二章 ボールが止まって見えるとか見えないとか

ある日の学校で。

先日の件が雑誌に載ったとはいえ名実とも大した事件ではなかったため話題になることもなく、私は平穏に過ごしている。

そこへよそのクラスの男子が訪ねてきた。


「蔵本、助けてくれ。

このままじゃ野球部が大変なことに」


彼は高橋覚、同じ中学出身だ。

同中だから他人より多少気兼ねしないというだけで特別仲がいい訳ではない。


「どうしたんよ」

「野球部が大した実績もないのに部室を使い続けてるのはずるいってんで、代わりにうちに使わせろって勝負を挑まれてんだ」

「あー負けたらぶんどられる感じか」


なんかありそうなやつよね。


「お前のまあまあ優秀な知恵を貸してほしい」

「知恵ったって、頭脳戦の勝負でもやるの」

「いや野球だ」

「うん?」


おっと?


「野球部が野球勝負挑まれてるの」

「そうだ」

「どこの部に」

「囲碁将棋部だよ」

「どうやったら負けるんだよ!負けたらもう引退しろ」


まず9人いるのがすごいな囲碁将棋部。


「勝ち負けよりまず楽しむこととスポーツマンシップが大事だろう」

「私に力説されても困る」

「今のところ策と言える策は目の下に黒いやつを塗ることしかなくて」

「なるほどそれは深刻だな」


何より策がないと勝てないということが深刻と言える。

しかしそれにしても、


「私から言えるようなことは何も…

とりあえず迷ったらアウトロー投げとけ」

「そうかその手があった。

ありがとな蔵本!」


そう言って高橋は去っていった。

さすがに助言が薄すぎる…でも読めることがないんだよ。

意味ありげに主人公と絡むとトーナメントで当たるまで残れるのがセオリーだけど、単発のオープン戦だもんなあ。


正直野球部がどうなろうと私の知ったことではない。

ただ野球回を挟むと作品に箔がつくからやれるものならやりたい。

なんとかならんもんか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る