ロミが何かに思い当たる。


「まさか」


「そのまさかです。かなり苦労しましたよ」 


巨大なゴーレムが誕生した。


ゴーレムは風を叩き落とした。


ロミも杖を構える。茶色の紋章が浮かび上がる。


「Wach auf(起きろ)」


 ロミの周囲にある砂が舞い上がり、ゴーレムが誕生する。


 ロミのゴーレムがエマのゴーレムにパンチを繰り出す。ガードをするエマのゴーレム




 マリーは観客席で蹲っている。


 介抱するソフィ


「ごめんなさい、興奮しちゃって」


「少し、揺らしすぎたわね」


 


 エマの活躍を横目で見ていたシャーロットは焦っていた。いつの間にあんな物を身につけていたなんて、国防軍に落ちてしまうんでは


 シャーロットは呼吸を整えると杖を構える。杖から黄色の紋章が浮かび上がる。


 アイリスは怪訝な顔で見る。辺り一帯が砂なのに何か策があるのか?


 広場全体を雷が蠢く


 アイリスは感嘆した。これほどの雷とは、周囲を確認すると濡れたズハンを見つけた。不味い、あれだけの高出力だと味方も怪我をする可能性が高い。


 「止めろ!」




 エマがズハンに気づき、手で覆おうとするが雷が放たれた。


 手を伸ばすのに一歩届かない。


 その時、地面から砂の壁がズハンを覆った。マリーが杖を構え、中年男性の横から女性3人が一等席から女性一人が観客席、青い髪の男性が杖を構えていた。


 


 雷が土の壁を突き破ろうとする。すると、会場に半裸で手に鉢を持ち、周囲に連太鼓を負ったおじさんが現れた。


 その人物が太鼓を叩くと電気が舞飛び、シャーロットの雷と相殺し、おじさんは消えた。


 


 これで試験は終了した。




 結果発表がされた。


 その時、シャーロットの怒鳴り声が聞こえた。


「納得できませんわ!」


「厳正な審査の結果です」


「二人が合格して、私が落ちるなんて、キア国国立学校の主席の私が落ちるなんて」




審査員たちは去って行った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る