✤登場人物紹介✤
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今は滅びた国、
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子どもは鎌売との間に三人。三虎は三人目の子。
妻にメロメロの二十八歳。
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昼は
✤この物語独特の用語。
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おまけ。
───これは、まだ、
「おーい、
「もうっ!
鎌売は厳しい表情で、部屋から顔を出した。昼間の陽光に愛しい妻の顔が照らされる。眩しい。
目の下にはうっすら、クマがある。
「そう言わずに……。寂しいんだよぉ。」
鎌売は、主の
八十敷はさっと部屋に入り、
「あたくしの子も抱いてちょうだい。」
と、おっとりと笑う。
「はい。ありがとうございます。」
八十敷は、主である広瀬さまの子を抱く。
「
加巴理さまは、
「あう〜? あ?」
八十敷の顔を見て、大人しく、何事か言った。桃色の頬。整った目鼻立ち。
(なんと可愛い
次に、八十敷は我が子、三虎を抱き上げる。
「三虎〜〜〜、可愛いオレの子! 会いたかったぞぉ。あっぶっぶー。」
三虎は、八十敷の三人目の子である。あやすのもお手の物……。
「ぶ───!」
三虎は八十敷の腕のなかで、眉間にシワをよせ、盛大に唇をブルブルいわせ、八十敷の顔めがけ唾をとばした。
「わっ!」
八十敷はのけぞった。
まだ一歳を過ぎたばかりのムチムチ緑兒の三虎は、べちっ、と八十敷の頰を打った。
(我が子なのに! なんなの、この
「ほほ、八十敷、三虎は抱っこの気分じゃなかったようよ。降ろしてあげて。」
鎌売の言葉に従い、下に降ろすと、三虎は凄まじい勢いの四つん這い歩きで、イカの形の木のおもちゃが置いてあるところに行ってしまった。
八十敷が少々むくれて、その様子を見ていると、鎌売が優しい笑顔でそばに寄ってきて、手布で顔を拭ってくれた。
「いちいち気にしないで。そんな顔しないで。」
八十敷は愛しい妻の手を、ぱっ、とつかんだ。
「気にしないけど、この顔を変えるのは無理だ。三人も子どもがいるのに、自由に顔が見れず、夜が寂しい。」
三虎は三人目の子。
上の二人は、八十敷の
鎌売が、加巴理さまの
三虎には、
八十敷は熱い眼差しで、じっ、と鎌売を見て、声をひそめた。
「鎌売、なあ、今夜、オレの部屋に来いよ……。何時でも待ってるから。」
八十敷は、
「バカね。」
鎌売の素早い平手打ちが、びしっ、と八十敷の額の中央に炸裂した。
「いてぇ。」
嘘である。たいして痛くないが、八十敷は妻限定で、額を叩かれるのが嬉しいので、つい、こう言ってしまう。
「仕事中でしょ! 早く仕事に戻りなさい。」
眉を立てた鎌売の、厳しい顔。凛々しい美しさ。
(ますます、良い
八十敷は、妻を心底、愛しているのである。
八十敷の顔がほころぶ。
宇都売さまが、
「仲の良いことね。微笑ましいわ。」
とコロコロ笑った。
はたして、夜、
「八十敷。わかって。夜泣きのある
あたしは、
加巴理さまを竹麻呂さまに負けない立派な
三虎を、加巴理さまから信頼される従者に育ててみせる。」
「鎌売。それがオレの妻の夢だとわかってる。加巴理さまは、オレにとっても主の御子だ。励んでくれ。でも今は……。」
八十敷は久しぶりに愛する妻を抱きしめる。
「オレの事だけ考えろ。
オレだけを見ろ。
オレの
「はい。あたしの
鎌売のいつも気の強さは鳴りを潜め、目尻はさがり、頰は染まり、にっこりと微笑み、素直な夜の女の顔になる。
そこからはもう、言葉はいらない。
短く濃い
「愛してます。八十敷。あたしにはあなただけよ……。」
と、鎌売は八十敷に甘い口づけをし。
「オレも、愛してる。鎌売……。」
八十敷はうっとりと微笑み、鎌売の頰を軽く撫で。
鎌売は薄桜色の
───完───
↓挿絵です。
https://kakuyomu.jp/users/moonpost18/news/16818093085040018682
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