第2話 どうして私が補佐なのか?



 案内されるまま入学式に出て、クラスに向かう。

 やっぱりというかヒロインちゃんは同じクラスになっていた。

 しかも隣の席だ。ここで「よろしくね」と挨拶したあと、私がヒロインちゃんに生徒会の話をして仲良くなる流れなんだけど、もちろん会話は極短く。

 

「隣の席なんだ。よろしくね」

「はい。よろしくお願いします」


 これで終わり。

 私はじっと席に座り、ヒロインちゃんが後ろの席のご令息に話しかけられて和やかに会話を始めたのを待ってホッと息を吐いた。

 ホントに、どうして、乙女ゲームになんか転生したんだろう。

 ヒロインちゃんめっちゃ可愛い。キラッキラしている。もちろん他の子たちも可愛い。さすが乙女ゲーム。そんな中でストーカーとすら言われた名前だけはキラキラネームの私、ローズクオーツは、ただ一人地味っ子で、逆に目立っているんじゃないかと不安になる。

 幸いにもこのゲーム、ストーリーは大抵生徒会が中心になって進んでいくので、私は全く関係ない。生徒会に関わらなければいいのだ。

 ヒロインちゃんは成績優秀者として生徒会に推薦されて、生徒会補佐である一年二枠の一つに食い込んでいく。もう一人は、平民枠の攻略対象者が推薦されるので、ここでヒロインちゃんと仲良くならなければ安泰なのだ。

 男子たちと仲良く話すヒロインちゃんの声を聞きながら、私は一人安堵の溜め息をついたのだった。



 そして三日後。

 私は何故か、生徒会室に呼ばれていた。

 生徒会補佐に推薦されたためだ。なんで。

 チラリと横を見れば、平民枠の攻略対象者であるライが立っている。

 目の前にはキラッキラのセンター、アレックス第三王子殿下が、その両翼に騎士団長子息ザッシュ様、宰相子息シーマ様が副会長と書記として侍っており、一歩後ろに悪役令嬢と言われた公爵令嬢グロリア様が会計として立っている。


「一年間、我々の補佐として頑張ってほしい。君たちには期待している」


 イケボで私を激励するアレックス殿下。どうしてこうなった。

 ここ、ヒロインちゃん枠だよね! 私がヒロインちゃんでファイナルアンサー? いいえ、違います。

 ゲームでは生徒会にも平民を入れてみようという殿下の試みでヒロインちゃんとライ君が選ばれるはずが、流石に二人とも平民だと後々大変だからということで、白羽の矢がたったのが私のようです。もう一度言う。なんで私が。

 成績が優秀だったからですか。あはい、そうですか。私成績優秀だったんですか。知らなかった。

 ……ずっと読書で知識を培ってきた努力がここで身を結んだようだ! そんなのいらなかった! 平穏無事に学園を卒業して、好きなことしたかった!

 心で血涙を流しながらぐっと握りしめた拳は、これから頑張る決意の表れだろうと温かく見られながら、表面上はなんとか穏やかに顔合わせを終わらせたのだった。


 

 説明しよう。

 私の鑑定眼がどうして秘密なのかを。

 鑑定を使える人自体がまずこの世界には数える程しかいないらしい。

 そして、私が見える項目は、在り得ない程に詳細なんだそうだ。

 普段見えるのは、ゲームでもずっと愛用してきた見慣れたステータス。HPやMP、疲労度や力を数値化したもので、それが見えるのは当たり前だと思ってたんだけど、実はこの世界、そんなステータスなんてものは存在しなかった。

 物を見ても私の場合『耐久値』なんかが数値化して見えるけれど、普通は触ってみて叩いてみてその状態に詳しい人が長年の知識で判断するものらしい。

 魔法のない前世ではそれが当たり前だったから「ふうん、ここも一緒なんだ」で軽く済んだけれど、あとで考えたら私の目の方がおかしかった。これはヤバいと自分でも気づいた。ここ、ゲームの世界っぽいけど私生きててちゃんと現実世界!

 父母と三つ上の兄は、私の能力のすごさを懸念して過保護な程に護身術や魔術、色々なことを私に教えてくれたし、絶対に外で鑑定のことや結果なんかは言わないように念を押された。勿論一も二もなく同意した。

 ちなみにその人が持っているスキルも、最近では見える様になってしまった。レベルとかあるっぽいねスキル。

 ヒロインちゃんも転生者だった場合は、何も知らないふりして一般人を装おうと思っていたけれど、今の所そんなそぶりは見せていないし、ステータスには転生者なんて書かれていないので、暫くは距離を置いて静観しようと思う。

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